2-4 女主人
屋敷からは出られませんが、ずっと良いわ。三食、おやつ付き。ふっくら防止に、テラスで縄跳び。午後からは読書。書類仕事だって、完璧よ。
「紅葉。老い先短い人生。若い後添えを・・・・・・迎えようと思う。許してくれ。」
「許しません。私と同じ思いなんて、させませんわ。そもそも、なぜ、若い後添えに拘るのですか。」
「それは、その。」
「その。」
「若い体を」
「もう結構!」
聞いた私が、愚かでした。そうです。こういう人なんです。
「ところで、だんな様。私、気になることが御座いますの。」
「何だね。」
「実家のことです。なぜ、誰も会いに来て下さらないのかしら。」
「あぁ、それは。」
信じられません。先物取引で、莫大な富を手に入れたなんて・・・・・・。
まぁ。あの勉学嫌いのお兄様が、海外留学? しっかり、学んで下さいな。陰ながら応援いたします。
なっ、何ですって?! お、お父様が、若い娘と再婚? 私と、そう違わないではありませんか! 許せませんわ。
「お、落ち着け、紅葉。」
「落ち着いてなど。」
「し、しかし。その、すでに。」
「すでに、何ですの。」
「ややこが。」
ソファに崩れ落ちるように座りました。なぜですか、お父様。
「それで、その。夫婦仲は、良いのですか。」
「それはぁぁ、そのぉぉぉ。」
そうでしょうね。お兄様と結婚なら未だしも。よくまあ、親戚が許しましたね。
生まれて来る子に、罪は御座いません。妹か弟か。元気なら、それで良いわ。死んでしまっているけれど、姉は遠くから、見守っています。
「紅葉、相談があるのだ。」
「何でしょう。」
「事業の拡大を図ろうと思う。」
「何の事業ですか。」
「先物取引だ。」
「およしなさい。だんな様には、向いておりません。」
「そのような」
「先物取引なんて、博打と同じ。お父様は運が良かった。ただ、それだけです。」
この屋敷の女主人として、許可できません。お化け生活がかかっておりますの。当然ですわ。失敗すれば、美味しい供物が!
「だんな様。拡大するなら、貿易事業になさいませ。」
「貿易か。」
「洋酒、茶葉だけではなく、他の品も輸入するのです。そうですわね。珍しい菓子、美しい食器類。ほら、洋酒にショコラ。洋菓子には紅茶。それらを彩る食器類。」
結果、大成功。供物も豪華になりました。