勇者の子孫
倉庫に入ってくるなりごそごそと探し始める灰色の髪の少女。ふむ、何か訳ありのようだ。箱の中から次々と物を出していく。思ったよりも武器が多いが、やはり劣化しているものが殆どを占めている。
「……これも駄目……これも……あっ、これは……駄目ね。もうっ、ボロボロなやつばっかりじゃ無い!」
「それはそうですよ、アリー様。あの方たちにアリー様を勝たせる気なんてありません。それどころか、辱めようとすら考えているはずです。今からでも遅くはありません。辞退しませんか?」
「何を言っているのよ、フィリー! 私が引くわけないじゃ無い! 何よりも、あそこまでお父様とお母様を馬鹿にされて引けるわけないじゃ無いの! 私はあいつらを絶対に許さないから!」
アリーと呼ばれる少女はそう怒りながら、他の武器を見ていく。その後ろをフィリーと呼ばれた鬼人の少女が付き同じように探していく。少し見てみるか。少女たちに向かって解析を発動する。
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名前 アルフェイア
種族 人族
称号 勇者の子孫
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名前 フィリー・アランテ
種族 鬼人族
称号 アリーの友・監視者
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……ふむ、色々とあるが、まずはアリーの方だな。本当の名前はアリフェイアと言うのか。アリーは略称のようなものか。
そして何より勇者の子孫という事は、アナの血を引くという事か。……そうか、アナは子を産んでいたのか。うむ、良い事だ。良い事なのだが……いや、彼女の幸せは我輩が望んだ事。ここは素直に喜ばなければ。彼女の血が続いているのだから。
そしてフィリーの称号だ。アリーの友とあるが、それと同時に監視者ともある。これが友としての監視者なのか、それともアリーが敵意している相手の監視者なのか。
しばらく武器を探す2人を眺めていると、再び扉が開かれた。入って来たのはこちらも2人の男。1人は眼鏡をかけている線の細い20代の男に、もう1人は中肉中背の普通の男だった。どちらも人族だ。
「おーおー、本当にこんなゴミ屑の捨て場で武器探してるのかよ。こんなところの武器なんか使って俺たちに勝てんのか?」
「……あなたには関係ありません」
ヘラヘラと笑いながら話しかける男だが、アリーはそれを軽くあしらい武器を探すのを始める。
「ふん、まあ良い。どうせお前は残れないからな。無様を晒すと良い。クハハハハ!!」
男は笑いながら出て行ってしまった。なんだったのだあの男たちは? 訳がわからないが、それを無視した風にアリーはしているが、悔しそうに手を握るのが見える。
そのまま武器を探すのを再開するが、良い武器は中々見つからない。……これはやはり何かの巡り合わせ……いや、アナが導いたのかもしれんな。
アナと関わりのあった我輩が剣に転生し、そのアナの子孫であるアリーが武器を探している。これを運命ではなくて何というか。
我輩は念話の魔法を発動する。これも解析の魔法と同様にかなり時間がかかってしまう。魔王の時なら一瞬で数キロ先の部下に連絡が取れたというのに、今ではこの数メートルですら難しいのだから。
『あーあー、テステス、あーあー、聞こえているか?』
「……は?」
何とか念話の魔法がアリーに繋がり話しかけると、聞こえたアリーは震えて辺りを見回す。その突然の行動にフィリーも首をかしげる。
「どうされたのですか、アリー様?」
「いえ、突然頭の中に声が聞こえて来たものだから驚いて……幻聴?」
『幻聴では無いぞ。我輩はこちらだ』
「え? ええ?」
我輩の声に怖がりながらも呼ぶ方へとやって来たアリー。そして、ガサゴソと我輩がいる場所を漁り、その中から我輩を取り出した。おおっ、持ち上げられる感覚。何と不思議なものか。
「……綺麗な剣。あなたが私に話しかけて来たの?」
アリーは我輩を見ながら目を輝かせ、その後ろにフィリーは、驚きが隠せないようだった。
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