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汗臭くても恋は出来ます。  作者: オオクマ ケン
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    8



 音子は友代の方をジッと見た。

「あー、あなたが先輩の彼女さんね。この間教室で見たよ。初めまして!」

握手を求める音子。

だが友代は可愛い格好で音子を睨みつける。

「あ~、私を敵視しちゃってるね。何?私が先に先輩にキスしちゃったから?」

ムッとする友代。

「ごめ~ん!彼女さんを先置いて」

目の前で手を合わせる音子。こいつ、全然可愛くない。

「お前なぁ~」

俺が言うと、それを遮るように手をスッと俺の前に出す友代。

「先輩は黙っててください」

「お、おう」

と、言うしかなかった。

「西川さん、でしたっけ?私たちは付き合ってるんです」

「へー、正々堂々と言うのね。この間の教室では否定しちゃったらしいけど」

「あなたには関係ありません」

「そう?私も犬雄先輩が好きなの」

「本気じゃないでしょ?」

「いいえ、本気ですよ~。だからあなたと私は恋のライバルってとこかな?」

「怒りますよ?」

「いいですよ。この剣道バカ。ここには竹刀は無いんだよ」

「何ですって?」

ケンカになりそうな雰囲気だった。友代が手を出すとは思えないが、この雰囲気はマジでヤバい。

「ヤメロって」

俺がしゃしゃり出ていいものだろうか?

だが、この件には俺も関わっているのだ。

口は出すべきだと思う。ってか俺にも口出しさせろ!

音子に言いたいことはたくさんある。

いや、前にも言ったのだ。

でも分かっちゃくれない。

まぁ、ネコだからな。

この気まぐれ子ネコちゃんがぁ~!

「いいか音子、よく聞け!俺は友代を愛してんだ」

率直に言う俺。こういう時は正直にハッキリと言うもんだ。

「俺はお前の事なんか何とも思ってない。だから邪魔すんな」

それを聞いた友代は耳まで赤くなる。

「せ、先輩。それは率直過ぎます……」

「いや、言わせろ友代」

「で、でも……」

「俺は友代が大好きだぁぁぁぁ!」

俺は叫んでやったぜ!これで音子には伝わっただろう。

俺たちの勝利だ。

しかし、その言葉に反応したのは友代の方だった。

「もう、恥ずかしいです!ヤメテください」

友代は両手で顔を隠す。

そんなにか?そんなに恥ずかしいのか?

俺には分からん。

だが、音子にはこれで分かるはずだ。

俺がどれだけ友代を好きなのかを。

さぁ、どうだ?

音子は悔しそうに手を震わせている。

ざまーみろ!

俺の愛は永遠なのだ。

ふっふっふ。

「先輩のバーカ!」

音子は叫ぶ。

「バーカ、バーカ、バーカ!」

そう言って音子はその場を立ち去った。

やったぜ。勝った!

走り去る音子の後ろ姿に不敵な笑みを浮かべた俺。

「友代、やったぞ。俺たちの勝ちだ!」

その時、友代の足蹴りが俺の足に炸裂する。

バシッ

痛ェ!

何だっ?

「先輩のバカ!そんなに好きだなんて相手に言わないでください!」

何だとっ?

俺ってやつはァ……。

何でだよ。

「お、俺何か悪い事言ったか?」

「悪いですっ!バカ!」

何のこった?

何が悪いってんだよ?

俺はどうすりゃいいんだ?

「友代…‥」

「先輩っ。先輩のことは信じてますけど、今度また他人の前で私を好きなんて言ったら、」

言ったら?

「コロしますよっ!」

マジで?

な、なぜ?

「何でだよ?」

「そんなことも分からないなんて、先輩のバカッ!」

もう一発足蹴り!

痛ェっ!

「分かったよっ。言わないよ」

「そ、そうですか。分かってくれて何よりです」

女は分からん……。

さてさて、嵐も去ったし、今日はここで別れるか。

「じゃあ、今日は楽しかったよ」

「そ、そうですね。私も楽しかったです」

「じゃ、また明日な」

「はい。それでは」

俺たちはそこで別れた。昼下がりの午後の陽がまだ高い頃だった。



 翌日。

今日は月曜日だ。

由紀枝と教室で会ったが、避けられてるようだった。

まぁ、無理もないか……。

そして今日、なぜか俺のクラスに転校生が来ることになっていた。

誰かと思えば、ホームルームに教室に入って来たのは去年、他の学校へ転校していった、かつて俺が好きだった女の子、西本実千子だった。

どういう事だ?

