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落ちて異世界

初めて書いた初心者ですので、温かい目で見てやってください。

誤字報告ありがとうございます。


「うぉ――――――――――――――――――。」

 現在、俺こと田南 全斗(タナミ ゼント)は落下中である。

 空を見ると濃紺なのでかなりの高度であることがわかる。


 パラシュートなどはつけていない。上下とも学生服だ。

 ついさっきまで高校の教室にいたのだから・・・当然といえば当然である。


 休み時間に友達の勇人(ユウト)と話していると、勇人の周りに魔法陣の様なものが光輝いたと思うとその中に落ちていった。


 俺は反射的に勇人の手を掴んでしまい一緒に引き込まれてしまったのだ。


 その結果がこれ。

 

 前方、いや、下方には鳥の群れが・・・


「ぐぁ、ぐぁ、が、がががががががが・・・。」

 


「鳥さん、ごめんなさーい。」


 一瞬で鳥の群れを突っ切ってしまった。


 下には緑の草原と延々と続く森が見える・・・。

 だんだん地面が近くなっていく・・・。


 このまま落ちれば・・・当然ミンチ状態になり人生は終わりである・・・。


 こんな時、人はどうする?

 神頼み!もうそれしか残っていない。


 俺はやけくそになり叫び始めた。


「神様――!」

「仏様――!」

「キリスト様――!」

「ガネーシャ様――!」


「だめだ―― 地面は目前!」


「布袋様――!」

「大黒様――!」

「月読様――!」


「め、め、女神様―――――――――――!!」


「は~い!」


「え?」


 次の瞬間俺は見知らぬ場所に立っていた。


 大理石でできた床にギリシャ建築を思わせるような柱。


 柱の向こうには雲が真横に流れている。


 目の前には神々しい雰囲気の女性が大理石の椅子に腰を下ろしていた。。


 とても整った顔立ちでシルバーに近い美しい金髪をしており、古代ギリシャ風の白いドレスに上半身には銀色の鎧のようなものを着けていた。


 まるで作り物の様な外観である。


 ここは天国か・・・?あのまま俺は死んだのか?


 痛みを感じなかったのは幸いだった。一瞬だったのだろう。


「違うわ、まだ死んでないわよ。貴方が私のことを呼んだので助けてあげたの。」


 えっ?心を読んでる?


「えっと~、貴方様は一体・・・?」


「私はウルス、この世界の女神の一人よ。貴方がこの世界に突然出現したのに気が付いて、様子を見ていたの。」


見ていたのなら、もう少し早く助けてくれれば・・・。


「そんなこと言うなら、もう一度落ちてみる?」


「いえ、滅相もありません。」


 完全に心を読まれている。


「ところで、助けていただいたついでに元の世界に戻していただけないでしょうか?」


「残念ながらそれは無理ね。」


「なんで無理なんですか?」


「貴方は位相の異なる平行世界の一つからこの世界に召喚された。正確には召喚された者に『くっついて』きてしまったのだけれど。平行世界は無数にあるから貴方の居た世界を特定することは砂浜の中から一つの砂粒を特定するようなもので、絶対に無理ね。」


「ならどうすれば?」


「この世界に住んでもらうしかないわね。貴方が落ちていた場所に戻してあげるから、そこから人間の街でも行きなさい。」


「えっと、この世界ってどんな世界なんですか? それと召喚された者って誰ですか?」


「この世界は、貴方の記憶から理解できるように言えば、剣と魔法、魔物や魔族などがいる世界よ。」

「召喚されたのは貴方の友達ね。勇人君っていったけ?彼がオーマ国の魔導士によって召喚されたのよ。貴方はそれに巻き込まれたの。彼は無事にオーマ国に着いて、勇者として教育されると思うわ。」


