蜜の誘惑
今日もソーリの森を歩いていくと、木々がまばらになり陽光が差し込んできた。
光が差し込んでいる方を見ると木々の間にピンクの花がびっしりと咲き誇っていた。
バラに似ているな、それにしても凄い数だ!食べられる実でもなっていないか?
俺にとっては花より団子である。少しでも食料を調達しないとね。
花々の方をジッと見ていると何かが動いているの見えてきた。
お、花の中に何か飛んでいるな。蜂か?
花々の中をスズメバチぐらいの大きさの蜂が沢山飛び回っていた。
蜜蜂にしては大きいけど、どう見ても蜜を集めているな、鑑定してみよう。
{エルハニービー}
*蜜蜂科
*体力:100
*魔力:50
*スキル:絶対シールド、スクランブルフラッシュ(いずれも集団でなら使用可能)、ポイズンニードル小
*幼虫のみ食用可、集めた蜂蜜も食用可(貴重で美味)
*性格は大人しく、攻撃しない限り他者を襲うことは無い。
でっかいけど、やっぱり蜜蜂なんだ。蜂蜜・・・欲しいけどな、略奪になるからやめておこう。
エルハニービー達を横目に見ながら先に進もうとすると彼らの羽音より一段とでかい音が後ろから聞こえてきた。
なんだ?女王蜂か? いや、違う種類の蜂だ!あの蜂、カラスぐらいあるぞ。しかも何、あの数
{キラービー}
*スズメバチ科
*体力:450
*魔力:500
*攻撃力:500
*スキル:ポイズンニードル大、キラーバイト
*幼虫のみ食用可
*性格は攻撃的で集団では自分たちより大きい魔物も捕食対象となる。
いや、あの大きさはスズメバチではないでしょう、エルハニービー は蜜蜂が大きくなっただけだけど、キラービーはスズメバチより凶悪な顔をしているし、いかにも魔物だよ。
俺は咄嗟に地面に身を伏せていると、キラービーの群れはゼントのいる場所を通り越してエルハニービーの方に向かっていった。
良かった、気が付かれなくて。て、元々あいつらの狙いはエルハニービーか?
俺は気になったのでキラービーが向かって行った方に向かって歩き出した。
少し歩いていくと巨大な木の洞の周りにキラービーの群れが集まっており、木の洞にいるハニービー達を取り囲んでいた。
数匹のキラービーが木の洞に入ろうとすると、洞の周りにとまっているハニービーたち羽を一斉にうごかした。その時、キラービー達は何か見えない壁にぶつかったかのように行く手を阻まれていた。
あれが絶対シールドか?
キラービーが木の洞に飛び込もうとして弾かれるということを何回か繰り返していると、絶対シールドをかいくぐって何匹か洞の中に突入し、ハニービーたちを強力な毒針で刺し殺したり、狂人な顎で食いちぎったりと、殺戮が始まった。
ヤバい、助けるか? いや、自然の中の戦いに干渉するのは良くないか?
俺はエルハニービーに加勢したいのを我慢しながら様子を見ていた。
絶対シールド内に入り込んだキラービーの殺戮により絶対シールドが張れなくなったハニービー達は洞の中央付近に集まり出した。
何をする気だ?
一か所に集まったエルハニービー達は絶対シールドを張った時よりもより一層強く、一斉に羽ばたきを始めた。その時、そこを中心に強烈な光が放たれた。一瞬真っ白になったかと思うと、その後は真っ暗で何も見えなくなった。
ヤバい、網膜をやられたかと思ったが、何故か直ぐに視力が回復した。
おお、キラービーが右往左往している! 奴らの視力はまだ回復していないのか?
あの発光がスクランブルフラッシュか?
目をやられたキラービー達は何匹かのエルハニービー達に取り付かれて、毒針を刺されていた。形成は完全に逆転しており洞の周りのキラービー達は次々に倒されていった。
やるなあ、これで大丈夫だな。
俺が立ち去ろうとすると、大きな羽音を立ててキラービーの群れが再びハニービーの洞に集まってきた。
もしかして最初の群れが囮で、スクランブルフラッシュを使わせるのが目的だったのか?魔力を使い切るのを待っていたのか?
魔力を使い切ったハニービー達は絶対シールドを張ることもスクランブルフラッシュを使うこともできず、キラービー達に蹂躙されていった。
くそ、あれじゃあ全滅させられるぞ! ん? なんか羽音が後ろからも聞こえてくるような?
