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ルームメイト  作者: 帆摘
25/41

25話

不機嫌な男二人と連れ立って私たちは昼食後レストランの近くにある某有名ホテルの一室へとやって来た。ゾフィーさんは、昨晩日本について、このホテルで1泊したらしい。げんなりした顔で、窓辺のテーブルに肘をついたまま、忍さんが口を開いた。

「それで、お前はこれからどうするつもりだったんだ?」

「本当はお昼食べてから忍のところに押し掛けようと思ってたんだけど、とりあえず本人に会えた事だし、どうしようかしら・・」ニンマリとゾフィーが微笑を浮かべた。


はっきりいって私と先輩は昼食後、訳あり?っぽい忍さんとゾフィーと別れようかとも思っていたのだが、何故かゾフィーは忍さんではなく、私を強引をホテルまで連れ込み?結局仕方なしに先輩も後をついて来たと言う訳だ。まあずっとレストランにいても、周りから好奇の目でさらされるだけなので人目の無いホテルの一室へと移動したのは良かったのかもしれないが。

だが、ほとんど部外者である先輩と私は手持ち無沙汰にきょろきょろしてしまう。

このホテルは外観を見ただけでも結構高そうだと判断したが、室内もそれなりに調度品などすごく整った感じだ。ゾフィーさんはお金持ちなのだろうか。

キングベットも大きくてふかふかしている。


「ねえ、あなた、遥って言ったわよね。呼び捨てでかまわないかしら?」

初対面の人にあまり名前を呼び捨てにされた事は無いが、外国人だし、そういうものなのかと思って頷く。

「はい。別にかまいませんけど。」

そういうと嬉しそうにゾフィーが私の手を握りしめた。「じゃあ、私の事は、ゾフィーって呼んでね。あなたとはいい「お友達」になれそうだわ。」

「おい、ゾフィー。いい加減にしろ、大体遥をこんなところまで連れ込んで一体何を考えているんだ?」

そういえば確かにそうだ。レストランを出た後、すぐに別れようと思ったのだが、彼女が私の手を掴んだまま離さず、色々な理由をつけつつ、ここまで来てしまったが、彼女が用があるのは忍さんだったはず、何故私がここに連れて来られたのかわからない。

「そうだ、ゾフィーとやら。まったくもって忍と良く似てやがる。人の話を聞かない所も、図々しく俺と遥ちゃんの間に割り込む所も、一体何様だ!」

沢田先輩も少し怒ったようにゾフィーを睨みつけた。


ゾフィーは軽く肩をすくめると爆弾発言を落とす。

「あら、私が知らないとでも思ってたの?忍、あなた今遥と同棲中なんですってね?ちゃんとこっちにくる前におじさまに聞いたのよ。あなたが女の子と暮らしているって聞いてホント吃驚したわ。どんな女と付き合っていても幼馴染みの私以外、一切家には近づけさせなかったあなたがね・・・一体どんな女と暮らしているのか私が興味を持つのも当たり前でしょう?でも、今日本当に偶然町中であなた達を見かけて最初は確信がなかったのよね。遥ってあなたが今まで付き合って来た子達とタイプが全然違うし、でもまじかでよく見てわかったわ、彼女ってユリアに・・」

「ゾフィー!」

そこまで言いかけた所で怒気をはらんだ忍さんの声がゾフィーのそれを遮った。

私と先輩は吃驚して忍さんをみすくえた。

「ごめんなさい・・。」ゾフィーが小さくなって忍さんに謝った。今、最後にユリアと聞こえたが女性の名前だろう。一体何故彼がこんなに怒っているのか、しかも以前、家まで押し掛けて来た元彼女を追い返したときよりも数段怒気をはらんだ雰囲気だ。


「いや・・すまない。大きな声を出してしまって。」忍さんははっとしたように私たちに言った。だがその表情はなんだか寂しそうだ。そのユリアと言う女性と何かあったのだろうか?もしかしたらその人が彼の本命の彼女と言う奴なのだろうか・・と頭の中で色々と考えてみるものの、これ以上突っ込める雰囲気ではないし、というかその場がかなり微妙な雰囲気になっている。

「あの・・私そろそろ、帰りますね。今日仕上げたい絵もありますし。」と私は逃げる方向でおずおずと切り出した。

「ああ、すまないが、沢田先輩、遥を家まで送って行ってあげて下さい。俺は・・、まだゾフィーと話す事があるので。」

有無を言わせぬ忍さんの言葉に先輩は黙って頷くと、私たちは彼らを置いてホテルの一室を出た。あの状況のまま、二人を置いておくのも少し気が引けたが、もともと彼ら達が話す内容は私たちには関係のない・・・いや、知らない方が良い事もあるだろう。


帰り際、先輩と並んで歩きながら私はぽつりと今日の出来事を振り返る。なんだか慌ただしい1日となってしまった。

「なんか、びっくりしましたね。」私がそういうと、先輩が言葉を返す。

「まあ、そうだな。巻き込まれたというか、なんというか。しかし・・付き合いだしてそう長い訳ではないが、あんな余裕のない奴の顔は始めて見たな・・・。」

「忍さん、すごく怒ってたけど、なんだか寂しそうでしたね。」

「そうだな・・。」

いきなり現れたゾフィーという存在に戸惑ったものの、不思議といやな感じはしなかった。ただ、これから彼女の存在に色々と翻弄されて行く事になる事をこの時の遥は知る吉もなかった。

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