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ビヨンド湾海戦①

「何故だ!何故ホーリーランスの軌道が変わったんだ!」


 ユートは2撃目のホーリーランスが上空で炸裂するのを見て何が起こったのか理解できなかった。


「ふん、まあいいさ、当たらなければ当たるまで打てばいい!あんな化物を放置するわけにはいかないんだ!」


 ユートは突然出現した巨大なガメ〇を完全に敵と認識していた。先制攻撃を加えたのは魔動船であることなどは関係無い。彼にとってモンスターは全て悪、それを出現させた(とユートが思っている)ゴード国も悪なのだ。ホーリーランスが街に落下し街の人々が命を落としたとしても、彼にとってはゴード国に住む人々全てが悪なのだから・・・・。


 ユートは3撃目のホーリーランスを放った。すると、ほぼ同時にガメ〇が空に向かって凄い勢いで飛び立っていった。


「ちっ、逃がさんぞ!」


 ユートが4撃目のホーリーランスを放とうとすると、3撃目のホーリーランスが、またも不自然に軌道を変えた。


「なっ!」


 3撃目のホーリーランスは海面に突き刺さると一瞬で辺りの海水を蒸発させた。


「す、水蒸気爆発か!」


 海面が一瞬盛り上がったかと思うと、そこから物凄い水柱が立ち上がり、そこを起点に大波が魔道船に襲い掛かってきた。


「絶対シールド!」


 ユートは魔動船全体を覆うようにっ絶対シールドを展開し、魔動船を守ったが、絶対シールドごと魔動船は大波に翻弄されながら沖へと流されて行った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 魔動船の動きが落ち着くとユートは絶対シールを解除し、港の方を見た。するとそこには月光に輝く黄金の龍が、その背に翼を生やした男を乗せて悠然と構えていた。


「成る程、お前の仕業だったのか。ゼント!貴様は魔族と成り果てたか――――――!!」


 ユートの怒号がビヨンド湾に響いた。

 魔物に乗った翼を生やした男、ユートにとって正に魔族のイメージそのものだった。


「まて、ユート!俺は魔族になんてなっていない!」


「寝ぼけたことを言うな!その翼、どう見ても魔族そのものだろう!」


「いや、これはパワードスーツみたいなもので取り外しできるから-」


「問答無用!!」


 ユートはゼントの話が終わらないうちにホーリーランスを出現させた。


「お前、一体いくつホーリーランスを打てるんだー!」


 ホーリーランスは魔力を大量に使用するため、魔王並みのリーナの魔力を使っても2撃打てるかどうかなのに、ユートはまるでゼントが使う光の刃並みに軽々と打ってくるのだ。


「キャウ———!」


 ユートがホーリーランスを放つ瞬間、ブルーがホーリーランスにめがけて飛び立ちホーリーランスの軌道を真上に変えるとホーリーランスは再び上空で花火の様に炸裂した。


「その鳥は・・・・聖獣か?おまえ、それを何処で手に入れた!?」


「それって言い方はないだろう!聖獣かどうかは知らないが、異世界から召喚されて死にそうになっていたのを助けてから友達になったんだ。」


「そうか、俺の為に召喚された聖獣を奪ったのはお前だったのか———!」


 ユートの怒りは頂点に達して目は血走り、暴力的な魔力を全身から放出した。


「おい、待てユート、人の話を聞け!何をそんなに怒っているんだ——?」


「主、この魔力はヤバい、一旦引こう!」


 リーの言葉に頷きゼント達が一旦距離をとろうとした時。


「逃がさないよ!ホーリーランスが効かないなら、これならどうだ?」


 ユートは放出している魔力をオリハルコンの剣に集中させた。


「アンブロークン・サークル!」


 ユートが円を描く様に魔剣の切っ先を動かすとそこに光りのリングが出現した。


「喰らえ!」


 リングは出現した点からゼントに向かって直径を拡大しながら伸びてきた。そう、飛んできたのではなく伸びてきたのだ


『直グニ離脱シテクダサイ!、アノ円ノ中ノ空間ハ全テノモノヲ消失サセマス!』


 ゼントは間一髪リーとブルーを連れてムーブで転移した。


「逃がさないと言ったはずだ!」


 ユートはすかさず2撃目のアンブロークン・サークルを放った!