「この世界の人は、他の世界の人の意思を無視して召喚してしまうんですか!」


「そういうこともあるけど、今回は無視していないわ、彼には元々異世界に行きたいという願望があったから魔導士が召喚することができたの。あなたみたいに他人の召喚に巻き込まれて、召喚予定地とは別の場所に転移してしまう人って結構いるのよね。」


勇人の奴、今度会ったらただではおかないからな。


「それにしても、転移場所が空の上で運がよかったわね。」


「どういう意味ですか?」


 異世界召喚に巻き込まれて運がいいなんてことはないだろう。


「例えば30mぐらいの高さの所に転移していたら、私が気が付かないうちに転落死、水の中だったら溺死、地面の中だったら即死ね。まあ、あなた程高空に転移してきた人は初めてだけどね。」


 あ、そういうことね・・・。


「それじゃあそろそろ地上に降ろしてもいいかな?」


「ま、待ってください! 魔物や魔族のいる世界にいきなり放り出されたら死ねと言っているようなものじゃあないですか!」


「それは多分・・・大丈夫よ。位相の異なる異世界から呼び寄せたものは、この世界に転移した時にその空間にある魔素と融合して特殊なスキルを持つことができるの。元の世界では普通の人でも相当な力を持てるわ。まあ、それが目的で異世界召喚をしている奴らがいて困ってるんだけど・・・。」


 女神様は物凄く鬱陶しそうに溜息をついていた。


「ところで、俺のはどんなスキルなんですか?」


「えっと・・・ちょっと確認するから待っててね・・・あなたの今のスキルは・・・メインのスキルは魔剣士、鑑定、亜空間倉庫、結構便利なスキルもってるわね。訓練次第でスキルは増やせるのでせいぜい精進してね」


「どうやって使うんですか?」


「それは、このバックパックに入っている石板を読みなさい。初心者用異世界スターターキットよ。いまなら護身用にこの木刀もつけてあげる。」


 何かTV通販みたいな・・・。


「食料と水は10日分くらい貴方の亜空間倉庫に入れてあげるから、無くなる前に自分で調達できるようになりなさい。それと、ポーション(回復薬)もバックに入れておくから、死にそうなったら使いなさい!」


「それじゃあ、バーイ!」


「あっ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そこは、さっき俺が落ちていた先、おそらく落下地点なのだと思う。緑の草で覆われた丘の上に俺は木刀を片手にバックパックを背負って立っていた。

 

 丘は鬱蒼とした森で囲まれており、森は地平の彼方まで続いているように見えた。昔テレビで見たドイツの黒い森に似ている。


 空を見上げると日本では見たことが無い抜けるような青い空に白い雲が浮かんでいた。いびつな形をした月が、ここが地球でないことを物語っている。


「さて、ぼちぼちやりますか?」


 俺は独り言を言いながら貰ったバックパックを開けてみた。


 バックの中には女神様が言っていた石板と瓶に入った薬のようなものが入っていた。


 この瓶の薬が、いわゆるポーションというやつか?


 石板を見てたが、魔法陣の様な模様が刻んであるだけで読める文字は書かれていない。

 どうやって見るのか裏返したり軽くたたいたりしていながら考え込んでいると、魔法陣の真ん中の紋様に触れた時それは発動した。


 魔法陣の紋様が宙に浮かびあがったと思うと俺の周りを囲んだ。

 魔法陣に囲まれると共に頭の中に様々な知識が入り込んで来た。


 この世界の名は”エルアース”

 人間の住む七つの国、エルフの住む国、魔族の住む国がある。

 今いる場所は、人間の国ゴードとエルフの国マトーの間にある”ソーリの森”と呼ばれ る場所で人は住んでいない・・・いるのは野生動物と魔物だけ・・・。


 勇人の居るオーマ国はゴード国を越さないと行けない。

 当分出会うことはないな・・・。

 どうやって人間のいる国に行こうか?位置的にはこの森を突っ切るしかない。


 俺のスキルである魔剣士とは、オリハルコンという金属でできた剣を使う剣士のことだ。オリハルコンに魔力を込めて使うことにより岩をも砕くことができるというのだ。


 気になるのは女神様からもらったのはどう見ても木刀だ・・・。


 これでどうしろと???と考えていると、石板が答えてくれた。オリハルコンが無くても魔剣が使えるスキルを持つ人がいるというのだ。俺のスキルがそれであるとも・・・・『訓練しだいで』という条件付きだが。


