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ルームメイト  作者: 帆摘
33/41

33話

バイトを始めてから私の生活様式が若干変化してきた。バイトの事を忍さんに話すと若干嫌そうな顔をされたが、私には自分の絵の具代を稼ぐという大きな目的があるのだ、別に深夜のアルバイトでもないし別に危ない事は無いと言い切ったが、私がバイトを始めると、ちょこちょこと仕事帰り?に顔を出す様になった。本当にゾフィーが言っていた通り、心配性だ。きっと彼自身は密かにイケメンの訪れるコンビニと奥様方の間で噂になって、いきなり利用客が増えた事など知らないのだろうが・・・流石モデルパワーだ。


そういえば一度、コンビニで彼の男友達にあった事があったが、普段の彼はどちらかと言うと、とてもクールなんだそうで、忍さんの私に対する態度を見てとても驚いていた。

「君、あいつにすごく大切にされてるんだな。」としみじみと感心したように呟いていた。確かに、彼は家族のように私を大切に扱ってくれているとは思う。まあ・・時々訳の分からない行動をすることはあるのだが・・。


バイトはレジ・品出し・陳列・検品・掃除なども含めて、覚える事も沢山あるが、店長さんが優しい人で、ちゃんと教えてくれるので、少しずつ慣れて来た。コンビニの給料は安いと聞いていたが、給料の事よりも、始めてのバイトなので何をするにも楽しく頑張っている。


そうこうしているうちに、お兄ちゃんがうちにやって来た。家に一歩入ると玄関口の靴を見て方眉を上げて呆れたように呟いた。

「また集まっているのか?」

「あ〜・・うん、みんなお兄ちゃんに会いたいって言うから。嫌だった?」

「別に・・、そう言う訳ではないが」

「まあ、とりあえず上がってよ。今日はお兄ちゃんの大好きな豚の角煮作ったんだよ。」

一瞬兄の表情が柔らかくなった事にほそ笑むと私は兄の手を引っ張ってリビングに足を踏み入れる。

「「お帰りなさい〜!」」「「お疲れさまです〜。」」と真樹ちゃんや先輩の声が重なり、そして後から一歩遅れて「あの、初めまして・・・」という声が響いた。

「あ、そうそう、お兄ちゃんは始めてだと思うんだけど、最近友達になった和泉蝶子さん。すごく可愛いでしょ?」


「え?ああ、遥の兄の柾樹と言います。初めまして。」でたよ。お兄ちゃんの満面営業スマイル。大抵の女の子は、これでころっといっちゃうんだよな・・。蝶子ちゃんはどうなんだろう・・と横を見ると、案の定顔を真っ赤にしてうつむいている。流石と言うべきか何というか・・。

「あの・・よろしくお願いします。」答えるのもやっとと言った調子で蝶子ちゃんが答えた。可愛い・・・なんというか、守って上げたくなるという男の気持ちがわかる気がする。


「っていうか、遥ちゃん、俺腹減った〜!」とソファーに半分寝転がっていた先輩が叫ぶ。

「もう少し遠慮しろよ、お前は・・・。」呆れたように忍さんが呟く。

私はそんな様子を暫くの間じっと見つめると微笑んだ。初め、家をでてルームメイトと一緒に住むと決めたときはとても不安だったのにいつからか、こうして忍さんや、友人達のいるこの空間を何よりも大切に思っている自分がいる事に気がつかされる。大切な、大切な仲間達との時間だ。


「今用意しますから、少し待っていて下さい。」真樹ちゃんと、蝶子ちゃんが手伝ってくれたので手早く用意していた煮物などを温め、テーブルの上に並べて行く。

「うまそ〜。」そう言いながらテーブルに近寄ってくる先輩。そういえば、この4人がけのテーブルも流石に手狭になって来てしまっている。椅子を2客足したとしても、やはりキツい。同じ事を考えていたのか忍さんがぽつりと呟いた。

「手狭になって来たな、このテーブルも・・。」

「そうですね。」

「そのうち、新しく買い替えてもいいかもしれないな。」そう言って先輩の頭をこずいている様子を見ながら私たちは食事を食べ始めたのだった。


「柾樹さん、今日は泊まって行かれるんですよね?」と忍さんが聞く。

「ああ、悪いが世話になる。」

「なんでホテルに泊まらなかったの?」と私。

「・・・・。疲れるんだ。」

「え?」

「今度新しく同僚になった女の事だ。同じホテルに宿泊するだけでも疲れる。」

兄がこういう表現をする時、遥は兄の苦手とする女性の人物像をありありと思い浮かべる事ができた。兄は決して男尊女卑や俺様男ではない。兄が苦手とする女性のタイプは・・

「柾樹さんでもそういう風に思う事あるんですね?」意外そうに真樹ちゃんが口にする。

「俺も人間だからな。苦手なタイプの女と四六時中一緒に行動していると肩が凝る。」

「新しい同僚なんですか?」

「ああ・・。ドイツ支社から本社に転属になった女だ。確かに・・ある意味能力は評価できるんだろうがな。」とぼやきにも似た言葉をはく兄を意外そうに遥は見つめた。

「ドイツから・・?」

そうして、ここにも一人、少し目を見開いて兄を見つめる男がいた。

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