2-7 反省だけなら、猿でも出来る
泣きつかれました。打ち出の小槌など、御座いません。
「お義母さん。」
「何でしょうか。」
「助けて下さい。」
「お断りします。」
私の倍以上、生きた結果、こうなったと。大きな息子を持つと、苦労いたします。
「今回のことは、反省しています。」
「今回のこと、とは。」
「浮気です。ばれないようにしていたのに。」
えぇぇ。いろいろ大それた事、しでかしたでしょう。それなのに、浮気だけ?
「とても反省しています。だから、助けて下さい。僕にはもう、お義母さんしか。」
そんな目で見つめられても、全くトキメキません。手を握らないで下さい。私の好みではありません。
「紅葉から離れなさい。」
まぁ、だんな様。嫉妬ですか?
「僕にはもう、他に頼れる人がいないんだ。」
「だからって、なぜ。」
「初めて見た時から、好きだった。」
「義理とはいえ、紅葉はお前の母だぞ。」
なんだか、とんでもない方向へ。
「僕は心から紅葉さんを愛しています。」
「嘘は良くありませんよ。」
「嘘じゃない。僕には他に頼れる人が。」
結局、お金ですか。
「いい加減にしろ。紅葉は渡さん。」
「何だよ、何度も再婚したくせに。」
確かにそうですね。
「助けて下さい。お願いします。」
「知らん。出て行け。」
「反省しています。お父さん。」
「反省だけなら、猿でも出来る。」
修羅場、第三幕。私、人気があるのね。お化けになって、数年。この屋敷から出られませんが、おいしい供物に、住みよい環境。幸せです。ウフッ。
「紅葉、この爺を見捨てないでおくれ。」
「見捨てるなんて。」
「確かに、何度も再婚した。しかし、離れず支えてくれたのは、紅葉だけだ。私には、紅葉しかいない。」
まぁ、熱烈ですこと。照れてしまいますわ。