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第六十話

 「やったぁ~!明日から休暇だぁ~♪」


年末仕事納めの夜、コンビニでワインやお菓子を買い込んで、今から私の部屋で美華と忘年会だ。

アパートまでの道を歩きながら、女子トークで盛り上がる。


「今日、天鼠部長は?」

「明日エルザさん達が帰国するから、今日は洋館に泊まるってさ。朝になったら、空港に送るみたいよ。」

「新婚なのに、寂しいね。」

「明日からは、ずっと一緒よ。何せハネムーンだしね♪」

「ふふっ♪そうだったね!お土産話を楽しみにしてるよ。」

「どの話がいいかなぁ。やっぱり、夜の話?」

「夜の?」

「そそ!紫も少しは下の話に慣れた方がいいんじゃない?若様との初夜に備えてさ♪」

「わわっ!そんな話はいいよっ!」


急いで、美華の口を塞ごうとするけど、予想していた美華に、華麗にかわされる。


「ホント、紫は可愛いよね~♪裸で寝ていただけで、手付けと勘違いするし!」

「もう、その話は止めてよ……」


もう……恥ずかしくて、穴に入りたい……話題を変えなきゃ……

そ、そうだ!


「それにしても美華達の結婚式、色々な人が来てたね。」

「うん。イエティなんて、びっくりしたよ。何でも魔女狩りに追われていた時に、お世話になったらしいよ。」

「みんな、どれだけ長生きなんだか……ホント、人間がちっぽけに感じるわ……」


改めて、もののけ達の寿命に感心していると、私のアパート手前で美華が足を止めた。


「あ……私、紫の部屋に入れないわ……」

「へっ?何で?」

「だって、若様の結界が張られているんだもん。多分、他のもののけ達が近付け無いようにかな。」

「そうなんだ……」


瞬……居なくなった後も、守ってくれていたんだ……


「ったく、愛されてるね~♪」


美華がからかうように、肘で突いてくる。


とりあえず、笑って誤魔化しておくか……


「あはは……そ、そうみたい……」

「だったら、私のマンションに来る?慧も居ないし、遠慮は要らないよ!」

「じゃぁ、そうする♪」


ザザッ!


再び駅へ向かおうと踵を返したところで、いきなり複数の男の人達に囲まれた。


えっ?な、何?


「お前達、何者だ!」


美華が鋭い目をして、私を庇うように手を広げる。すると、男の一人が一歩前に出て、小声で話し掛けてきた。


「ここで面倒を起こしたくない。それに、お前には関係無い話だ。」

「……だから、何者よ。」


美華が再度聞くけど、それには答える気が無いらしい。


「そこの女に用がある。付いてきて貰おう。」


男達は、みんな私に目を向けている。


えっ?わ、私?もう、狙われないんじゃぁ……


戸惑う私の代わりに、美華が答える。


「彼女一人で行かせる訳には行かない。私も行くから。」

「お前は不要だ。」

「強引に連れて行くなら、抵抗するよ。ここで面倒を起こしたくないんでしょ?」

「……分かった。仕方無い。」


男達は諦めたように息を吐き出して、ぞろぞろと歩き始め、四面を囲まれている私達もそれに従って、付いていく。


この人達は、一体何なの……?何処へ連れて行かれるの……?


「美華……」


不安が態度に出たのか、美華の袖を震える手で掴む。


「大丈夫……何があっても、私から離れないでね。」

「う、うん……」

「こいつらの正体と目的は分からないけど、高倉の血が目的なら、紫を殺す事はしない筈よ。」

「でも、美華は……」

「新婚旅行に行けなくなったら、その時は慰めてよね♪」


私の不安を消すように、美華が小声でおどけてくる。


「間に合うように、帰ろうね。天鼠部長も楽しみにしてるよ♪」


美華に合わせて、ぎこちないながらも、笑顔で答えた。





 車に乗せられて着いたのは、以前にみんなで来た温泉宿近くの山の中だった。


ここって、愛好稲荷神社に近いんじゃ……


暗いからか周りはよく見えないけど、神社に近いんなら美華の力でもののけの世界に逃げれるかも……妖孤なら保護してくれる筈……


だけどその期待は、あっという間に砕かれた。


「何故、もう一人連れて来たの?周りの人間の記憶を消すのが面倒じゃない。」


暗闇から女性の声が聞こえてきた。ゆっくりと歩いてくるその姿が月明かりにぼやっと浮かび上がってくると、見覚えのある顔に息を飲んだ。


「正妻……さん……」

「えっ?紫、顔を知ってるの?」

「うん……瞬のお父さんの正妻さんに間違い無い……その後ろにいるのは、多分瞬の前の婚約者さん……」

「成る程……これはマズイかも……」


美華の呟きで、危険な状態だと悟る。


私を殺して、もう一度婚約者になるつもりなんだ……


正妻さんは、私の目の前まで来ると足を止めた。そして、見下すように冷たい目を向けてくる。


「人間ごときが……どんな血筋か知らないけど、アンタが邪魔なのよ。」


この人……何の躊躇いも無く、人を殺す目をしてる……確実に殺される……


「わ、私が決めた訳では……」


恐怖で声が震える……


「どうやって取り入ったか分からないけど、私の姪の方が当主の嫁に相応しいのよ。」

「そ、そんなの……」

「恨むならあの若造を恨みなさい。私の子供を殺しておいて、のうのうと生きてるあの若造を。私の家の血を、当主の座から引き摺り下ろしたあの若造を。」


それって、瞬の事……?瞬は、お兄さんが自分を庇って亡くなった事に、まだ苦しめられている……それなのに、のうのうと生きてるなんて言い方を……


「叔母様、さっさと殺してしまいましょう。そうすれば私達家族は永遠に、妖孤族の頂点に君臨出来ます。」


元婚約者さんが感情の無い声で、正妻さんに話し掛ける。


この人達、権力を自分達の物にする事しか、考えていない……何て人達なの……


「そうね。私達の着物が返り血で汚れてはいけないわ。帰りましょうか。」


正妻さんが元婚約者さんを促して、踵を返す。


「お前達、私達が居なくなったら、さっさとやっておしまい。」

「はっ!」


そう男達に言い残して、正妻さんと元婚約者さんは、去って行った。


「へへ。悪く思うなよ。」


男達はジリジリと私達に、にじり寄ってくる。


「今度は失敗出来ねぇぞ。何せ前は兄貴の方を殺してしまったから、報酬が出て無いしな。」

「大丈夫だろ。今回は二人とも殺して構わないからな。」


この人達……瞬のお兄さんを殺したの?まさか幼い瞬の命を狙ったのは、正妻さん……?


事実を知ったところで、どうする事も出来ない。


「死ねっ!」


男達の一人が、腕を振りかぶった!




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