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女王蜂

 非常に困ったことになりました。

 こともあろうかキラービー達に巣を見つけられてしまったのです。

 非情な彼らは私達の巣から蜜や子供たちを全て奪い去るまで攻撃をやめません。

 

 働き蜂達の視覚を通して彼らの動きを見ているのですが、あの大群ではこちらの防御もいつまでも持たないでしょう。


 絶対シールドをかいくぐってくる奴が出始めました。

 こうなったら最後の手段『スクランブルフラッシュ』を使うしかありません。私は思念で兵隊たちに指示を出すと彼らは、最後の力を振り絞り全力で羽ばたきをして『スクランブルフラッシュ』を放ちました。


 形勢逆転しました!


 視力を失ったキラービー達は飛ぶこともままなりません。働き蜂達はこの機を逃すまいと毒針で応戦します。


 一匹の持つ毒だけではキラービーを倒すことはできませんが2匹3匹となれば彼らも耐えられません。あっという間に巣の周りにいたキラービー達を倒すことが出来ました。


 これで一安心と思っているとさらに多くの群れがやってきました。最初の群れは私達に『スクランブルフラッシュ』を使わせる囮だったのです。


 もう私達に戦う力はありません。このまま子供たちを奪われ全滅してしまうのでしょうか。とても無念です。


 そんなことを考えていると、巣の前に今度は人族が突然現れました。


 このどさくさに紛れて人族は私達を襲おうというのか!


 私は怒りがこみ上げてきましたが、よく見ると飛び出てきた人族の動きが変です。キラービー達を倒し始めました。


 この人族はなんでこんな事をするのでしょうか?私達の蜜を奪いたいなら、キラービー達が私達を蹂躙した後奪えば私達を倒すという無駄な労力は省けるはずです。何故このタイミングで出てくるのでしょうか?


 それにしてもこの人族は強い!光の刃を放ったかと思うと今度はアイスランス、どんどんキラービー達を倒していきます。でも、倒しきれないキラービーに時々刺されては悲鳴を上げています。

 

 今度は音の刃、凄い数のキラービーを倒しました。あ、でも一匹彼に足の方に・・・え?・・・私が指示を出していないのに働き蜂達が絶対シールドを放って彼を守ったのです。

 

 働き蜂達はあの人族を仲間として認めた様です。戦いの中で友情が芽生えたというのでしょうか? いえこの際ですから細かいことは気にしないことにしましょう。私は全ての働き蜂にこの人族を守るように指示を出しました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 戦いは終わりました、私達の完全勝利です!


 働き蜂達は何故かあの人族と同じポーズをとって喜んでいます。共に戦ったことにより友情が芽生えたのでしょうか?


 勝利はしたのですが、残念ながら半数以上の働き蜂が良き絶え絶えの状態です。このままでは次に襲撃に耐えられませんし、キラービーに見つからないよう巣を移動させることもままなりません。

 

 ですが、おお、なんてことでしょう、あの人族は働き蜂達にハイヒールをかけてくれています!彼が蜂蜜を欲するなら、そのまま働き蜂が弱り切ったこの巣を襲えばよいのに・・・彼の目的は違ったのですね・・・疑ってすみません。

 

 貴方様は私達の救世主です。


 働き蜂達にハイヒールをかけ終えると彼はホッとしたような顔を見せるとこの場所を立ち去ろうとしています。


 いえ、このまま彼を立ち去らせてはなりません。私は蜂蜜のたまった巣の一部を取ると彼の元へ飛んでいきました。


 私が蜂蜜を差し出すと、最初は遠慮したような行動をとっていましたが、私の強い意志を見せると、彼は受け取ってくれました。私の感謝の気持ちが通じたようで本当に嬉しかったです。


 蜂蜜を受け取ると彼は亜空間を開き、蜂蜜をそこにしまいました。凄い!あんなに強いにだけではなく、こんな便利なスキルを持っているなんて!そんなことを考えていると、彼は亜空間から何かの実を出してきて私に差し出してきました。


 こっ、こっ、こっれは―――――――――サンガの実ではないですか!サンガの実はエルハニービーにとって憧れの的であり、最も神聖とされる果物、この果物の甘さは蜂蜜を上回り、この木に咲く花からは最高の蜂蜜が取れると言われています。私も見るのは初めてです。先代の女王から受け継いだ記憶から知っているだけです。その完熟したサンガの実が新鮮なまま3個も!種は地に植え、サンガの木を育てることにしましょう。そうすれば子孫たちにもこの実を与えることが出来ます。


 サンガの木は、この森にのどこかにあるとは聞いていたのですが、BランクやAランクの魔物がうじゃうじゃいて入っていはいけない場所と先祖代々言われています。あのお方はそんな場所から来られたのでしょうか?どおりでお強いわけです。彼がエルハニービーだったら私の夫にしたいくらいです。


 ああ、そんなことを考えて喜んでいる間に、あのお方は行ってしまわれました。お名残り惜しい、あんな蜂蜜だけではとてもお礼としては不十分です。

 

 せめて私の記憶に彼の姿を刻み、我が一族の神として代々語り継ぐことにしましょう。


 本当にありがとうございました。

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