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ルームメイト  作者: 帆摘
16/41

16話

「真樹ちゃん!こっちだよ〜。」私は改札から出て来た真樹ちゃんに大きく手を振る。

真樹ちゃんが早足でやってくるとぽこんと軽く私の頭を叩いた。

「もう、子供じゃないんだからあんな手を振らなくたって分かるわよ。恥ずかしいでしょ!」

「あ、ごめん〜。うちに私たち以外のお客様が来るのって初めてだからなんか嬉しくって!」

そういってニコニコ笑う遥を見てるとやはり可愛い。自分にはその毛はないので、妹がいればこんな感じかと思う。あいにく下には口の悪い弟しかいないのだが・・・。


二人で並んで歩きながら、この辺りの事を色々と教えてくれる。

「それでね、この曲がり角の家にはすっごい大きなワンコがいて、可愛いんだけど、あまりちかより過ぎると飛びかかって来て上に乗られちゃうのよ。一度やられちゃってお洋服がどろどろになっちゃったのよね。家の人が出て来て大謝りしてくれたんだけど、、ちゃんと張り紙してあったの見なかった私が悪いから・・。飛びかかり注意って。でも、それからそこのお宅の方と仲良くなって、時々触らせてもらうんだー。ふわふわのもっこもこで可愛いんだよ!」


「そ・・・そう。」

意外に遥の住むというマンションは駅から近かった。これって、駅から見えてた建物よね?私は建物を見上げながら考える。すっげー高そうなんだけど・・・。

「遥・・ここに住んでるの?」

「うん、すごいでしょ?私も最初来た時何回も住所確かめちゃったよ。ここね、両親の友人で、忍さんの叔母さんが使ってたんだけど、今ずっとフランスに住んでいて使ってないからって格安で貸してくれてるの。」

それからエレベーターを上がって部屋に入ると、またまた吃驚する。ダイニングキッチンから見える眺めもそうだが、まるでモデルルームのようだ。

「おじゃましまーす。。てか、うっわあ・・・マジすごいかも。ここに二人暮らしかあ。あれ、そういえば例の有名人は?」


「あ、忍さんね、実は急に仕事がはいっちゃって、帰ってくるの3時過ぎになるって。それまで、ここでゆっくりしてもらっても良いし、買い物とか行っても良いけど・・・。」

「そっか。お楽しみは後回しだね〜、確か夕食一緒に食べるんだっけ?遥の手料理、すっごい羨ましいんですけど・・・はー私も遥みたいな可愛いお嫁さん欲しいかも。」

「およめさんって・・・真樹ちゃん・・。」

「冗談だよ。」半分は本気だけど・・と心の中で付け足す。

「そっか、じゃあ駅の辺りでなんか食べてくれば良かったね。このへんって何か食べる所あるの?」

「うん、この間忍さんに教えてもらったレストラン街の方へ行ってみようか?」


お昼を食べて、少しぶらぶらウィンドーショッピングして帰ってくると、遥がいそいそとお茶の準備をしてくれる。その様子を見ているとどう見ても新妻さんだ。一緒に暮らしているという男は遥の事をどう思っているのだろうか・・。大学内でも彼は色々な意味で有名人だった。それは一重に彼の外見の事だけでなく、人気雑誌のモデルをしている事や、女性関係は入れ替わり立ち代わりがやたらと激しいが、それでもひっきりなしに彼女になりたがる女が多い事、そして意外に授業にはちゃんと出席していて、教授達の評価が高いらしい事・・などなど、細かく上げればきりがない。

もう一人の有名人である沢田先輩といい、何故か遥の周りにはトラブルの種となりそうなものが多い。それと・・・週明けの少し赤く腫れた頬と擦り傷。遥は何も言わなかったが、あれは何処かでぶつけて出来る様なものではない。誰かに殴られた跡だ。

最初はルームメイトであるという男の事を疑ったが、遥の様子を見ていると、どうもそうではないらしい。としたらそいつの周りにいる女ではないかと推測していた。


「はい、真樹ちゃん。これ、昨日作ったんだけど口に合うかな?」と、遥が出して来たのは手作りらしいクッキー。

「遥が焼いたの?」

「うん。昨日の晩に作っといたんだ。紅茶はね、本当は忍さんが入れたものの方がおいしいんだけど、我慢してね。」

何かと、遥の世話をしてるんだと考えていると、玄関で鍵の開く音がした。

「あ、帰って来た!」そういってパタパタと出迎える姿を後ろから眺める。遥・・・あんたは気がついてないかもしれないけど、これじゃ、本当に新婚さん家庭だよ・・・汗)


リビングの扉を開けて入って来たのは噂に違わぬ良い男だった。入って来た途端にほんのりと爽やかな香りが鼻孔をくすぐる。香水でも付けているのだろう。確かに、雑誌から出て来た様なファッションとスタイルを持つ男だった。ヤケに彫りの深い顔を見るとドイツ人とのクオーターと聞いて納得できる。だが、この様子だと、両親もかなりの美形なのだろう。

「どうも・・」入って来てすぐに目が合い、男が心地よいアルトを響かせた。

「初めまして・・。秋本 真樹っていいます。」

奴は妖艶な笑みを浮かべたまま手を差し出す。「俺は、笹塚 忍です。よろしく。」

「えっと、忍さんも座りませんか?今丁度私たちも帰ってきてお茶する所だったんです。」

「分かった。じゃあ、俺少し着替えてくるから・・。」そう言って彼は隣の部屋へと歩いて行く。私はゆっくりと息をはいた。確かにすごい存在感だ。


着替えて出て来た奴はビンテージらしいジーンズと黒のシャツを完璧に着こなしている。ソファーに座った時の足の長さに驚いた。

「それじゃぁ、本題について話そうか・・・?」


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