2-6 爆弾発言
そうですか、あの方が。いえ、ね。何となく、そうではないかと。
「僕は認めない。」
「認めるも何も、お前の兄だ。」
これが修羅場。だんな様、そんなに見つめるものでは。確かに、大胆なデザインですが。あら、まぁ。浮気相手を捨てて、その父に乗り換えるおつもり?
「私は、贅沢がしたいの。貧乏人なんて、真っ平。」
「な、何だって。」
あらぁぁ、奥方に知られて。修羅場、第二幕。どうなさるおつもりかしら。だんな様ったら、孫を連れて退散ですか。
翌朝。
「お義母さま。私、離縁いたします。」
「そうね。でも、どうなさるの。」
「どうって。」
「その、ご実家。確か。」
そんなに泣かないで。そうだわ。確か、英語が堪能で、翻訳もなさってらしたわね。だんな様、チャンス到来ですわ。
「ありがとう御座います。」
「良くってよ。これから、賑やかになるわ。」
就職おめでとう。姑と同居なんて、気が進まないでしょうに。良い嫁だわ。だんな様ったら、孫と同居できるのが、嬉しくて仕方がないのね。
「お、大奥様。大変です。」
あら? 珍しいこともあるのね。いつも冷静な執事が、大慌て。何があったのかしら?
「隠し子。だんな様の?」
「そうです。」
いえ、ね。お人違いでは? ハッキリ申し上げます。当家の主人、若い娘が好みですの。ええ、間違い御座いません。歴代の後添え、平均年齢十七です。ちなみに、私は十五で嫁ぎました。
「紅葉、何かの間違いだ。」
「では、この方は。」
「知らん。」
「私だって、知らないわ。この人、誰。」
「当家の主人です。」
まったく。他にも浮気相手がいたなんて。先物取引に失敗したうえ、家業を継いだなんて大嘘を。この屋敷を生前贈与された? 困った息子ですこと。