 魔剣士同士の戦闘で相手の剣を折った者は、相手の全ての力を自分のオリハルコンの剣に吸い取ることができるということ・・・これって強い奴がやたらに強くなるということか?とても不条理なスキルだな。

 俺の木刀は折られたらどうなるんだろう?

 

 それは他の魔剣士と”会えたら”の話なので今は深く考えないでおこう。

 まずは魔剣を使えるようにならないと生きて魔剣士と会うことなど無理そうだし。


 亜空間倉庫の使い方は簡単だった。亜空間と心で呟くだけで目の前に空間の割れ目が出てきた。


 亜空間の中は、壁や床はグレーで何の素材でできているのか見当もつかないが、大きさ的には家庭の大きな収納庫のような感じで棚まである。


 女神様が言っていた食料は奥の棚にあり、水は床の大きな瓶に入っていた。食料は干し肉と干した野菜と果物である。棚には食料の他に服と下着がいくつか置いてあった。


 あの女神様にはいきなり捨てられたような感じだったけど、思ったより良い女神様かもしれないない。


 亜空間の中は時間が停止するため、物が腐らないで保存も可能である。

 それなら生の野菜や果物でもよいのになと思ったが、贅沢なことは言ってられない。


 このまま住めるんじゃないかと思ったけど、スキルを使っている間は中から入口を閉じることができないみたいだ。閉じたら自分の時間が停止してしまい、永遠に停止した時間の中で過ごさなければならない。入口は開放状態にしなければならないため、ドアのない家に済むようなものなので危険が伴う。


 ドアでも付けられないか?


 しばらく思案した後、地面に座ってから頭上に亜空間を開いて入口を地面につけてみる。

これなら地面からしか侵入できないのでかなり安全である。普通に野宿するよりよほど良い。


 問題は十日以内に助けてくれる人と出会えるか、自分で食料を調達できるようにならないといけないということだ。


 まずは、魔剣の練習だ。


 魔剣が魔力を得て活性化すると輝きだすらしい・・・。

 木刀を構えてぐっと握りしめる・・・何も起きない。

 木刀をジッと見つめながら握りしめる・・・・何も起きない。

 目をつむって祈りながら木刀を握りしめる・・・・・何も起きない。

 ジッと手を見る・・・。


 こんなことを小一時間程やっていたが何かが起きそうな気配はなかった・・・・・・。

 傍から見たら変な人である。


「ガサッ」


「なんだ!」


 後ろを振り向くと10m程離れたところに茶色い毛の塊。

 鑑定スキルで確認すると

{ホーンラット}

 *ネズミ科

 *体力:70

 *魔力:5 

 *スキル:突進(鋭い角と牙で獲物を攻撃する。)

 *食用可

 

 ウサギじゃないのか?

 

 よく見るとカピバラに角が生えたような姿で、鋭い牙を持っていて中型犬ぐらいの大きさがある。


 やばい、俺を狙っているのか?

 

 そう考えた瞬間に奴は突進してきた!


 木刀を構える間がなかったので、横に転がるように逃げた。


 間一髪角がワイシャツの一部を切り裂いただけで助かった。


 直ぐに態勢を立て直して木刀構えたが、奴もこちらに向きを変えて間髪を入れずに突進してきた。


 バキッ!


