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剣に転生した魔王

令和記念新作を書きました!

よろしくお願いします!

「……がっ……ぐぶっ……」


「……はぁ……はぁ」


 我輩の胸を貫く光り輝く剣。全ての闇を断ち切り、世界に光を輝かせると言われる聖剣だ。聖剣から溢れる光によって、我輩の体は徐々に焼かれていく。


 ズギュ、と我輩の胸から剣が抜かれ、力が抜けていく我輩は背中からその場に倒れる。……くくっ、生を得て260年。我輩の道もまさかここで途絶えようとは。


「……サーゼスト……どうしてこんな馬鹿な事を!」


 倒れる我輩を抱き上げる女性。彼女は聖剣に選ばれた勇者、アナスタシア。彼女には酷な事をしてしまったな。


「……長い事魔族とその他の種族たちとの間には、深い深い溝があった。その溝は魔王である我輩と勇者であるアナが良い仲になったとしても、収まる事は難しいだろう。ぐっ……だから魔族の罪を全て我輩が受ける事にした」


「で、でも……そんなの一緒になってから考えれば良かったじゃない!!」


「……それでは遅いのだよ。既に我輩と仲の良い君を聖王国が排除しようと動いていた。我輩はそれだけはどうしても許せなかった。だからそんな事を考える聖王国の上の奴らを殺し、そのまま今までの魔族の罪を我輩が引き受ける事にしたのだ。

 代々の罪を引き継いだ魔王である我輩が死ねば、魔族に対する当たりも少しは弱くなるだろう」


 血を吐きながらも笑いながら言ってやると、アナは我輩の体を力を入れながら抱き締めてくる。


「……ご、ごめんなさい。わ、私……私っ!」


「……謝る事はない。どこかで誰かが引き受けなければいけなかった事だ。……それが我輩だっただけ。逆に今我輩がやらなければ、共存なぞ無理だっただろう。

 君が殺されたなんて知れば、我輩が人族を滅ぼしているところだ」


 我輩は血濡れた右手でアナの頬を撫でる。我輩の血で綺麗なアナの顔を汚してしまうが許してほしい。どうしても最後に彼女の温もりに触れたかったのだ。


「……魔族の後の事は部下たちに頼んでおる。彼らと協力してほしい。それからグリムの事も任せても良いか? 我輩が拾った子供たちの中で1番頭が良い。君と力を合わせる事で、物事を良い方へと持っていってくれるだろう。それから……」


「もういいっ! もういいからっ!」


 頬を触れる我輩の手を力強く握り締めてくれるアナ。ああ、なんて温かい手だ。アナから零れる涙が我輩の頬を濡らしていく。


「……愛しているぞ……アナ」


「っ! サーゼスト! 目を開けてよっ! サーゼスト! サーゼストぉぉぉぉ!!」


 ◇◇◇


『……という風に我輩は死んだはずなのだが……これは一体どういう事だ?』


 聖剣で心臓を貫かれて先ほど死んだはずなのに、なぜ我輩の意識があるのだ? 全く訳がわからぬが、体が全く動かせない事から、ただ助かった訳ではないという事がわかる。


 それに今我輩がいる場所、それは……物などが置かれている倉庫のようだ。木箱やら汚れた布、それに古びた武器などが置かれた倉庫。そこに我輩は横たわっているようである。


 僅かにある小さな窓からは、よくアナと共に眺めていた双子月が見える。どうやら今は夜のようだ。


 しかし、どうしたものか。体は全く動かせぬし、喋る事も出来ぬ。そして、何かに触れる感覚もない。あるのは視覚と聴覚のみ。匂いも感じる事なく、何とも不思議な感覚である。


 それに目覚めたばかりのせいなのか、眠くもない。まあ、頑張れば1月は眠らずとも良かったため参考にはならぬが。それでも体に異常をきたしているのは間違いないだろう。


 ……そうだ。今我輩の状態を見るために能力を見るとしよう。解析の魔法を自身に使えば表示される。我輩は魔力を使い解析を発動……しようとするが、魔力の巡りが悪い。こんな事幼児の頃から無かったというのに。初めての感覚に戸惑っておると、ようやく解析の魔法が発動した。そして表示されたのは


 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 ○剣ハー○○ト(覇剣ハーゼスト)

 持ち主 無し

 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 ……何故か我輩は剣になっていた。

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