「やばい!避けきれない!」


「キャゥ—————————!」

 

 ブルーが鳴いたその瞬間、ゼント達はビヨンド湾の西の端まで移動していた。

 ブルーはコントロールできないアンブロークン・サークルではなく、自分達にスキルを使ったのだ。ブルーが一瞬自分達にかかっている重力と慣性力を無にしたことで星の自転についていくのを止めたことで、星の自転の速度を得たのだ。


「あ、ありがとうブルー!本当、ヤバかったー!」


「キャウ、キャウ」


「喜ンデイル暇ハアリマセン!勇者ガ高速デコチラニ移動シテキマス!」


「そうか!リー、ブルー、一塊になっているとあのスキルの餌食になりやすいから分かれて攻撃しよう!俺が囮になるから隙を見てユートの動きを止めてくれ!」


「分かった!」「キャウ―!」


 ブルーは空に飛び立ち、リーは人間の姿になると海に沈んでいった。


「次、デカいのが来る!」


「マダ魔力ノ反応ハアリマセン。何デスカ?デカイノッテ?」


「さっきから時々攻撃してくるイメージ見えるんだよ。ほら!」


 ゼントが木刀を大上段に構えると、魔力の急激な増大を感じた。


「来る!」


 巨大な白く輝くファイアボールが目前に来ていた。


「ドォリヤ———————————!」


 ゼントは大上段から木刀をファイアボールに振り下ろすとファイアボールは真っ二つになってゼントの後方に飛んで行った。


 二つに分断したファイアボールは轟音と共に岸壁に衝突し、付近の地形を変えてしまった。


「ゼント———————!!」


 目前にユートが迫ってきていた。


「おまえ、どうやって空飛んでるんだ———!」


 そう、ユートは風魔法などは使わず、自身の魔力だけで飛んでゼントに突っ込んできた。


ガッキィ———————ン!


 横薙ぎに払ってきたユートの剣をゼントは木刀で受け止めた。


「な、なんで木刀なんかでオリハルコンの剣を受け止められるんだ————!」


「こいつは女神様に貰った特別製だよ!」


 ゼントはオリハルコンの剣を跳ねのけるて突きを返すと、何とユートは片手で受け止めたのだ。


「俺の体も特別製だ!」


 ユートはにやりと笑うと木刀ごとゼントを岸壁めがけて投げ飛ばした。


「おゎ—————っ!」


 ゼントは岸壁に衝突する直前で体勢を立て直し垂直な岸壁にまるで立つように着地してユートの方を見ると、なんと目前にホーリーランスが飛んできた!


「撃つの早すぎだろ―———————!」


 ゼントは岸壁を蹴り上方に逃げて何とか回避すると光の刃をユートに向かって連撃した。


「はは、そんな子供だまし俺に聞くわけないだろう!」


 ユートは光の刃を何事も無かったかのように全身で受け止めたのだ。


「どうだ、ゼントこれから逃げてみな!これ絶対シールドも効かないよ。」


「サウザンド・スピア!」


 ユートの前に無数の光のスピアが出現し、ゼントめがけて飛んできた。


「くそ、ウェービング・シールド!」

 

 カン、カン、カン、カン!! ゼントが張ったシールドは光のスピアを防ぐのではなく全て後ろに流すように弾き飛ばした。


「な、なんだそのふざけたシールドは?」


 ユートは呆れたようにゼントの方を見ていた。

 ゼントは以前スクルスが光のスピアを放った時に使った新型シールドを使ったのだ。

 ちなみにこの名称はゼントの中ニ心によるものである。


(よし、今だ!)


 ゼントが念話で合図を送ると、海面から複数の怪光線がユートを襲った。


「こざかしい真似を!」


 ユートは分厚い何重にも張った絶対シールドで怪光線を防ぐと、シールドを解除しサウザンド・スピアを海面に打ち込んだ。

 

 ドン!


 ユートが無防備になった瞬間を狙い、ブルーがユートの背後で超音速に到達したのだ。

 ユートはブルーの放った衝撃波で前方に吹き飛ばされ体勢を崩した。


「よし!」


 ゼントはここぞとばかりに俊速を使いユートに切りかかって行った。


「貰った!」


 スローモーションの様に動くユートの腹をめがけて木刀を切り付けようしたその時


「うっあっ」


 ゼントは吐き気を伴う眩暈に襲われて俊速を解除してしまったのだ。


 ユートは俊速を解除してしまったゼントを常人を越えた反射神経で察知して胸倉をつかみ持ち上げたのだ。


「貴様、スキルを解除するとは一体何のつもりだ?」


 ユートは鬼の形相でゼントを見つめた。

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