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ルームメイト  作者: 帆摘
30/41

30話

翌朝早く、私と忍さんはゾフィーを見送る為に空港へとやって来た。

「忍さん・・・車運転できたんですね、知らなかったです。」

「まあ、普段は使う事ないからな。叔母さんの家は便利な場所にあるし。」

「そうですね、確かに・・・。というか、この車はどうしたんですか?」乗って来た車は遥でも一目で外車だと分かる高そうな車だった。

「あー、これ伯母さんの車。」

「そうなんですか?車があったなんて知らなかったです。」マンションに車庫があるのは知っていたが、まさか車まで置いてあるとは知らなかった。

「まあ、一応使っても良いと言われてたからな・・。」

それから暫くの間、たわいもない話をしていたが不意に会話が止まり一瞬の間が二人の間を支配した。

「ゾフィー、最後にお前になんて言ったんだ?」

「え?」

「最後、お前だけ引き止めて何か言っていただろう?」

「あ、ああ。」そう、空港に見送りにいった最後にゾフィーは私と忍さんの頬にひとつずつキスを落とすとぎゅっと忍さんにハグした後、私だけを引っ張っていったのだ。

「ふふふ、忍さんってゾフィーに愛されてますよね。」

「・・・一体どういうことだ?」

「はい。えっと正確にいいますと、桐生真弓という女性がちかじか日本に舞い戻ってくるから忍さんに近づけないようにといわれたんです。」

「桐生真弓・・そうか、あの女が帰ってくるのか。」

実際にはゾフィーはそれ以上の情報を遥に残していた。


***

「ど、どうしたの?ゾフィー。」抱擁が終わった後、何故か遥だけ引っ張られて隅っこまで来ると、ゾフィーが耳元に口を寄せて来た。

「あのね、遥・・これは昨日ママから得た情報なんだけど、ちかじか日本に桐生真弓って女が帰ってくるの。その女を絶対に忍に近づけさせないで?」

「え?」

「あの女、年増の癖におじさまだけでなく、忍にもかなり執着してるの。ドイツに居たとき、忍の周りにいた女は大体私が追い払ったんだけど、あの女だけは蛇みたいにしつこくて執着深い・・。遥が一緒に住んでいるって知られたら何をしてくるか分からないわ。だから気をつけてね。ホントはすぐにでも私も日本に来れたら良いんだけど・・・」


そっかあ、ゾフィーってやっぱり忍さんの事が大好きなんだ。まあ婚約者だって言ってたしね。つまりはドイツから日本に戻ってくる女の人は忍さんを狙っているから、ゾフィーの代わりにその人を近づけないでという任務な訳だ。

と、一応あってはいるのだが、ゾフィーと忍が聞けばずっこける様な思想で納得していた。

***


実際の所、わざわざ忍ではなく、遥に桐生の名を告げておいた事には意味があった。飛行機のファーストクラスの背もたれにゆっくりと腰を下ろしてゾフィーは考えていた。

1週間一緒に住んで、色々と遥の事を観察していた。面白い・・そして思った以上に手強い。今まで忍が特定の女と一緒に住んだ事は無かったが、遥ならなるほどと思えた。

まず、とてつもなく鈍い。ゾフィーから見ると、生活の中で忍はあれこれとアプローチをしているが、恋愛という概念がないのか、見ていて可哀想になるほどまったくの素無視だ。

日本の言喭?で、美人は三日見れば飽きるという言葉を聞いた事があるが、それの男性版なのか、10人女が居れば10人がなびくであろう忍の色気にまったく反応しない。


良い意味で我が道を行く女だ。もう一人の沢田という男も遥に気がありそうだったが、あの分ではかなり時間がかかるだろう。まったくどういう環境で育って来たのか興味が湧く。

それにしても、桐生真弓・・あの女は忍が日本に戻ってくる二年前に、あるパーティーで忍の父親と出会い、かなり猛烈にアタックしていたのだが、忍の父親がなびかないのを知ると、それは一挙に息子である忍にターゲットをしぼって来た。

あの頃の忍は、様々な女の子達と付き合っていた頃で、来るもの拒まずといった感じだったので付け入りやすかったのだろうと思う。

大人の魅力・・私から言えば只のおばさんだが・・で、すぐに忍と体の関係に持ち込み、そのとき他に忍と付き合っていた女をことごとく様々な手で陥れ別れさせた。


さすがに幼馴染みで影響力のある私には手出しできなかったようだが、裏ではかなり汚い事をやっていたと聞く。他の女はまだしも、あの女だけは何となく気に入らなくて、何度か忍に文句を言ったが、あの女が忍の私生活にまで割り込んで来ようとするまでは、忍は何もしなかった。だが、結局強引に忍を手に入れようとしたあの女は結局自爆したのだが、それでもあの女は忍を諦めた訳ではなさそうで、忍のまわりをうろついていた。

忍が日本の大学に行くと聞いた時、何も言わずに決めた事に少し腹は立ったが、あの女と距離を置ける事については良かったと心底思っていたのだが・・・。

ほんの1週間の事だったが、遥のことは忍と同じぐらい好きになっていた。今回遥に忠告したのは、遥の口から忍へと伝わるであろう事、そして・・・これは一種の賭けだが、これをきっかけにあの二人に変化が起るのではないかという期待も無きにしもあらずだ。

さて、私がドイツに戻っている間どうなるのか・・それは真樹がメールで報告してくれる事となっている。

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