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報連相①

 ゼント達はビヨンド橋でリバイアサンに別れた後、昨日デーモンオークが出現した場所に来ていた。


(コネクト、さっき説明したみたいにこの辺りの看板をスキャンしてくれ。)


(了解!)

 

「ゼント、何をコネクトにやらせとるんじゃ?」


「まあ、ちょっと待ってて。」


 ゼントもまだ半信半疑でコネクトに解析をやらせているのだ。


(ビンゴデス!)

 

(お、やったか!)


(主ノ言ウ通リ、コノ地点ヲ中心ニ半径ニ半径100mノ看板ノ金属部分ノ内部ニ構成サレテイル部品ヲ組ミ合アワセルト転移装置ヲ形成シマス。)


「何じゃと!」「なんですって!」「フーン。」


 コネクト声はリンクで皆に聞こえているのだ。


「ゼントさん、良く気が付きましたね!」


「ああ、それはケイラ商会のメイドの子が、あの時間にこの近辺で何かがいっぱい光ったって言う話を聞いた時から何かが引っかかっていたんだけど、王城付近から海に向かう時に無数の光輝く看板を見て、これじゃね?って思ったんだ。」


 ゼントは満面のどや顔である。


「メイドの子って、ゼントさんがトイレに行った時に聞いたんですか?」


「ああ、そうだよ。」


「私はてっきりナンパしに行ったのかと思いました。あの人綺麗でしたし・・・。」


 ヴェルスはジト目でゼントを見つめていた。


「・・・・そ、そんなことするわけないじゃないか。それよりナンパなんて言葉誰に聞いたんだ?」


「コネクトさんですよ。」


 コネクト、向うの世界の言葉をやたらに教えるんじゃない。そんなことを考えながらもゼントは話を続けた。」


「それにしても、この看板は王都にいくつあるんだろう?」


「・・・・つ、もしかして王都の何処にでもモンスターを転移させることができるってことですか?」


 ヴェルスが蒼い顔で雑貨屋の看板を見た。


(コノ看板7種類有リ、コノ7種類ヲ組ミ合ワセル事デ転移装置ヲ形成シマス。王都ニアルコノ看板ノ数ヲ確認シタ所、427個アルコトヲ確認シマシタ。)


「61体のデーモンオークを呼び出すことが出来るって事か・・・。」


 ゼント達は一瞬言葉を失ってしまった。1体でも倒すのが困難なデーモンオークが61体も同時に王都に出現したら、打つ手がない。多数の人達の血が流れ、地獄と化すだろう。


「全部壊しちゃおうか?」


 ゼントのノー天気な提案にゼンが反論した。


「いや、これだけの数の看板じゃ、同時に壊さないとこれを仕掛けた奴らが残った看板を使って攻撃を仕掛けてくるやもしれん、奴らにこちらの動きを気取られたら終わりじゃ。」


「「「「・・・・・・・・」」」


「まあ、ここで悩んでいても仕方ないわい、リバイアサンの件も含めてウイリアム達に報告して対応を決めるぞい。」


「そうか、ばあちゃん、報連相だな。」


「「ホウレンソウ??」」


「ゼント、腹でも減ったのか?我は野菜より肉の方がいいぞ。」


「ゼントさん、大丈夫ですか?やっぱりリバイアサンにやられた時に頭を打って・・・・。」


「いや、まだそんなに腹は減ってないし、確かにリバイアサンにぶっ飛ばされた時に頭は打ったけど。」


「やっぱり、いくら組織再生スキルでもおかしくなった頭の再生は・・・。」


 ヴェルスが真顔でゼントを見つめていた。


「いや、頭を打ったからっておかしくはなっていないから!報連相って言うのは、会社という組織で部下が上司に報告、連絡、相談をすることだって、親父が行ってたのを思い出していっただけだよ!」


「なんだ、そうだったんですね。効くかどうかわかりませんが、エクストラヒールを試してみようかと思っていました。」


 真顔で言うヴェルスにゼントは少し引いていた。


「バカ言ってないで、そろそろウイリアム達が来る頃だから宿に戻るぞい。」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ゼント達が宿に戻り暫らくすると、ウイリアムとリーナが貴族の服装ではなく、冒険者風の出で立ちでやってきた。


