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第六話

 「それで、今宵はどうするのだ?」


新聞紙でできた偽札をぐしゃぐしゃ!と丸めていると、瞬が真面目な顔付きで尋ねてきた。


「何の事?」

「一宿一飯の対価だ。昨夜は添い寝を希望しておっただろ?」

「はぁ?!」


添い寝なんて、希望してね~しっ!


「今すぐ我と寝たいなどと、可愛い事を言っておったではないか。」

「必要なのは睡眠であって、瞬との添い寝では無いっ!」

「遠慮しなくても良いぞ。紫は我の命の恩人であるからな。」

「怪我が治ったら追い出すから、恩を感じる必要無いし!それに、毎日エキノコックス対策する程、暇じゃないもん!」

「そんな事を気にしておったのか?我は神使であるぞ。寄生虫なんぞ持っておる訳無かろう。」

「そうなの?」

「あれに感染しておるのは、野性の狐だけだ。」


な~んだ♪一安心じゃん!


「という訳で決定だな♪」

「何が?」


端麗な顔に悪戯な笑みを浮かべた瞬が、フェロモン全開でにじり寄ってくる。


い、嫌な予感っ!


咄嗟に後退りしたものの、ベッド際まで追い詰められてしまう。


「二晩我と寝所を供にするのは、紫が初めてであるぞ。光栄だろ?」


ま、マジで?!どれだけの女たらしよっ!二次元イケメンでも、男として最低のチャラ男じゃん!


「まったく光栄に思えないから!瞬みたいな不誠実な人なんて、添い寝だけでもお断りよ!」

「何を言っておる?我ほど誠実な者はおらぬぞ。」

「一夜限りで恋人を替える人の何処が誠実なのよっ!」

「心配せずとも、皆にはちゃんと一晩限りと伝えてから営んでおる。」

「そうなの?」

「それでもおなごが寄って来るのだから、据え膳は頂かなければ失礼であろう。」


サラッとモテ自慢したな……


「ってか、瞬のいいところって顔だけなのに、そこまで女の子が寄って来るものなの?」

「紫……お主、意外と毒を吐くな……」

「瞬よりはマシだと思うけど♪」


瞬は私に迫ってくるのを止め、バツが悪そうに頭を掻いている。


「我に寄ってくるおなごは皆、我の地位狙いだ。」

「神社の跡継ぎか何かなの?」

「うん……まぁ、近いかな……一族の跡取り故、子を成せば将来安泰であろう?」

「成る程ね……」

「少し前までは別の種族である我の幼馴染みが皆に狙われておったが、数年前に婚姻してな。それで、我に狙いを変えたのであろう。それ故、毎日おなご遊びをしておったら、人間界の仕事に従事しろと親父に命令されたのだ。」

「要は、臭いものに蓋をされた感じね……」


話が飛躍し過ぎて理解が追い付かないけど、遊び人だという事だけは明白だな……更に勘当されてるし……


「まっ!後は我の容姿であろうな♪紫も我に抱かれたくなったら、いつでも言えよ!」

「絶対にならね~よ……」


イケメンは否定しないけど、自信過剰過ぎだろ……


思わずジト目を瞬に向ける。すると、何を勘違いしたのか、瞬が再びにじり寄ってくる。


「そんな熱い視線を送るとは、やはり期待しておるのか?」

「盛大な勘違いは止めて欲しいんだけど……」


瞬から逃れるように後ずさりするものの、瞬は自信満々な笑みを浮かべて距離を詰めてくる。


「紫、そう照れるでない♪」

「照れて無いっ!」

「それにしては、顔が赤いではないか。」

「赤くなって無いっ!顔が近いってば!」

「風邪をひいておっても良くないからな。熱を測るだけだ。」

「必要ね~よ!絶対、わざとしてるでしょっ!」





 翌朝、ふわふわの感触に目が醒めると、子狐ちゃんを抱き締めていた。


「えっ?な、何で?!」


昨夜は、ベッドに上がろうとする瞬を何とか止めて、一人で寝た筈……

こいつ、夜中に潜り込んできたな……


とはいえ、可愛らしい子狐ちゃんの姿だと、怒る気も失せてくる。

すやすや眠る子狐ちゃんの身体に手を伸ばして、そっと撫でてみた。


「ふふ!毛並みがもふもふで気持ちいい♪癒されるな~!」


そういえば、人間の姿になるのは夜だけなのかなぁ……


「って、まったりする時間なんて無いじゃん!会社へ行かないとっ!」


急いで出勤の身支度を整えて、弁当を作り始める。


今日はイベントの打ち合わせがあるから、帰りは遅くなるかもな……


いつもより多めに牛乳とソーセージをゲージの中に用意すると、起きてきた子狐ちゃんが嬉しそうに尻尾をフリフリしながら私の足にじゃれついてくる。


「ふふ!お弁当作っているから、危ないよ♪」


もうっ!可愛いすぎなんだけどっ♪


思わず抱き上げてもふもふの毛並みを堪能すると、子狐ちゃんはペロッと顔を舐めてくる。


「くすぐったいよ~♪」


って、こんなにまったりしてる場合じゃ無い!!


「じゃぁ、仕事へ行ってくるから、いい子で待っててね♪」


急いでサンドイッチをお弁当箱に詰め、子狐ちゃんに手を振ってアパートを飛び出した。



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