2-2 籠の鳥
ヒドイ。話が違います。嫁したからには、励みます。けれど、座敷牢に入れるなんて。特別仕様? 嬉しくありません。
「今度の奥様、若いから。」
若いと、何なのでしょうか。
「前の奥様は、ひと月で。」
ひと月で?
毎夜、くりかえされる悪夢。私、耐えられません。前世の行い、悪かったのかしら・・・・・・。
「若奥様、おはよう御座います。」
「奥様。えっ、だ、誰か。」
紅葉、享年十五。新婚三日目の朝、旅立ちました。
葬儀も済んで、葬られたのに。なぜ出られないのかしら。どなたか、御存じありませんか。私、成仏できないの?
「娘さん、こちらへ。」
また、いらしたの?
「恨み、晴らしましょう。」
結構です。
「お望みなら、なんなりと。」
間に合っております。
もう、疲れたわ。お迎え、まだかしら。
「娘さん」
結構です!
「恨み」
間に合っております!
まぁ、ヒドイ。喪も明けていないのに、再婚なんて。
「今度の奥様も、若いわね。」
「十六ですって。」
お逃げなさい。新婚初日に座敷牢なんて。ときめかないわ。そうでしょう?
「紅葉。じ、成仏、してくれ。」
何をおっしゃるの?
「わ、悪かった。謝る。」
今更、遅いわ。
「ゆ、許してくれ。」
失礼しちゃうわ。あら、やだ。私、お化けだわ。何だか不思議ね、鏡に映るなんて。ウフッ。
「はじめまして。突然ですが、お逃げなさい。」
「に、げる。」
前の奥方はひと月、私は三日。世を儚むには、早すぎる。そうお思いになりませんか?
この座敷牢、特別仕様ですの。一度、入れられれば出られない。そういう仕様らしくて・・・・・・。
出たいのよ、私。でも、出られないの。あなただって、お嫌でしょう。
「お元気で。私の分まで、幸せになって下さいませ。」
「はい。ありがとう御座います。」
良いことをしたわ。お迎え、まだかしら?