第三十話
「ところで……」
颯さんが話題を変えてきた。
「瞬は、いつ勘当が解けるの?」
「いつと言われても、我にも分からぬ。」
「そっか……」
「何か問題でもあったのか?」
「いや……まぁ、瞬がいてくれた時よりも、妖狐族との連携が取りにくくてね。」
「まぁ、強硬派の父上が中心なら、そうであろうな。」
そして、颯さんと瞬はもののけ界の連携について、議論を始めた。私はそれを、ぼ~っとしながら聞いている。
瞬には瞬の生きる道があるって言ったけど、やっぱり瞬の居場所って、もののけ界なんだろうな……話の内容からして、治安維持的なものにも関わってたっぽいし……
だけど、婚約者さんと結婚を決めない限り、勘当が解けないんだよね……
ふと、怖ささえ感じられた婚約者さんの姿が頭に浮かんだ。
瞬にはもっと、瞬の事を考えてくれる人がいいな……でないと、納得出来ない……
って、何で私が納得する必要があるのよっ!
自分で自分に突っ込みを入れていると、いきなり颯さんからニコニコと愛嬌のある笑顔を向けられた。
「ところで、妖狐族の当主に逆らってまで瞬が結婚したい相手は、紫ちゃんなんだよね♪」
「違う、違う!こんなエロ狐なんて冗談じゃぁ無い!」
速攻で否定すると、それを聞いた颯さんは、また爆笑し始める。
「あはは!瞬にエロ狐なんて言う女の子、二人目だね~!」
「えっ?たった二人だけなんですか?」
「うん、僕の奥さんと紫ちゃんだけだね!他のみんなは、瞬の見た目にやられちゃうからさ!ちゃんと瞬の中身を見ているのは、二人だけって事だよ♪」
「あは、あはは……そ、そうですか……」
苦笑いしか出来ない……
最初から人として出会ってたら一目惚れしていたかもしれない人間が、ここに一人……
「だけど、瞬は好きな人がいますから。」
「そうなの?僕は、二人がいいコンビに見えたけどな♪」
颯さんは、私と瞬を見比べた。瞬はいつもどおり私を恋人扱いしてくる。
「紫は素直では無いからな。」
「ふふっ、可愛いツンデレさんなんだね♪また何かあったら、報告に来るね!」
いやいや、ツンデレでは無いし……
颯さんはそれ以上深く聞く事をしないで、帰っていった。
「瞬は、颯さんと仲がいいんだね。お父さんは、敵対心丸出しなのに。」
颯さんが帰った後、何気無く聞いてみた。
「あぁ、我は年が近いので、幼少よりよく一緒に遊んでおったからな。その頃は兄上が跡継ぎになると思っておったので、何も言われずによく関わっておったのだ。」
「そうなんだ。」
「それ故、我は犬神に仇を成すつもりは毛頭無い。それに、颯の妖力には誰も敵わぬしな。」
「颯さんって、そんなに強いの?」
「あぁ、颯が本気になれば、もののけ界は全滅するであろう。」
「す、凄っ!」
「それもあってか、父上は余計に血筋に拘るのであろうな。」
颯さんって虫も殺さないくらい穏やかに見えるのに、そんなに凄いんだ……人は見かけに寄らないとは、こういう事なんだろうな……
「あ~~~っ!」
考え事をしている時、いきなり瞬が声を挙げた。
「び、びっくりした!いきなりどうしたの?」
驚きながら尋ねると、瞬はごそごそと紙袋を取り出した。
「颯が結婚して十年が経った故、祝いを買っておったのを忘れておった!」
「そうなんだ。でも、またすぐに来るんじゃない?」
「それならば良いが、せっかく用意しておったのにな……」
「何を用意したの?」
「何か入り口が隠れておる店に、色々あってな。我は使い方が良く分からぬが、颯の嫁は人間であるから、馴染みがあると思うのだが……」
入り口が隠れている店……嫌な予感……
「紫は使い方が分かるか?」
そう言って瞬は、紙袋から色々な物を出し始めた。
っ!これって、いわゆる大人グッズ?!
「これなどは良いと思うのだが。」
固まる私に見せるよう、一枚の透け透けのランジェリーを広げる瞬。
二次元のように完璧な美しさを誇る顔立ちが、エロ下着をヒラヒラさせてるとか、ミスマッチ過ぎなんだけど……
いや……それよりも嫌な予感が的中……
「瞬……因みに聞くけど、何でこれらをお祝いに選んだのかな?」
「結婚して十年とくれば、相手に飽きてくる頃かと思ってな。何でも人間界では倦怠感を乗り切る物らしいぞ。中々良い物であろう。」
何故か、自身のチョイスを満足気に語り始める二次元イケメン。私はプルプルと、怒りで手が震えてくる。
「……今すぐ……」
「えっ?何と言ったのか?」
「今すぐ棄てて来いっ!」
立ち上がって怒鳴ると、瞬は大きな目を丸くして驚いている。
「な、何でだ?」
「こんなもん、ウチに置いておけるか~っ!」
「いや、これは颯への贈り物で……」
「贈り物としても最低だから!アパートが火事になって焼け出されたら、どうするんだよ!現場検証で恥を掻くのは、私なんだけど!」
「そんな……せっかくバイト代で買ったのに……」
「棄てて来ないなら、今すぐ追い出すからね!」
「わ、分かった……明日、処分する……」
やっぱりどんなに端麗で完璧に整ったな顔でも、エロ狐だわ……