俺は後ろを向くと、数十匹のキラービーが俺に向かって突進してきた。
めっちゃ、ヤバい!!!!
俺は木刀で向かってくるキラービーを何匹か叩き落としたが、打ち漏らした奴が俺の尻に毒針を刺していった。
「痛ってーーーー!!!!」
俺は余りの痛さに茂みから飛び出して、洞の近くまで来てしまった。
キラービーはエルハニービーと一緒に俺も餌にしようと襲ってきたのだ。
「そうか、お前らは俺の敵だな!」
俺は尻にヒールをかけて木刀を構えてキラービー達に対峙した。
少しの間沈黙が続いたが、キラービー達は一斉に俺に向かって突進してきた。
俺は光の刃を連射しながら遠くのキラービーを撃ち落とし、接近してきた奴は木刀でたたき落としていたがきりがない。光の刃では線状にしか飛ばせないので、落とせる数が少ないのだ。
打ち損じた奴が噛みついたり毒針を刺してくるのでめちゃくちゃ痛い。
光の刃では効率がわるいな、アイスランスならどうだ?
俺が氷の刃を放つとアイスランスが飛ぶ周りのキラービーまで羽が氷つき墜落するので、光の刃よりは効率がいい、でもいまいち。
そらなら、音の刃はどうだ?
音の刃はある程度の広がりがあるのとある程度の時間放出できるので、俺は木刀を水平に振って音の刃を放った。
思った通り、かなりの数のキラービーを倒すことが出来た。それでも打ち漏らしたやつが俺に急接近して襲ってきた。
ヤバい、やられると思った時、キラービーは突然壁に当たったかのように行く手を阻まれていた。
ハッと思い後ろを見ると、エルハニービー達が集団で羽ばたいていた。
お前ら、絶対シールドで俺を助けてくれたのか。よし、これから反撃だ!
俺はキラービー達に音の刃を打ちまくった。
打ち漏らしたキラービーは絶対シールドに阻まれて俺には近寄ってこれない。
俺とハニービーで共闘をはじめたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数分後、周りのキラービー達をほぼ駆逐することが出来た。生き残りのキラービーも戦況を不利と判断したのか、元来た方に逃げ去っていった。
「よっしゃ、勝利だ!」
俺は思わずガッツポーズを取ると周りのエルハニービー達も同じようなポーズをとっていた。
戦いが終わり周りを見渡すと、かなりの数のエルハニービーが傷つき、あえいでいた。
蜂に効くかな?
俺はハニービー達にハイヒールをかけてみたところ、みるみる元気になり、敗れた羽も元に戻っていった。うん、よかった。
俺は右手を上げて挨拶をした後、その場を立ち去ろうとしたとき、木の洞の中からでかい蜂が出てきた。
キラービーの生き残りか? いや、殺気は感じないし、ハニービー達も落ち着いている。もしかして、あれが女王蜂か?
女王蜂らしき蜂は前足に何かの塊を持って俺の方に近づいてきた。
「これは蜂蜜?」
そう女王蜂が手に持っていたのはハニカム型の巣の中に入った蜂蜜だった。
女王蜂はその蜂蜜のを俺に差し出してきた。
「え? もしかして俺にくれるの? いや、そんなつもりで戦ったんじゃあないんだけど・・・。」
俺がキラービーに襲われた弾みでキラービーを倒した結果、ハニービーを助けることになっただけなので、凄く後ろめたい・・・でも、この蜂蜜見たらいらないとは言えないよね・・・ありがたく頂戴しました。
でも、このままだとさすがに気が重い、何かお返しはないか?そういわれてみればサンガの実がまだあったな。確か蜜蜂は砂糖水とかでも餌になると聞いたことがあるので、あの異常に甘い実なら食べられるんじゃあないか?
俺は女王バチに頭を下げてお礼した後、亜空間からサンガの実を3個取り出して女王蜂に差し出した。
サンガの実を受け取った女王蜂は触覚をサンガの実に押し付けた後、急に羽を高速で羽ばたき始めた、さらに女王蜂の後に続けとばかりに他の兵隊蜂達も同じように高速で羽を羽ばたかせ出した。
やばい、何かやってしまったか?・・・・いや、よく見ると怒っているのではなく喜んでいるのね・・・良かった。
俺は右手を上げてからその場を後にした。