表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/85

第三十八話

 翌日は美華の都合も付き、仕事が終わって一緒にビュヴールへ向かう。その道中、勾玉の話は漏らさないようにして、鬼塚部長の最期を話した。


「そんな事があったんだ……紫も大変だったね。」

「まぁね。」

「でも、何故鬼神族が人間界に居たのか、謎が解けたわ。」

「どういう意味?」

「昔ね、千年戦争ってのがあったらしくて、その時に鬼神族は一つの島に封印されたんだって。」

「へぇ~。」


鬼ヶ島……?だったら笑えるな♪


「それで、今は封印を解かれたんだけど、まだ人間界に出入りする事は禁止されているんだよね。」

「もしかして鬼塚部長は、島に封印される前に紅姫が封印したって事?」

「多分ね。」


紅姫は、それも見越して鬼塚部長を封印したのかな……


またしても難解な人間離れした話に耳を傾けていると、一人の女の子が私達の前を遮ってきた。


「ちょっとそこのあなた!話があるんだけど!」


女の子は明らかにお怒りの様子で、私を指差している。


「わ、私?」


何かしたっけ……でも、顔に見覚えが無いし……


美華が警戒して、一歩前に出る。


「あなたは誰?」

「そんな事どうでもいいでしょ!私はそこの高飛車なブスに用があるのよ!」


はぁ?高飛車なブスって、私の事?

そ、そりゃ美華に比べたら劣るし、単なる引き立て役にしかならないけど、初対面で言われる筋合いは無いもん!


言い返そうとすると、私よりも前に美華が攻撃を始めた。


「お前程度の顔に言われたく無いね!自分の顔を鏡で見てから言えよ、ブス!言いがかりを付けるな!」


み、美華……口が悪くなってるよ……


美華のような美人に言われては反論が出来ないのか、女の子は余計に憤慨してきた。


「何よ!この女の正体も知らない癖に、口を出さないでよ!」

「正体ってどういう意味よ!」


えっ?もしかして、高倉の血筋って事?こ、こんなところで大きな声に出されたら、ヤバいじゃん!


急いで女の子の口を塞ごうとするけど、それよりも前に女の子が声を張り上げてしまった。


「この女はね!イケメンの彼氏が居ながら、瞬くんにも色目を使う奴なんだよ!」


へっ……?


ピタッと、私と美華が固まる。


「どういう事?」


美華が小声で尋ねてくる。


「実は昨日、颯さんがビュヴールに来てね。」

「マジで?総大将様が?」

「うん。その時、一緒に飲んだんだ。」

「成る程ね。納得だわ……」


美華とコソコソ話していると、女の子は怒りをあらわにして、私に掴みかかってきた。


「もうあの店に、二度と行かないでよ!瞬くんに近付かないで!」


な、殴られるっ!


咄嗟に身構えると、誰かが女の子の腕を掴んで止めてきた。


「いけませんね。このような往来で。」


聞き覚えのある低音ボイスに目を向けると、天鼠部長が女の子の腕を掴んでいた。

天鼠部長は紳士的で上品な笑みを浮かべるものの、有無も言わせない雰囲気を出している。


「こんな可愛らしいお嬢様が、はしたない真似は止した方がいいですよ。」


天鼠部長に微笑まれた女の子は顔をポッと赤らめ、口調までも変えてきた。


「そ、そんな……お嬢様なんて……」

「とても素敵なお嬢様が争う所なんて見たくはありませんので、ここは引いて頂けませんか?」

「は、はい……」


あ……この女の子も私と一緒で、イケメンに弱いタイプだな……


天鼠部長に小さく手を振って小走りに走り去る女の子の背中を、哀れみの目で見送った。


「日向さん、大丈夫ですか?」


天鼠部長に話し掛けられて、ふと我に返る。


「助けて頂いて、ありがとうございます。」


ペコッと頭を下げると、天鼠部長は上品な笑みをより深める。


「いえ、大事な人を守るのは、当然です。また今度、ランチをご一緒しましょう。」


そして、華麗なターンを決めるように踵を返して、その場を去って行った。


「ちょっと!紫、あの人ハーフ系イケメンは誰なの?大事な人って、どういう事よ!」


美華が私の腕を掴んで、揺すってくる。


「いや、多分、大事な社員って事だと……」

「あんな人、紫の会社に居た?」

「鬼塚部長の後任で最近入って来た人なんだよね。」

「本当にそれだけ?ランチに誘われてたじゃん!」


言い訳をする私に、美華は疑惑の目を向けてくる。


「ランチは同じ部署の人達全員、一人一人と行くんだよ。」

「信じがたいけど……また紫のイケメン惚れ病が出たとか……」


美華のジト目が、突き刺さる……過去の恋愛事情を知られているだけに、疑惑が晴れない……


「本当に何でも無いから……赴任してまだ数日だし、まともに話した事も無いからさ。」

「紫の周りがいつの間にかイケメンだらけになっちゃって、そのうち本当に刺されそうだね。」

「うっ!嫌な事を言わないでよ……」


イケメンだらけと言っても、天鼠部長以外はもののけだけどね……


何だか腑に落ちないけど、私の周りには色々と危険があるらしい。


「会社の上司の顔は、もののけの種族で見た事が無いから大丈夫だと思うけど、一応気を付けてよ。」

「はい……気を付けます……」


美華の助言に、ただただ頷くだけだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