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ルームメイト  作者: 帆摘
13/41

13話

まさか、付き合っていた女が家の近くで待ち伏せしていようとは露程にも思っていなかった。第一、彼女に自分の住所を教えた覚えも無い。誰から聞いたのかは知らないが、たかが約束を破ったぐらいで押し掛けてくるとは思いも寄らなかった。(*この男最低です。W)

一瞬目があった時にやばいと思ったが、駆け寄ってきた女が殴りつけた相手は何も考えていなさそうなルームメイトだった。

悔しそうな女の顔と一瞬何が起ったのか分からないと言ったようなルームメイトの唖然とした顔。あれだけ酷く殴られて、眼鏡が吹き飛ばなかったのは奇跡だろう。とはいえ、もし眼鏡が壊れていたなら、これを機会にコンタクトを勧める事も・・・いや、話がそれた。

ともかく彼女が殴られるのを目にした途端、カッと頭に血が上った。それから俺も実際よくは覚えていないのだが、かなりキツい事を言ったのだろう、気がつけば女がぼろぼろと涙をこぼして走り去って行った。

次に我に帰ったのはルームメイト殿が赤く腫れ、爪での引っ掻き傷がついた頬を押さえながら、焦ったように、早く追いかけろという言葉を吐いた時だった。

一気に罪悪感というのか自分の中に重苦しい感情が沸き起こり、ゆっくりと彼女の頬を撫でた。家に帰り、彼女の頬を冷やしていたときも、お人好しのルームメイトが気にしているのは、殴った相手の事だった。だが、いくら彼女が言い募ろうと、追いかける気などまったくなかった。もう既に終わった事だ。


重苦しい雰囲気の中、彼女がリビングから立ち去ると、俺はイライラした心を抱えたまま、外へと出て行った。その日の晩は他の女の所へ電話をかけ、激しく抱いた後、そのまま1泊を過ごしたが、イライラは収まるどころか、余計に酷くなっていく。朝から俺の不機嫌な様子を目の当たりにした女はさっさと仕事へ出かけて行き、俺は昼から大学へ行った。

ずっとルームメイトの赤く腫れた頬や驚いた顔が頭から離れないが、何故か家に帰る事は戸惑われて、結局それから3日間、ジェリーのStudioへと転がりこんだ。

俺の苛立を機敏に感じ取ったのか、深くは追求せず、しばらくほっておいてくれたのはさすがに長年の付き合いの成せる業か・・だが、3日目に奴が仕事から帰ってくると、俺を見やってため息を付きながら言った。

「忍、あんたそろそろ家に帰ったらどうなの?何があったのか知らないけど、あの純情そうなお嬢ちゃんも心配してるんじゃない?あんたが一緒に居てくれるのは、そりゃあ目の保養にもなるし、良いけど、そんな辛気くさい顔は見たくはないわよ。」


「・・・・。」

「あんたがそんなにやさぐれてるのは、あの子に関係ある事?喧嘩でもしたわけ?」

「・・そんなんじゃねー」

「そ?なら別にいいじゃない。明日からあたし、仕事で大阪に行くから、丁度良い頃合いでしょ。」

「わかったよ。」

結局半分追い出されるようにジェリーの自宅から出た俺は、叔母のマンションへと向かって歩き始めた。マンションの近くまで来ると部屋のある窓を見上げる。部屋には煌煌と明かりが灯っていた。帰って来ているのか・・・。一瞬戸惑ったが、そのままエレベーターに乗り、部屋の前までくると、鍵を開けて一歩室内へと足を踏み入れた。


***

カチャリという音がして玄関の扉が開く音がした。

(帰って来た・・・?)

しばらくの間電話のショックでぼーっとしていたが、その音に反応して私はリビングのドアをじっと凝視する。

ドアを開いて入って来た彼と一瞬視線が交差した。

***


「お、おかえりなさい。夕飯は?」普段と何一つ変わらない態度で彼女が声をかけてきた。少しほっとすると同時に急激にお腹が減った気がする。

「何かあるのか?」

彼女は花が開くようにニッコリと笑うと台所へ行き、冷蔵庫を開ける。

「帰ってきてくれて良かったです。3日分の食事をいれてあったんですけど、さすがに冷蔵庫もパンパンだし、あ、ちなみに3日前のは私が今日食べちゃいましたけど。」

そういいつつ、冷蔵庫から色々なものを取り出して、あるものはレンジで温め、あるものはオーブンで温めなおしたりしながらテーブルの上へと置いて行く。

「どうぞ?もう食べれますよ。」

まるでレストランの給仕のように完璧にテーブルの上に並べられた料理。俺は無言で食べだした。美味い・・・。最近ずっと外食ばかりだった為もあるが、久しぶりに食べる彼女の料理はできたてでないにしてもかなりおいしかった。

彼女は既に夕飯を食べていたのだろうが、俺に付き合ってか、椅子に腰掛け、俺の食べる様子を満足そうに見ている。なんだか、1歳年下の彼女の方が自分よりよっぽど大人だ。

ほとんど食事を食べ終えた頃、彼女がゆっくりと口を開いた。

「あの、忍さん・・。相談したい事があるんですが・・・。」


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