表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/123

毎日がサバイバル①

「ウルス、何見てるの?」


「ちょっと前に異世界から間違って転移してきた若者だよ、ヴェルス。」


 ウルスが見ている鏡には、ゼントが魔剣で森の草をなぎ倒しながら進んでいる姿が映っていた。


「魔剣をあんな風に使うの勿体なくない?」


「だよね~。」


「ウルス、彼に鉈とかあげなかったの?」


「あの木刀だけ。」


「それはかわいそうじゃない。あのままだと魔力切れになって魔物が出てきたとき倒せないでしょう。」


「ほら、魔物がでてきたぞ。」


「え!彼の魔力、ほとんどないじゃない!」


 鏡には全斗がイノシシに似た魔物ファイアボーアと対峙している姿が映っていた。


 全斗は光の刃を放つが魔物によけられてしまった。そのまま猪突猛進で突っ込んできたファイアボーアに再度全斗は光の刃を放ったがほとんど飛ばすことができず消えてしまった。そのままファイアボーアの牙に串刺しになる!・・・寸前で全斗は体を横にずらし角を避けていた。


 ファイアボーアは勢いで数m突進した後すぐにUターンして全斗の方を向きなおした。

 ファイアボーアは「ふん!」と大きな息をしたと思うと鼻先から炎を吹き出し、それを体中に纏い再び突進してきた。魔物の体は炎を纏い2倍くらいなって見える。


「絶対絶命じゃない!」


 ゼントは炎を纏ったファイアボーアの突進に対してまた横に飛び逃げようとしたが、炎を体に浴びてしまい服の一部が燃え出した。ゼントは転がりながら火を消して辛うじて立ち上がった。


 ファイアボーアは再び方向を変え、炎を纏ったままゼントに突進してくる。


 ゼントにはもう逃げる力も残っていないようだったが、全斗は何を考えたか剣を頭上から地面に向かって振り下ろした。


 辛うじて飛ばすことが出来た光の刃は地面に当たり、突風を引き起こした。

 

 突風は草をなぎ倒しながらファイアボーアに当たり、頭付近の炎を一時的に吹き飛ばした。

 

 ゼントは駆け出し、炎により吹き飛ばされた魔物の頭部に真横から剣で切りつけた。


「バキッ!」


 鈍い音と共に木刀ごとゼントは突き飛ばされたしまったが、ファイアボーアはそのまま直進していった。


「あの木刀折れちゃったの?」


 これで武器は全て無くなってしまった。あの若者の命も・・・ヴェルスは思った。


 ファイアボーアは数十m突進したと思うと炎をまとったままふらふらと倒れてしまったのに対してゼントは満身創痍であったが立ち上がってきた。

 

 木刀は無傷で健在である。


「ウルス!まさかあの木刀は!」


「そう、ユグドラシルの枝から作った木刀!オリハルコンでも折ることはできないね。」


「そう、彼にあれを与えたのね。でも、光の刃で雑草を刈って、魔剣で魔物を撲殺するって・・・使い方を間違っているとしか思えないわ。」


「そういうことをする奴だから見てて面白いんだ!」


 まったく好き勝手言っている女神達である・・・。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 あ、危なかった~。


 気持ちよく下草刈ってたら魔力切れ寸前だったのか。

 次からは気をつけよう。


 痛っ、ファイアボーアの炎で全身大やけどで、上着は半分くらい燃えてしまっている。

 最初の体当たりがヤバかったな。


 木刀は?・・・なぜか全く焦げていないし、傷一つついていない。

 こいつも炎に触れているはずなのに???


 どうせ異世界なんだし、深いことは考えないでポーションを飲んで傷を癒した。


 ファイアボーアは火を纏ったままで絶命したため全身の毛が焼けて無くなり倒れていた。

 額には木刀が当たった後がくっきりと残っていた。


 イノシシの丸焼き、これ食えるんじゃないか?


 鑑定してみる。


{ファイアボーア}

 *イノシシ科

 以下生前の能力

 *体力:800

 *魔力:350 

 *スキル:火だるま(炎を全身に纏い突進して相手を倒す。)

 *食用可(美味)


 ホーンラットの比ではない強さだ。

 それより食用可(美味)と出てきた。

 これは、ぜひ食さなければ!


 女神様が亜空間においてくれていたナイフでイノシシの解体を始めた。

 

 動物の解体なんかしたことないので完全に我流だ。


 毛は完全に焼け落ちていたが、皮の少し下は生のまま、足や首を切り落としてから内蔵を取り出してみた。さすがにえぐいな・・・、そういえば血を抜くんだったっけ?


 胴体を2分割した後、木のつるを使って木の枝にぶら下げてみた。


 このままにしておくと腐りそうだし、他の魔獣が血の匂いを嗅ぎつけて寄ってきても嫌なので亜空間にぶら下げてみようと開けてみた。

 

 つるをひっかける場所がない・・・困った。と思っていると天井の一部がフックのような形に変わってきた。

 

 俺の亜空間だから思い通りの形になるのか。とっても便利!

 

 それなら、出てきたフックを今度は紐状に垂れ下がらせ、それで肉を縛ってから紐状の部分を短くして吊り下げた。


 そろそろ夕方だな、この辺で野宿か、せっかく肉が手に入ったのだから焼いて食べてみよう。


 まずは火を、ここに来る途中で真っすぐな枯れた枝と木の破片を拾ってきたので、それを取り出す。

 

 以前テレビで見たように木片の上で木の枝を回転させて摩擦熱で火を起こす方法を試してみる。

 

 赤熱してきたら枯葉をおくのだが、なかなかそのような状態にならない。

 

 30分ぐらいやってやっと煙が出てきたので、そこに枯葉をおいて火種にする。


 めちゃくちゃ効率が悪い。


 ほんと、魔法でも使えれば便利なのだが・・・魔法といえば魔力。 

 魔力はある、魔剣を使って何とかならないか?


 ファイアボーアとの闘いから時間が経ったので魔力は回復しているはずだ。


 太陽の光は一点に集めると簡単に火が付く・・・ならば。

 

 枯葉を纏めたところに向かって魔剣を構える。



 魔剣の先端を枯葉に向けて魔力を集中して、先端から光の刃を放った。

 一瞬で枯葉が燃え出した。


 今までの努力は何だったんだ?

 ファイアボーアの肉を少し切り取り、小枝にさしてから火にかざした。

 

 女神様からもらった食料の中に岩塩があったので、削って肉にかけて食べてみた。

 臭みがあるが干し肉とは違って美味い!

 

「胡椒とか醤油が欲しいな。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