まだそう言いますか
「ふぅ。まぁ、見たことない物で、初めて食べた味ではあったが、それでもコレが異世界の物で、貴女が異世界から来たというのはまだ信じがたい話なんだが……」
「…………」
あれだけ食べておいて、まだそう言いますか。
あれから、おにぎりも食べたそうに目を輝かせていたから、もういいか……と思い切って食べさせてやった。
おにぎりも、初めての味だと喜びながらガツガツ食べて、満足そうにしていたというのに、まだ信じてないとか言い出した男に、しおりはジト目を向けた。
「あ、いや……。信じようとは、思っているんだが……」
しおりから不穏な気配を感じた男は、慌ててそう言い、取り繕う。
「ハァ……わかりました。何を話せばいいんです?私の世界のこと?」
「あぁ。まずは、貴女の名前だな」
あーそういえば、まだお互い名乗っていなかったなぁと、素直に名前を伝えた。
「名前は、佐藤しおりです。しおりでいいですよ」
「シオリ……か。珍しい名前だな」
「まぁ、そうでしょうね。それで、貴方は?」
「俺か?俺は、ジークベルト。ジークと呼んでくれてかまわない。それで、貴女はどうやってこちらに来たと?」
「さぁ?階段から落ちた!と思ったら、いきなりこっちにいたから」
そう言うと、ジークの眉間に皺が寄る。
「……そうなると、なんらかの召喚が行われた可能性があるわけか」
「わからないですけど、私のいたところとは、何もかも違いますからね」
「貴女のいた国は、どんなところなんだ?」
そう質問されて、しおりはため息を吐くと自分の国、日本のことを話した。
自分なりに、どんな街があって、乗り物があってなど詳しく説明してみたが、やはりというべきか男の態度は微妙なものだった。見たことも聞いたこともないであろうから、なかなか想像しにくいのだろう。
どう言えば伝わるのか……うーむ。と唸りそうになりながらも、ハッと気づいた。
あ!そうだっ!創造魔法で小さい模型を作ってみたらわかりやすくない?
ニヤリと笑うしおりに、ジークの顔はひきつっている。また、突拍子もない行動をするのではないかと思われているのだろう。
が、そんなことはかまってられないので、しおりはニッコリと笑顔で言った。
「これから魔法で、私の国を小さい模型で表現してあげるっ!」
「何っ?!」
またも驚愕の表情をするジークに、笑顔を向けながらしおりは創造魔法を使った。
服を変える時には細かな泡が足元から出てきたから、同じように細かな泡が出てくるものだと思っていたが今回は違った。
食べ散らかしたゴミが消えて、早送りしているかのようにビルやコンビニ。道路に、信号機。車やバイクの模型が作られていった。その見事な出来栄えに感心する。
相変わらず、すごいわー。創造魔法。
目の前の現象に、ジークもずっと目を開きっぱなしだ。イケメンが残念な感じである。
「こんな感じかな。こういう建物が並んでて、このコンビニでいろいろな物を売ってるの。で、こっちが道路で、これが乗り物かなー。この世界の乗り物って馬車とかじゃない?」
「…………」
あまりに衝撃的だったのか言葉がないジークに、しおりはため息をつく。
これで信じてもらえなければ、もうどう証明していいかわならない。こちらの人との違いも教えてもらえたし、もういっそのことまた創造魔法で変装でもして逃げよう。
そう、しおりは決意した。