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ルームメイト  作者: 帆摘
22/41

22話

先輩と忍さんは、仲が良いのか悪いのかいまいちよくわからない。一応先輩なのでそれなりに敬語を使って話しているかと思えば、ゲームの事などで子供みたいな喧嘩を繰り広げたりもする。出会ってからまだそんなに日は立ってないのだが、最初に二人が逢った頃よりは随分と打ち解けているようにも見えるのだが・・・。

「よう、お帰り。」

「ああ」

「その顔じゃしっかりおにーさんに釘指されたな。」クスクスと先輩が笑う。

「うるせーよ。お前も同じ穴のムジナだろーがっ」ちょっと悔しそうに忍さんが答えた。

「俺は別に何も言われてないけど〜。」何故だか今日の二人はとても子供っぽく見える。久しぶりに兄を見たからかもしれないが・・。

「釘って、お兄ちゃんなんか言ったんですか?」私が聞くと、忍さんは更に苦い顔をしたまま、「何でも無い。気にするな。」とだけいってそっぽを向いてしまった。本当にお兄ちゃん、何か失礼な事でも言ったのだろうか・・。

「まあまあ、とりあえず遥もここを出て行かずにすんだんだから、何かお祝いしましょうよ!」と真樹ちゃんが提案してくる。やはり真樹ちゃんはムードメーカーだ。

私は真樹ちゃんに賛同する。「うん、じゃあ、みんなで牛丼でも食べに行く?!」


「「「牛丼・・・」」」何故かげんなりしたような三人の声が重なった。

「え?だめ?」

「いや、駄目ってことはないけど・・・このメンバーで牛丼・・。」真樹ちゃんが口ごもる。このメンバーでって何か問題があるのだろうか。

「あのさ、俺の知ってるとこで美味いラーメン屋あるけどそこ行かない?」

引きつった顔の真樹ちゃんを余所に先輩が言う。

「あーラーメンもいいですね〜。」「俺も別にかまわねーよ。」と忍さん。真樹ちゃんは少し嫌そうな顔をしていたが、もうどうでもいいやといった感じで最後は納得した様子で、4人揃ってラーメンを食べに行った。先輩お勧めのラーメン屋さんは値段も安くてとてもおいしかった。


***

それからしばらくして、校内で、忍さんに本命ができたらしいとの噂が広まった。なんでも

今まで付き合っていた不特定多数の女性達とすべてお別れしたらしい。と、講堂で噂になっていた。

「へえ、忍さんの本命さんって一体誰なんでしょうね?モデルさんとか綺麗な人かな?」

「遥・・・あんた、いや、いいわ。あんたはそれで・・。」真樹ちゃんが不思議な表情で私を見て一人で頷いて納得している。

「??」

「ふうん・・あいつもそろそろ本気になってきたってことか。」いきなり後ろから声がかけられ、ぎょっとして私と真樹ちゃんが振り向くとそこには沢田先輩が立っていた。

「お、驚かさないでくださいよ、先輩!本当に心臓に悪い・・・。」

「というか、いつも神出鬼没ですね、先輩は・・。で、こんなところでまた何をしてるんですか?」と真樹ちゃんが冷たくあしらう。

「ん?そりゃあ、可愛い後輩達の様子を見に来たに決まってるじゃないか。まあそれと、遥ちゃんにデートのお誘いを。」そういうと沢田先輩は優雅にお辞儀する。

「へ?」私のその時の顔はよっぽどひょうきんだったに違いない。先輩がクスクスと笑い声を上げる。横をみると、真樹ちゃんも笑っている。

「からかったんですか?先輩!」

「いや、違うって・・あまりにも遥ちゃん可愛いからさ。それに、これ・・興味ない?」そういって先輩がポケットから取り出したのは2枚の絵画展のチケットだった。

「今都内に来てるんだ。親父のツテで貰ったんだけど、良かったら今週末にでも一緒に行かないかと思って。」確かにそのチケットはできることなら私が見に行きたいと思っていた絵画展のチケットだった。すこし値段が高くて躊躇していたのだが、タダで見れるのなら有り難い。


「それ、本当にもらって良いんですか?」

「遥ちゃんが、一緒に行ってくれるならね・・。」

「先輩・・・。私の目の前で遥くどくなんて良い度胸してますよね。」じとっと真樹ちゃんが先輩を睨みつける。

「はは、勘弁してよ、真樹ちゃん。というか、真樹ちゃんにもちゃんと用意してるよ、ほら」といって何かを真樹ちゃんの手に握らせた。

「これは!・・・ってか、なんで先輩私がファンだって知ってるんですか?」

「ん?内緒。」

「ま・・仕方ないですね。じゃあ、遥くれぐれも隙を見せないようにね、楽しんでいっといで〜!」そういって真樹ちゃんは鼻歌を歌いながら去って行った。


「先輩、真樹ちゃんに何を渡したんですか?」

「ん?今流行のインディーズバンドのライブチケット。なかなか入手できないらしいよ。」

目が点になる。真樹ちゃん・・・・T_T

とにかく、こうして私と先輩は週末に美術館デートをする事となった。


***

その晩、いつも通り、家へ帰り夕飯の支度をしていると忍さんが帰って来た。

「あ、お帰りなさい!今日は早かったんですね。夕飯、もう少しまっててください。」

と声をかけると、珍しく、キッチンまでやってきた。

「遥ちゃん、あいつと土曜日にデートするって聞いたけど本当なの?」

「へ?え・・なんで忍さんが知ってるんですか?」

その言葉を聞くや否や先輩からいかにも不機嫌なオーラが漂いだした。うわっ、機嫌悪そう・・てかなんで?

「あの・・・忍・・さん?」

「・・・俺も行く。遥の事は柾樹さんからも「宜しく」頼まれてるから。」

今遥って呼び捨てにした?それにお兄ちゃんの事も柾樹さんって・・名前で呼び合うぐらい親しくなったのだろうか?

「今遥って・・」

「ああ、遥ちゃんより呼びやすいし、かまわないだろ?」

「ええ、別にかまわないですけど、でもチケットはどうするんですか?」

「その辺は心配しないで。俺も手伝うからさっさと飯喰おうぜ。」先ほどの不機嫌さから、また一気に機嫌がよくなった忍さんを不思議に思いながらその日が終わったのだった。

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