「ゼントさーん、お久しぶりです!会いたかったでーす!」


 部屋のドアを開けるなり、リーナがゼントに抱き着いてきた。


「久しぶりって、昨日別れたばかりじゃないですか?」


「一日以上も会ってないじゃないですあか!」


  いや、だから一日しか・・・。ゼントは心に思ったが、これ以上突っ込むのはやめにした。


「ごほん!まあ、お互い色々と話があるとはずなのじゃれ合うのは後にしよう。」


 ウイリアムは咳払いをして椅子に腰かけた。


 宿のテーブルを囲んで置かれた椅子に全員腰掛けるとウイリアムは魔道具らしきものを机の中央において作動させた。


「これは?」


 ゼントの質問に待ってましたとばかりにウイリアムが答えた。


「これは、ある一定の空間の中の音を外部に漏らさないようにする最新式の魔道具なんだ。」


「こいつは、俺がカンバーイ国の遺跡で発掘したものからヒントを得て自力で造ったんだぜ!」


 ウイリアムは満面のどや顔である。


「フーンそうなんだ。」


 ゼントのつれない反応にウイリアムは少し落胆しながらも少し畏まって話始めた。


「まずは、君達にお礼を言わなければならない。」


「君達が護衛をしてくれたお蔭でアーシオ遺跡で発掘されたゴーレムを無事王城まで届けることが出来た。」


「やっぱり、本物はウイリアムさんの亜空間倉庫にしまってあったんですね。」


「ああ、その通りだ。気づいていたんだな。」


「まあ、あの車の上に積んであったのはただの石のゴーレムでしたからね。」


「そのとおり、あれは囮で俺の亜空間にしまってあった奴を昨日王家の研究者に引き渡した。まあ、その研究者というのはカール教授の部下だけどな。」


 それからウイリアムはオナシティから王都までの道中で起きた事件をゴード王に説明し、ゼントが異世界転移者であることや、ミュウがクーマオ族であること、ヴェルスが元女神であることもゴード王に伝えたとのことだった。


 ゼントは自分たちの異質な力によって行動が制限されるのではないかと恐れていたが、ゴード王の対応は意表を突く内容だった。


 『銀翼の翼』の力は異質で強大なものであるが、ゴード国に対して害となるものではないと考える。よって、ゴード国内での行動を制限することはしない。通常通りゴード国民として暮らしてほしいという内容であった。ただし、ゴード国に害するよう事がなればゴード国として容認することはしないという条件付きであった。


「ずいぶん俺達にとって都合の良い待遇ですね。」


 ゼントは余りにも自分たちに都合が良いので何かあるのではないかと勘ぐっていた。


「まあ、そう疑うなって。王弟殿下であるカール教授が君達の行動をゴード王に説明してくれたおかげだな。それとエルフの剣聖のゼンさんが君達に付き添っているのも大きいな。それと、これが最も大きな理由だが、君達の行動を制限しようにも我々の力ではどうにもならんだろう。」

 

「まあ、そう言う考え方もありますね。それじゃあ俺達もウイリアムさんに相談したいことがあるので昨日からの一連の出来事を報告します。」


 ゼントとゼンはデーモンオークやリバイアサン、ケイラ商会の事をウイリアムに説明した。


「す、凄い密度の高い一日だったんだな・・・・。」


 ゼント達の話を聞いたウイリアムは左手でこめかみを押さえていた。

 

「デーモンオークの事はこちらでも報告を受けていたが、リバイアサンまでとは・・・本当に君達の行動はこちらの想像の斜め上を行ってくれるな・・・・。」

「それとケイラ商会は王都最大の商会で王室御用達なんだ、魔道車の量産にも関わる予定の所に既にコンタクトしているとはな。」


 まあ、俺達のせいじゃないんだけどね。ゼントはそう思いながら話を続けた。


「それともう一つ相談したいことがあるんですが。」


「まだあるのか?」


 ウイリアムは物凄く嫌そうに顔をしかめていた。


「ええ、デーモンオークが現れた方法が分かりました。」


「なに、本当か!」


 ウイリアムは目を見開いてゼントの方を見た。


 ゼントは先程コネクトと確認した結果をウイリアムに報告した。


「つまり転移装置が王都に427個あり、それを同時に壊さなければならないということか・・・・?」


 ウイリアムはため息を吐き再びしかめっ面になっていた。


『主、ウイリムサン、提案ガアリマス。』


 コネクトが急に会話に加わて来た。オープンモードにしていたのでコネクトの会話は全員に聞こえているのだ。


「コネクト何だい、提案て?」

 

『アノ転移装置ハ、鉄ノ看板ノ中ニ銅ノ部品ヲ組ミ込ム構造ニナッテオリ、近クニアル街灯用ノ魔石ヲエネルギー源トシテ作動スル仕組ニナッテイマス。』


「うん、それで。」


『看板ノ中、モシクハ直グ近クニ異質ナ銅ノ部品ガアレバ正常ニ機能デキナイモノトカンガエラレマス。モシクハ、エネルギー源ヲ銅板デ遮断スレバ作動スラデキマセン。』


「そうか、壊すのではなく、作動出来ない状態にしておけばよいって事か!」


 ゼントはコネクトの名案に思わず大声を上げてしまった。

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