俺は目を疑った。

あの子は俺が一年前に告白して俺がフラれた子じゃないか。

なぜ今の時期になって?


 休み時間になって俺は実千子に話しかけた。

「君、どうして?」

「犬雄君。良かった。一緒のクラスになれて」

「ええっ?どういう事だい?」

「だって、一緒のクラスになりたかったんだもん」

一体どういうことだ?

「だって君は……」

「私、あなたに告白されたこと、覚えてる」

「それは……」

「私、あの時転校がもう決まっていたの」

うん?それは一体?

「だから、あなたの事、お断りしちゃったの。でも、こうして親の都合で戻ることが出来た。だから今度は私の番」

ええ?

「私、あの時はあなたの事フッちゃったけど、あなたの事が好きだったの」

な、何だと?

「お願い、私をあなたの彼女にして!」

こいつ、教室で告白してきやがった!

しかも、前は俺の事フッたってのに、実は親の都合で転校することになったから俺をフッただと~?

しかも今度は付き合ってほしい。彼女にしてくれだ?

まったく、俺の青春はどうなってやがる。

女難の相でも出てやがるのか~?

今度手相占いでもしてもらおうか。

いや、今はそういう場合じゃない。

何か言わないと。でもかつて惚れた女だ。

畜生!今でも可愛いなぁ。

じゃなくて、どうすんだ?

俺の心臓バクバクだぜ!

もう持たない……。

俺はどう答えりゃいい?

誰か助けて!

その時だった。

由紀枝が俺たちの所に来て、言い始めた。

「久しぶり、西本さん」

「ああ、姉川さん。お久しぶり。まだ犬雄君の世話焼いているの?」

「残念だけど、犬雄にはもう彼女がいるんだよ」

「ええっ?この冴えないモテそうもない、勢いだけの根性無しの犬雄君に彼女が?妄想?幻想?」

おい、こいつそりゃひどくないか?

ってか、何気にひどいことズバズバ言われたぞ?

バカにしてんのか?

だが、女相手に本気で怒る俺ではない。

「悪ィ。西本さん、ホントに彼女が出来たんだよ」

「ウソ~。信じられない!」

信じろよこのアマ!

「本当だとも!」

「誰々?気になる~」

「一年の坂口友代だ」

「へ~、誰それ?」

「君は転校してきたばっかりで知らないだろうけど、女子剣道部の新人エースだ」

「へ~。それで?いつから付き合ってるの?」

「一週間前くらいかな?」

「なんだ。ついこの間ってことじゃん」

「でも、俺はその子が好きなんだ」

「ハッキリ言うのね」

「ああ。俺にはもう彼女がいる。これはホントなんだ」

「じゃあ、私が入るスキはないってこと?」

「そうだ。悪いが……」

「あの時は私の事好きだって言ってくれたのに。まだほんの一年前だよ?」

「あの時はあの時だ」

「私しか目に入らない。私のことを一生愛するって言ってくれたのに?」

「だ、だから……、あの時はあの時なんだ」

「転校しても待ってるって、ずっと待ってるって言ったのに?」

「でもあの時、君は俺の事フッたじゃないか」

「私は現実しか見ない。あの時は永遠の別れだと思った。だからフッて、サヨナラしたの。でも今は違う。戻って来たのよ」

「ごめん。俺は君の気持ちに答えるわけにはいかない」

「そう。分かった」

そう言うと、実千子は笑った。

「あははははははは!犬雄君の事なんて、あの時も、今も好きなわけないじゃん!」

え?

「すっかり騙されちゃって」

こ、こいつ~。純情な男心をもてあそびやがってェ~。

悔しくって何も言えない俺だった。

俺はフンッと言うと、実千子の席から離れて行った。

由紀枝は実千子に怒って言った。

「あなた、犬雄の事騙したの?」

「違うよ。だってああでも言わなきゃ自分が惨めじゃん」

「はぁ?」

「あんただって分かるでしょ?今の犬雄君は彼女がいる。だから、私にはもうどうすることも出来ない。だから、陰ながらに応援することにしたの」

「じゃあ、あなたが犬雄の事、実は好きだったってのは……」

「そう。本当のことよ」

犬雄にフラれた女二人が沈黙を決めた。

そっか。好きな人の幸せを願わなきゃね。二人とも。

自分の気持ちに整理を付ける由紀枝と実千子。

そっか、私たちはフラれたんだ……。あの犬雄に。


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