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第十話

 「はぁ……気疲れした……」


陸さんが帰った後、思わず大きな溜め息を吐き出すと、瞬が肩を組んで端麗な顔を近付けてくる。


「紫、疲れておるなら、我が癒してやるぞ。ベッドの中で朝までな♪」

「ばっ、馬鹿だろっ!ただの添い寝の約束じゃん!」

「我は馬でも鹿でも無く、妖狐であるぞ♪」

「そ~ゆ~事を言ってんじゃ無いのっ!」


はぁ……あの可愛い子狐ちゃんとエロ狐の瞬が同一人物とは、まだ信じられないわ……


「そういえば瞬って、何で夜だけ人間の姿になるの?もののけって、みんなそうなの?」


ふと思い出し、瞬をあしらいながら尋ねてみた。


「いいや。我は親父に追い出される時に、太陽が昇っておる昼は人間の器に入れぬよう、術をかけられたのだ。」

「人間の器?」

「人間界で過ごすこの姿だな。我らもののけは500年は生きる故、いつまでも歳をとらぬのは可笑しいであろう。それ故、人間界では人間と同じように歳をとる器が必要なのだ。」

「ご、ごひゃくねん?!凄っ!」


歳をとらないって事は、500年も若さを保ってんの?ある意味羨ましい……


……ん?それだけ寿命が違うって事は、好きだけど踏み込めないって感じでストーリーに組み込めそう……その辺の葛藤を抱えながら、試練を乗り越えていくとか……


疲れを吹き飛ばすように気合いを入れ、ノートパソコンを開く。


「紫?まだ仕事をするのか?」

「うん。ちょっと思いついた事を書いておきたいの。」

「仕事なんぞ、適当にやればよかろう。どう足掻いても運命なんぞ決まっておる。いつ死ぬかもわからぬ人生、楽しんだものが勝ちであるぞ♪」

「はぁ……流石は勘当される放蕩息子の考え方だわ……」


目線はパソコンの画面に集中させたまま、軽くため息をつく。


「紫は何故そんなにも仕事をするのだ?」

「仕事しないと生きて行けないじゃん。」

「人間界とは、そんなものなのか?」

「当たり前の事でしょ?仕事しなくても食べていける瞬には、わからないとは思うけどね。」

「我も神社以外の仕事はちゃんとやっておったぞ。」

「どんな仕事なの?」


興味も手伝って、瞬に目を向ける。


「我の仕事は、被害の報告が来た害妖を退治する事だな。人間界で悪さをするもののけも退治しておるぞ。」

「へぇ~。そんな事をするんだね。それって毎日なの?」

「年に50日は行っておる♪」


50日って、ドヤ顔で言う事かよ……


「……残りの315日は?」

「まぁ、その辺はおなごとぼちぼちだな。」

「それって、殆ど働いて無いって言うんじゃぁ……」

「何を言う!力をつけた害妖相手なら、下手すれば命を落とす事も有り得るのだぞ!」


完全に開き直ってるな……それより、仕事仕事……


「う~ん……王道の純粋無垢なヒロインちゃんにするか、仕事をバリバリこなすキャリアウーマンにするか……イチから考えるって、結構大変……」


再びパソコンに向かって、集中した。





 カチャカチャ……

アパートの部屋には、パソコンのキーボードを叩く音と、瞬のいじけた呟きだけがBGMになった。瞬は、テーブルの上に顎を乗せて、じっと私の様子を窺っている。


「紫……添い寝はどうするのだ?」


無視無視……集中集中……

そういえばさっき、瞬の仕事は害妖の退治って言ってたよね……


「ずっと待っておるのに、無視されるとは……」


害妖に誘拐されて助けに来て貰うとか、展開的にいけるかも……


「これって一種の動物虐待……」


そうそう、動物虐待……


「って、ちがぁ~うっ!!」

「おっ?やっとこっち向いたな♪」


瞬は私の睨みにも怯む事無く、満足顔だ。


「瞬!黙っててよっ!仕事に集中出来ないじゃん!」

「約束が違うではないか……」


瞬はいじけながらポン!と白い煙に巻かれたかと思うと、子狐ちゃんに変身した。


うわわっ!か、可愛い~♪毛並みがフサフサ♪さ、触りたいっ!もふもふしたいっ!

って、駄目だ!駄目だ!


思わず伸ばした手を引っ込める。

子狐ちゃんはキョトンとしたように首を少し傾けて、じっとこちらを見ている。その仕草が最高に子狐ちゃんの可愛いさを引き立てている。


うっ……このカマチョ作戦、ある意味、卑怯でしょ……

……負けるな、紫……誘惑に負けるな……


何とか目線をパソコンに戻し、瞬を視界に入れないよう努力した。





 チュン、チュン…… 


「……ん……もう朝……?」


気がつけば、窓からは明るい日差しが入り込む時間になっていた。昨夜は仕事をしながら寝たらしく、テーブルにうつ伏せた状態だ。


「あれ……?」


ふと、朝の冷え込みを感じない事に気がついた。肩には毛布が掛けられ、膝には子狐ちゃんが踞って寝ている。


「この毛布、瞬が?」


へぇ~、意外と優しいところがあるじゃん!


私の声に目を覚ましたのか、子狐ちゃんが大きなあくびを一つした。


か、可愛い~♪


思わず抱き上げて、フサフサの毛並みを堪能♪


「毛布、ありがとうね♪足も暖かかったよ!」


子狐ちゃんは嬉しそうに、顔をペロペロ舐めてくる。


「ふふ!くすぐったいってば♪」


給料日まであともう少し!給料貰ったら美華を誘って、何処か美味しいものでも食べに行こうかな♪毛布のお礼に、瞬にも少し高めのソーセージを用意してあげようかな!


そんな事を考えながら暫く子狐ちゃんとじゃれあった後、出勤の準備を始める。


そして、初めての決戦の日を迎えた。




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