 木刀が奴のコメカミを直撃した。


 奴はどさっと草むらに倒れてそのまま動かなくなった。


 やったのか?念のため木刀でもうひと殴りして止めを刺しておいた。


 ガサッ ガサッ


 やばい、まだいた!左右に一匹ずつホーンラットがいる。


 奴らは同時に突進してきた。


 片方の突進は一撃を食らわせてかろうじて防いだがもう一匹は・・・。


 脇腹に激痛が走る。


 もう一匹の角が左の脇腹に突き刺さり切り裂いていったのだ。


 奴らは向きを変えて再びと突進してきた。


 一か八かだ!


 木刀を居合抜きの様に構えて、先に突進してきたホーンラットに水平に切りつけた。こいつは何とか仕留めた!このまま回転してもう一匹!


 だめだ、やっぱり間に合わない!やられる!


 そう思った瞬間、剣が輝き、剣から光が飛び出しホーンラットを切り裂いた!


 え?・・・やったのか?


 3匹のホーンラットを見ながら茫然としていた。


「痛っ!」


 脇腹を切られているのを思い出した。バックから回復薬を出して、本当に効くのか疑いながら一口飲んだ。


「まずっ!」


 とんでもない味だが傷口がみるみるふさがっていく。


 こんな薬があるから、科学文明なんて発展しないのか?


 このホーンラットどうする?


 確か”食用可”って鑑定が出ていたな。

 ネズミか・・・とりあえず今は止めよう。

 俺は3匹のホーンラットを亜空間倉庫にしまい込んだ。


 日が傾き始めたので、そろそろ今夜寝る場所を決めなければ。


 ここは丘の上の一番目立つ場所、こんな場所で練習をしていたからホーンラットが集まってきたのか・・・。


 丘から少し降りたところに大きな岩があったので、そこで寝ることにした。


 岩の前に腰を下ろし、水平に亜空間を展開した後、亜空間の入口を岩肌につけた。


 外敵から身を守れる場所に入ったのでほっとしたらお腹が空いてきた。


 女神様からもらったパンと干し肉、ドライフルーツを食べて亜空間の床にごろりと転がって眠りについた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 何か凄く嫌な夢を見たと思って目が覚めたら、目の前にグレーの部屋が広がっていた。


 そうか、これは夢じゃないんだ・・・。


 昨日は無我夢中で元の世界の事を考えていなかったが、父さんや母さん、兄貴はどうしているだろうか?突然いなくなったので心配しているんだろうな・・・?


 いくら考えてもどうしようもないので、あきらめて起き上がり少量の水で顔を洗い、昨晩と同じ食事を摂った。


 歯磨きらしきものが置いてあったのでそれで歯を磨き、昨日のホーンラットを警戒しながら亜空間から顔をだした。


「よし、何もいないな。」

 

 亜空間から出て木刀を持って伸びをした。

 今日も魔剣の練習だ!

 

 昨日の戦いで体が慣れたのか、今日は一発で魔剣を輝かせることができた。その後ひたすら『光に刃』を飛ばす練習を繰り返していた。


 夕方まで練習をして何とか『光の刃』を飛ばすことができるようになった。まだ2mぐらいしか飛ばすことはできないが、俺にとっては大きな一歩だった。


 練習の間にホーンラットを2匹ゲットすることができた。


 次の日の朝、朝食を済ませてから森の前に立つ。


 巨大な杉に似た木々の間に灌木やら雑草が鬱蒼と茂っており、とても踏み込めそうにない。道はないのか?


 近くをうろうろしてみたが、それらしいものは見当たらない。


 丘に登って探してみると、木々の間に隙間のような線が続いている所が見える。


 近づいてみると”元”道だったようだ。かなり雑草が生えており、そのまま歩くのはちとつらい状況。


 鎌か鉈でもあればよいのだが・・・・ジッと木刀を見る。


「うりゃ!」


 『光の刃』を道に向かって撃ってみると、10mぐらい雑草がなぎ倒されて凄く歩きやすくなった。


 よし、こうやって前進しよう。


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