倉庫の眺めて
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○剣ハー○○ト(覇剣ハーゼスト)
持ち主 無し
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……一体これはどういう事なのだ? 余りにも不思議な事が起こり過ぎて全く頭がついていかん。
この解析の魔法で見る限りは、剣になっている事だけはわかる。ただ、力が足りないせいか、これ以上の情報が表示されん。
くっ、魔王だった頃の我輩なら、武器を見れば作成者すら見る事が出来たのに。……アナの体型を見て喋った時は3日は追いかけ回されたな。ついこの前の事のようで……我輩の記憶はついこの前の事だな。
この体……まあ見えぬし剣なのだが、解析を見た限りでは、あの時死んだのは確かなようだ。……これは我輩の部下にも稀に経験した事がある者がいた転生というやつか。
全く見覚えのなかった者が「お久しぶりです、魔王様!!!」と、迫ってきた時は、誰だこやつは? と思ったが、話を聞けば100年前に死んだ部下だった、という事が何度かあったが……我輩はそれを身をもって経験しているのか。
しかし、自身の体を動かせんというのは中々不便だな。まあ、体ではなくて剣なのだが。体は剣で出来ている、というやつか。
何よりついさっきまで使えたはずの力の殆どが使えなくなっている事も不便になっている1つだ。様々な力を持っていたが、使えるのはさっきまで使っていた解析などの魔力を少ししか必要としない魔法ぐらいか。
もう一度解析の魔法を使ってみるか。先ほどよりも魔力を込めて。少しは見れる情報が増えるはずだ。先ほど以上に時間がかかったが、解析の魔法を発動。
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○剣ハー○○ト(覇剣ハーゼスト)
持ち主 無し
切った数 0/10
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何とか見ることが出来る箇所が増えたが……切った数だと? これは何を切った数になるのだ? 物でも良いのだろうか? それとも魔物? うーむ、わからぬ。これが人などであれば困ったものであるが……。
もう少し他の物を見てみようか。しばらく倉庫の中にある物を次々と解析していく。倉庫の中の物は、本当に使わない物のようで、埃が被り、劣化が酷いものが多い。
自身を解析した時はわからなかったが、倉庫の物には耐久値が表示され、殆どの物が壊れかけ手前の物ばかりであった。そんな中に置かれている我輩はそこまで良い剣ではなさそうだ。切った数が0と使われた形式も無いしな。
それから、倉庫の物を眺める日々が続いた。この倉庫に来る者もおらず、我輩自身動く事も出来ずに、ただ辺りを眺める事だけが日課になってしまった。
魔王だった頃は、寝る暇もなく忙しく、暇な時が欲しいと感じる事が何度もあったが、これだけ暇なのは苦痛でしかない。せめて体が動かせたのならまた違ったのかもしれぬが。
誰か来ぬかと思っていると、バンッと開かれる扉。あまりにも急な事に驚いてしまった。驚くような心臓は無いのだが。
「ここの物なら何を使っても良いって言っていたのよね?」
「……はい。しかし、この倉庫は廃棄寸前の物しかありません。その中からアリー様が使える武器が……」
「……それでも私はこの中から選んで戦うしかないのよ。お父様とお母様のためにも!」
埃積もった倉庫にやって来たのは2人の少女。1人は角を1本生やした紫髪の少女。鬼人族の魔族の少女のようだ。
もう1人は銀髪なのだろうが、薄汚れており灰色に見える髪をボサボサのままにしており、睨みつけるような鋭い目で倉庫の中を見回していた。何より驚いたのが、その少女の顔がアナにそっくりだった事だ。
武器を探すアナそっくりな少女に、剣へと転生した我輩。これは偶然なのだろうか、それとも必然なのだろうか? 我輩にはわからぬが、運命と考えておこう。