ぼちぼちやっています
20XX年日本のとある地方都市。
初老の夫婦がコタツでお茶をすすりながらテレビを見ていた。
『皆さん、この歴史的瞬間を御覧になってください!某国でのクーデターの後二つの超大国と日本、それと世界の国々が『人類の幸福のため』作り上げた人口知能が今起動します。私はこの歴史的瞬間に—』
アナウンサーの声を遮る様に二人の息子と思われるアラサーの男が2階から駆け下りてきた。
「父さん!母さん!」
「何だ恵一騒がしいな!今テレビのニュースが良い所なのに。」
「メ、メールが来たんだよ!メールが!」
「なんだ、メールぐらいで騒がんでもいいだろう!」
「ぜ、ぜ、ぜ、ぜ・・・・」
「何息を切らせてるんだ?」
「いや、息を切らせてるんじゃない!ぜ、全斗からメールが来たんだよ————!」
「何だと―!」「何ですって!」
「本当なのか!?」「本当ななの?」
「本当だ・・・・多分、まあ、これを見て!」
恵一がスマホをテーブルの上に置くとスマホはスライドするように縦横に広がりあっという間に20インチぐらいの画面を作り出した。
『父さん、母さん、恵一兄さん、元気ですか?俺、全斗が突然いなくなったので心配をかけてしまったと思います。ちなみに何でいなくなったかと言うと、いわゆる異世界召喚と言うやつで、実際は俺が召喚されたわけじゃないけど巻き添えで召喚されちゃったんだよね。』
『この世界とそちらの世界は平行世界なんだけど、どこかで強力な絆があるみたいでね、この世界のAIが残した通信網を使って10年かかったけどそちらの世界のインターネット回線をやっと見つけることが出来たんだ。いやーコネクトにはお世話になったよ。あ、コネクトって俺のスキルの事だから・・・・』
メールに添付されていた写真を見ながら怪訝そうな顔をしてゼントの父は兄の恵一に言った。
「おい、恵一!親をだますなんて大概にしろ!こんなCGまで作って!俺はまだぼけておらんぞ!」
「いや、俺こんなCG作らないって!」
「でも、こんな大きな亀いないでしょう。」
母は頭が人の背丈の数倍ある亀の写真を指さしていた。
「そうだ、この黄金の龍なんか頭に子供がのっているじゃないか!タツノコ太郎じゃあるまいし!」
「あら、でも良くできているCGね、この大きなイカとってもおいしそうだし。それにしてもゼントは高校の時からあまり変わってないのね。でもちょっと逞しくなったかな。」
ゼントの食い意地の張った性格は祖母から母と受け継がれたものだった。ちなみにゼントの父は婿養子である。
「これはゼントが送ってきたやつだから俺にはCGかどうかだなんて分からないよ!写真のことはおいといて先を読んでみよう。」
『俺がこの世界に来てから色々な人と知り合い、お世話になってきたんだけど、そんなこんなやってるうちに嫁さんがいっぱい出来ちゃって・・・。俺の右隣にいるのがこの世界で以前女神をやっていたヴェルスで、左隣が獣人クーマオ族の族長の娘でミュウ、右前に座っているのがエルフの剣聖ゼン、前に座っているのがザウス領の領主の娘でリーナ、左前にいるのが王都の大商会の姉妹でシェリーとサリー。それと俺の肩に載っている青い髪の娘がブルーって言うんだ。元は異世界から来た鳥だったんだけど、俺達に合わせて人間になったばかりなんだよ。鳥の時の癖が抜けなくて肩にとまっているんだ!』
「いや、なんだと?嫁さんがいっぱい?鳥さんが人間??」
ゼントの父は既に何が何だか分からなくなっていた。
「凄い綺麗な子ばっかりじゃない!良かったゼントも結婚していたんですね。」
ゼントの母は深いことを考えない性格のため、順応するのが早かった。
「おのれ全斗め、異世界でハーレム作ったのか!」
ゼントの兄は拳を握りしめていた。
「それかから嫁さんがいるということは子供もいたりするわけで、ヴェルスが抱いている女の子がスクルス、ヴェルスの隣に立っているのがお兄ちゃんのオーディ、皆の前ではしゃいでいる猫耳の女の子がミュウの子でクウ、金髪の女の子がリーナの子でミーナ、エルフの男の子がゼンの子でセイジ、龍のリーの上に載っている黒髪の男の子がシェリーの子でハヤトって言うんだ。それとサリーのお腹の中にもう一人、あと3か月で生まれる予定なんだ。当然全員親父たちの孫だからね!それと、オーディの隣にいるのがヴェルスの姉でウルス、ウルスが抱いているのが彼女の子供でユグトって言うんだ。あ、勘違いしないように言っておくけど、ウルスは俺の嫁さんじゃないから。」
「いや、これは全く思考が追いついていないぞ・・・。」
ゼントの父は頭を抱えていたが、母は大はしゃぎで写真を見ていた。
「でもねえお父さん、このハヤトって男の子ゼントが小さい時に似てない?それにセイジって私のお父さんの名前よ!」
「これ、全部私達の孫ですって!恵斗一人じゃなかったのよ!」
ゼントの母は満面の笑みを浮かべて喜んでいたが、父はなおも疑っていた。
「でも、この写真はあいつが造ったCGじゃあないのか?」
ゼントの母はゼント達の前で遊んでいる子供たちを指さして言った。
「違いますよ、お父さん!CGがこんなに生き生きとしていますか?」
『・・・話は変わるけど、こちらの世界にはそちらの世界から転生した人が大勢いるんだ。まずミュウだけどこの子はその名の通り何と家に居た猫のミュウの生まれ変わりなんだ。この辺は序の口で、エルフのゼンはゼンばあちゃんが転生したんだ!本当の名前はカトリーヌって言うらしいんだけど、前世の記憶を思い出した時に改名したんだって。ふざけてカトリーヌって呼ぶと頭を殴られるから本当に嫌だったんだね。その他にゲンジさんにケンさん・・・・それと他に厳密には違うけどシェリーもそうかな。シェリーは王都で商会をやっているので転移装置を使って王都とザウス領を行ったり来たりしているんだ。・・・・・・」
「あ、お母さんそんなところにいたのね。それでこの耳が長い男の子はセイジっていうのね。お母さんもミュウも別嬪さんになっちゃって。」
「・・・・・・・・。」
ゼントの母は嬉しさの余りに涙をながしていたが、父は考えるのを停止していた。
「そういえば、この端っこにいる奴ゼントと一緒にいなくなった友達に似てないか?」
恵一が写真の片隅に手を繋いでる男女の男の方を指さした。
「あら、そうね、この子だったかもしれないわね。この子も幸せそうな顔をしてるわ。」
『・・・・と言うことで、俺は今ゴード国のザウス領という所で領主代行をしています。 リーナの弟が成人するまでという約束だけどね。』
『そんなこんなで色々あったけど、俺はみんなと一緒にぼちぼちやってるので心配しないでください。』
今回で最終回です。
勢いで書き始めて約1年半、良く完結できたと思います。
つたない小説ですが読んでいただき本当にありがとうございました。