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ルームメイト  作者: 帆摘
34/41

34話

「柾樹さん、その同僚の方の名前はなんと言うんですか?」

兄が視線だけを忍さんに向けて口を開いた。「何か気になるのか?」

「・・、なんと無く嫌な気がしたもので。」と少し口ごもりつつ忍さんが言うと不思議なものを見るように柾樹は目を向け言い放った。

「なんだ、昔の女がらみか?」

一瞬しんと食卓が静まった。皆あっけにとられて兄を見ている。視線を浴びた兄はどういった事もなく挑戦的な視線を忍に投げかけていた。

「柾樹さんの会社って○○でしたよね?確かリスボンに子会社のある・・?」

「ああ」

その言葉にやはりと言った感じで忍がため息を吐いた。「では、柾樹さんの言う同僚は桐生真弓という女じゃないですか?」

「・・・やはり知っているのか?」微妙な間があった。兄の目が鋭く光る。

さすがにこの展開は私も予期していたものではなかったので驚いた。まさか兄の同僚が、あのゾフィーの話していた人?でも、お兄ちゃん、今やはりって言った・・?何かあるんだろうか。

「まあ・・なんというか、複雑ですね。まさかとは思いましたが・・。」そういって口ごもる忍さんを見て兄は小さく息を吐くと、「その話、後でゆっくり聞かせろ、今はとりあえず飯が先だ。」といって強制終了させてしまった。


真樹ちゃんや先輩、それに蝶子ちゃんからも気になる光線が発せられていたが、それを無視して、二人は違う話題へと移行している。なんとなく突っ込めない雰囲気なので、皆黙ってご飯をもくもくと食べるという奇妙な時間になってしまった。


夕食後、ちょっとタバコを吸ってくるといって忍さんと連れ立って出て行った二人、そして残された私は皆の質問攻めにあう事になってしまったのは必然なのか・・・。

「では、その桐生さんと仰る方は彼の昔の恋人だったと言う事ですか?」大人しげな顔をして蝶子姫の質問は無駄無く的確だ。

「うん、まあ、ゾフィーの言ってた所に寄ると・・だけど。」

「ふうん、あいつって、今まで付き合ってた女のタイプ見てても後腐れ無く遊ぶ奴だとは思ってたけど、過去に何があったのか興味ある所だな・・。」と先輩がにやにやと笑う。

そんな先輩をぺしっと真樹ちゃんがはたきながら心配そうに言った。

「でも、ゾフィーが言うにはその女、忍さんの事諦めてないんでしょう?もし遥が一緒に暮らしているなんて知られたら危ないんじゃないの?」


「え?なんで?」

「なんでって・・・その桐生真弓って女、以前忍さんと付き合ってた女を片っ端から排除してたんでしょう?」

「そうだけど、私と忍さん、別に付き合ってる訳でもなんでもないし・・・。」

「でも、そういう方でしたら、、お付き合いがどうと言った以前に、彼が女性と二人暮らしをしていると言う事自体に腹を立てるかもしれませんよ?」

「そうそう、遥ちゃんって、そういう危機感本当に薄そうだからね〜。」と3人に言われ、私は以前、近くの電柱で待ち伏せしていた元彼女の事を思い出した。

「う〜んん・・そうなんですかねえ・・。でも気をつけるって言ったって、どうすれば良いのか分からないし。」

「まあ、大学にいる間は俺らもいるし、そうそう不審者が入って来られる訳じゃないだろうから大丈夫だと思うけど、行き帰りとかさ、そういうの気をつけてよ。」

「そう・・ですね。まあ、でもいきなり襲われるなんて事は無いと思いますけど・・。」実は自分の事よりも兄と忍さんの方が気になっているのだ。そのうち皆もそう感じているのかおずおずと蝶子ちゃんが言った。

「遅いですね・・、忍さんと、遥さんのお兄さん。」

「うん・・。」一体二人でどんな話をしているんだろう。とここにいる全員が思っているに違いなかった。


***

「で・・?桐生真弓との関係はどうなってるんだ?」

「相変わらずストレートですね、柾樹さん・・。」

「はっ、こんな話題こそストレートに聞くべきだろう?」暫く歩いて近くの公園までやって来た二人はベンチに腰掛ける。柾樹は胸ポケットからタバコを取り出すと火をつけゆっくりと煙りを吸い込み吐き出した。

「桐生真弓は・・、元は俺の父親の仕事がらみのパーティーで知り合ったんです。まあ、なんていうのか、俺も若かったし、色々・・教えてもらいましたから・・。」

「ふん・・色々ね。ということはあの女が手に入れたいと言っていたのは間違いなくお前の事って訳だな。」

「・・そんな事を言ってたんですか?」

「直接聞いた訳では無いが、やけに執着されてるみたいだな・・。あーいったタイプの女は一度本気になるとかなりしつこい。」


確かに柾樹の言う通りだった。最初は良かったのだ。大人の魅力と色気を持つ年上の美貌の彼女は・・。ゾフィーは最初から気に食わなかったのか、随分と噛み付いていたが、彼女は俺の前ではずっと上手く演じてきたのだろう、さほどゾフィーが言う程気にはしていなかったのだが・・・。だが、彼女は徐々に俺の、嫌、俺たちの禁忌とする領分まで我が物顔で入り込もうとした。だから別れたのだ、そう別れたはずだった・・。


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