ちょ、ちょっと待った!
周りと同じようなシンプルなワンピースを着て、街並みにバッチリ溶け込めていると自負しているしおりは浮かれていた。
創造魔法さえあれば、何でも自分で作って、やりたい放題だと考えたからだ。
しかも、現世では見たことのない魔法。あっという間に自分の服が変わる現象に年甲斐もなく、ワクワクした。
次は、住む場所かな?
着るものはなんとかなったから、次は寝る場所を探さなくてはいけない。
もちろん、創造魔法で作るつもりであるーーが、いきなり街中に家を建てようものなら明らかに目立ってしまう。
おそらくではあるが、自分は異世界人でこの世界では異質なのではないかということだけは、なんとなく察している。
そこでしおりが考えたのは、一旦この街を出て人目につかない森?山?があれば、そこでひっそりと家を建てちゃえばいいんじゃないだろうかーーと、いうことだった。
まぁ、そう安易に考えたしおりだが、ふと気づく。
あーでも、こーいう異世界モノの小説とかって魔物とかいるんじゃなかったっけ?
だとしたら、この異世界にも魔物がいるかも…
街を出るのも考え直すべき?
うーむ…。
道の端で一人、眉間に皺を寄せて腕を組み、そんなことを考え込んでいた。
「おい!おまえっ!!」
「…………」
「っ!おいっ!聞いているのか?」
「…えっ?わ、私ですか?」
いきなり後ろから声を掛けられ、振り向けば厳つい甲冑を身に纏った如何にも騎士です。という出で立ちの男性が立っていた。
まぁ、その顔は兜によってどんな顔をしているか把握することができなかったものの、声の感じでいくとするなら20代後半くらいだろうか。
「おまえ、ここらで見ない出で立ちをしているな?どこの出身だ?」
「え?」
まさか、衣服を変えたのにそんなことを聞かれるとは露ほどにも思っていなかったしおりは焦った。
どうしよう……どうしよう……。
冷や汗を流しながら周りを見回してみるが、何がいけなかったのかわからない。溶け込めていると思っていたのに。
周囲の人々は何事かとこちらを見る人が増えてきていた。
「……あ、あの私、最近この街に来たばかりで」
「だから、どこの出身だ?」
「………………」
「こたえられないのか?……。ちょっと、こっちに来てもらおう」
しどろもどろになって何も言い返せなかったせいで、怪しいと思われたのか険呑さを含んだ声で言われ、むんずと腕を掴まれた。
「ちょっ、ちょっと待った!!」
歩き出そうとしていた男は、こちらを振り返る素振りを見せたが一瞬だけで、構わず歩き出した。
「…え?ちょ、私何もしてないし、なんでついて行かなきゃいけないのよ!」
そうしおりが叫ぶと、男は立ち止まって振り返り、しおりを見て呆れているようだった。
「身元のわからない、不審者を連行して何が悪い。いい加減、大人しくついてこないなら罪人のように縛り付けて連行することになるが……」
「はい!私、大人しくついて行きます!」
素早くそう言い、男の横に並ぶと、また呆れたような視線を感じた。
ゲンキンなやつだと思われているのだろう。
ま、そんなことはどうでもいいのだが、これから連れられて行く場所とはどこで、自分は何を言えばいいのか……異世界から来たとか言ってもいいんだろうか。
そんなことを考えながら、不安しか感じないしおりだった。