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ルームメイト  作者: 帆摘
20/41

20話

「まあ・・・お前の考えていることは分からなくもないが、一応聞いておこう。何故俺を騙そうとした、遥?」

あああ・・・魔王降臨です。やばいです。お兄ちゃんが端正な顔にこうして笑みを浮かべている時はヤバいんです。

「う・・えっと・・それは・・・」

しどろもどろになった私をカバーしようと忍さんと真樹ちゃんが間に入ろうとしたが、視線だけで黙らされてしまった。流石、魔王。とりあえず余計な事を言う前に謝った方が勝ちだ!

「ご、ごめんなさい!お兄ちゃん。最初は、その・・私も忍さんが男性だとは知らなくて・・その出て行こうかとも思ったんだけど、家賃も安くてここより良い物件なんてないし、アトリエも自由に使わせてもらってるし、食事代も半分出してくれてるし・・・。まだバイトも見つかってないから助かると言うか・・・」とだんだん話すものの声が小さくなって行く。其処で思わぬ所から助けが入った。

「油絵とかが出来る広いスペースとアトリエがある住宅なんて普通のとこじゃぜったい見つからないですよ?ほんと、遥ちゃん、羨ましい。俺も半分スペース貸して欲しいぐらいだし。油の独特の匂い、嫌がる人も多いからなあ。」先輩が力説してくれる。このときほど、先輩の事をありがたく思った事はない。これからもう少し態度を軟化することにしますからね、先輩!デート云々は別ですが・・・。


「つまり・・お前は俺に反対されると思ってた訳だな?遥。」

「う・・うん。」

「お前が俺に隠し事するなんぞ100年早いが、かといって遥たちの言う通り、確かにこんな条件の良い物件は他にはないだろう。知り合いのよしみで安く貸してもらっている事もあるからな・・。」

「え?じゃあ・・・」

「それは、それとして、忍君。」私の問いかけを無視したまま、お兄ちゃんは忍さんへと向き直った。

「君は、どう考えているのかな?知っていたんだよね、君は・・遥がルームメイトになる事を。」今度は兄の攻撃が忍さんにバトンタッチする。

「そうですね。叔母から聞いてはいました。欧米では別に良くある事ですし、、まあ少し不安はありましたが、遥さん本人にあ逢って、彼女となら問題なく一緒に暮らして行けると思ったものですから・・出て行こうとした彼女を俺が引き止めたんです。」忍さんはお兄ちゃんの目を見据えたままゆっくりと答える。


「ふん・・・。つまり、俺が考える様な事は起こりえないと断言する訳かな?」

「・・・・。遥さんは、俺にとって大切な存在ですから・・・・。」

二人の間にぴりぴりとした緊張感が走る。しばらく忍さんの目を直視していた兄だったが、ふーっとため息をつくと、言った。

「まあ、しばらくは執行猶予と言った所か・・。」

「お兄ちゃん?」

「とりあえずは親父達には言わないでおいてやるよ。俺よりも親父の方が絶対にうるさいからな。(お前は家族に溺愛されてることに気付いてないかもしれないが・・)今まで通り、ここに置いてもらえ。ただし、学生の本分は勉学だと言う事を忘れるなよ。」


「は、はい!」なんだかよくわからないが許してもらえた?ようだった。真樹ちゃん達からもほっとした空気が伝わってくる。

その後、少しの間、また話をした後、兄が帰るというので送って行こうと思ったのだが、思いもかけず、何故か忍さんが兄を駅まで見送る事となった。

「それじゃあ、遥またな?皆さんに迷惑をかけるんじゃないぞ?」

「わかってるよ、もう、子供じゃないんだから!」

頬を膨らます遥を見て、だからまだ子供だというのだと思ったが口には出さない。

「皆さんも、遥の茶番に付き合わせて申し訳無かったね。これからもこの子の事、よろしく頼みます。」そういって頭を下げ、傘を持った忍さんと一緒に帰って行った。


***

「遥とお兄さんってホントに似てないんだね。」

玄関でぽつっと真樹ちゃんが言った。

「どうせお兄ちゃんと私は全然似てないよ。お兄ちゃんはかっこいいし、私は・・」

「違うって。外見の事じゃなくて、中身の話。あーうちもあんなくそ弟じゃなくて遥みたいな可愛い妹か、あんなお兄さんが欲しかったなあ。マジで大人の雰囲気だよね。」

「まあ、そりゃぁ社会人だし・・・。学生の私たちとは違うと思うけど・・。」

「そうかな?俺は結構あのお兄さんと遥ちゃんて似てると思ったけど・・・?」そう沢田先輩が口を挟む。

「「え?どこが?」」自分で言っときながら真樹ちゃんとはもって少し落ち込む。

「ん〜?頑固で融通きかなさそうなところとかさ〜。まあ、あのお兄さんよっぽど遥ちゃんのこと大事なんだね。きっと今頃、あいつも釘さされてんじゃないの・・?」

「??」

よくわからないが、確かにお兄ちゃんが帰り、忍さんを指名して出て行ったのは不思議だった。何か言われているんだろうか・・・。

考え込む様子の私を見て、リビングに戻りつつ、先輩と真樹ちゃんが「遥ちゃんって、ホント天然の箱入りだね」と話し合っていた事は私の耳に入って来なかった。

それから暫くの間、忍さんが帰ってくるまで、私たちはアトリエで美術談義に花を咲かせていたのだった。

「いや、ほんとにこのアトリエいいなあ。俺はまだ実家で納屋を使わせてもらってるから、かなり大きな作品とかもつくれるけど、普通じゃあ、こうはいかないからね。

俺さ・・・実は遥ちゃんの作品、一度だけ見た事があったんだよね。」

何気ない先輩の一言にびっくりして私は彼をまじまじと見つめた。私の作品を見た事があるって、大学にはいってからの事を言っているのだろうか、それとも・・?

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