これからの事
重苦しい雰囲気の中真っ直ぐと進んで行くアリーたち。フィリーは少し震えているが、アリーは堂々としたものだ。普通であればまだ10代の子どもなら萎縮してしまうものだが。そういえば、アリーは幾つなのだろうか。後で聞いてみるか。
「よく戻って来たな、アルフェイアよ。良い武器はあったか?」
そして、偉そうに踏ん反り返っているのが現聖王か。ふん、確かに殺したあやつに雰囲気が似ておる。偉そうな姿もそっくりだ。
「はっ、聖王陛下のお優しきお心のおかげで、良い武器がありました。ありがとうございます」
堂々とお礼を言うアリーに不思議そうな表情を浮かべる聖王。周りに立つ文官たちもざわつき始める。
ふん、この国が考えそうな事だ。あの倉庫は見るからに使われていない、もう使われる事のない粗悪品ばかり置かれていた。国としては粗悪品を渡してアリーを参加させずに辞退させたかったのだろう。
ただ、この子は言っては悪いがそんなに強くはないだろうし、権力などの力もないだろう。そんな彼女相手にここまで潰そうとするのが不思議で仕方ない。何か、この子にはあるのだろうか。
「……聞いていた話とは違う様だが、まあ良い。別に本人の意思があれば、武器が無くとも参加は可能だからな。それではまずこの1年のうちに成果を見せよ」
聖王の言葉に頭を下げるアリー。1年とはどう言う事だ? ……いかん、聞く事が増えてしまった。
報告を終えたアリーたちはそそくさと退室していく。そのアリーたちの後ろ姿を見てくる中に、見下した視線が多い中、1人だけこの子を心から気にするような視線があった。
見ているのは、鎧姿の金髪の女性。年は20半ばか。彼女ならアリーを助けてくれそうだが……まあ、今はこの場を去るとしよう。
アリーたちは聖王の間を出ると、真っ直ぐと聖宮殿を出てしまう。聖宮殿の門の前で兵士から大きな袋を渡されたアリーたちはそのまま街の中を歩き始める。
『どこへ行くのだ?』
『今日泊まる宿を探すのよ。武器を見つけて準備の出来た私たちは、さっき貰った荷物が最後で援助が無くなって、自分たちで生活しないといけないの』
なるほど。先ほど渡されていた荷物は最後の援助物資という事か。なら
『荷物をよく調べておくのだな。あのような雰囲気の奴らで、あの倉庫で武器を探させようとする奴らだ。渡した物資の中にも何かをしていると考える方が良い』
『……考えたくないけど、確かにそうね。宿で確かめるわ』
「アリー様」
我輩とアリーが念話で話していると、荷物を持つフィリーがアリーに近づき話しかける。
「どうしたの、フィリー?」
「事前に話していた通り、宿屋へ向かうのですよね? それでしたら、私の知っている宿屋がありますので、そちらへご案内します』
「あら、そう? それなら探す手間も省けるわね」
フィリーの提案に嬉しそうに微笑むアリー。彼女は友としてフィリーを信頼しているようだが、あの称号を見た後では、つい疑ってしまうな。まあ、宿屋に入ったら調べてみるか。
さて、まずは1年以内に何かしらの結果を出さなければならない。それは何をすれば良いのかはわからないが、この1年である程度振るい落とすという事だろう。生半可な事はでは無いはず。
そして、彼女の実力。我輩を握った感じでは剣を振った事はないだろう。ただ、勇者の子孫だけあって魔力は高く、多分ではあるが身体能力も高いだろう。鍛え方次第では強くなれる。
ただ、問題なのは1年以内の結果というものだ。彼女を強くして1年以内に結果を出そうとするには、かなり無茶をしなければならない。
幸いにしてここは聖都。聖王国の奴らにあの場所を知られていなければ、彼女を連れて行けるが。さて、どうしたものか。