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俺は少し考えた。
そして今、答えが出る。
デートだ。デートに誘おう。友代を連れ出すんだ。街中に。それなら大丈夫だろ?
そうだ。週末のデートなら誰にも邪魔されない。それに友代も汗臭さなんて気にはしないだろう。だから勝負は週末だ!
俺は友人であり、クラスメイトの水馬に教室で相談した。
「水馬、俺、実は彼女が出来たんだ」
「ああ、知ってるよ」
「え?」
なぜ知ってる?
「なぜ知ってるって顔だな。由花利からLINEで聞いたんだよ。バッチシ教えてくれた」
ああ、由花利情報か。
しかしこの男は……。
「水馬。お前、由花利にフラれ続けてるんだろ?なのになんでLINEとかで仲良くできるもんだな」
「ああ。俺は告白しこそするが、フラれ続けても由花利一筋なんだよ」
「由花利もよくお前と仲良く出来るな」
「友達だからな」
「スゲーな、お前ら」
「まぁね。俺は由花利のことが好きだ。だから友達でもそばにいられてすごい嬉しいんだよ」
「変わってるな、お前」
「そうか?一度愛した女だぜ!一生愛するのが男ってもんだろ?」
「度が過ぎてストーカーにならなきゃいいがな」
「うるせーよ!それにお前だって彼女といろいろ上手くいってないんだろ?」
「何でそんなことまで……」
「由花利情報」
「ああ、そうか。そうなんだよ。実はな」
「やっぱりな。いきなり恋人関係なんてお前には早過ぎるんだよ」
「うるせーな。じゃあ、俺のプランを聞くか?」
水馬は鼻で笑った。
「どうせデートとか考えてんだろ?」
な、なぜバレた?
「そ、そうだけどよ。彼女の趣味も知らないし、どこか行くってんなら相手と相談した方がいいよな?」
「いや、まずはお前のエスコートだよ!」
「何?エスコート?」
「ああ、お前のスキルが試されるのさ。お前が彼女をエスコートして遊びに連れてってやるのが一番ベストだろ?そのさりげなさがポイントアップに繋がるんだよ」
「な、なるほど……。エスコートね」
「ああ。まずは男を見せろ」
「俺の男をか?」
「そうだ。頼もしいところを見せるんだよ。お前の売りは?」
「う~む、映画に詳しい!とか美術に詳しい!とか合気道に詳しい!とか」
「そうだ!お前のヲタク魂を見せつけるんだ。さりげなくな。ガチだと相手が引いてしまうからな。さりげなく映画の知識やアートの魅力なんかを語って、『この先輩、とっても詳しいのね。素敵!』くらい思わせるのさ。それならポイントかなりアップだぜ!」
「なるほどな。それアリだな!」
「だろ?それで行けよ!」
「ああ。サンキュな。水馬」
「なぁ、犬雄」
「なんだよ?」
「ラブホはお預けだぞ?」
「バッ……」
犬雄は慌てる。
「いいか、真の男は童貞であるべきだ」
「そりゃ、お前の口癖だろ?」
「だから、真の男は奥手であるべきなんだ。ナンパな野郎には絶対なるなよ?プラトニックにいけ。禁欲的にな。そこに相手は好感度アップする言われなんだ」
「そりゃ、分かってるよ。俺はストイックな男さ!」
そう言って、ガッツポーズを取る俺。
さて、友代と会ってデートの約束をした俺は、週末に備えてイケてる服を買いに行った。普段の俺は、水馬曰く「超ダサい」らしい。まぁ、女っ気のなかった俺は、服などまったくこだわらなかったのだ。俺の服装はいつもは制服だから気にも留めなかったが、言われて気付くダサさだった。
もっと格好に気を配ってもいいのだ。いや、これからは気を配らないと女子に呆れられる。女子はそういうところをちゃんと見ているのだ。だからもっとお洒落に気を使わないと。
さてさて、一万円出して上から下までカッコいいのを選んだ俺は、今最高にイケてる。これで俺もイケてる野郎の仲間入りさ。
日曜日。
駅の近くの公園で待ち合わせした俺と友代はそこで落ち合った。
何と、友代は一体何を参考にしたのか、とっても可愛い格好でデートに来た。
こいつはレベルが違った。
可愛いなんてもんじゃない。まるでお人形さんだ。俺は目を丸くした。
「あっ、あの違うんです!この服を選んだのは由花利でして、そんな……」
「あ、そ、そう」
友代はメチャクチャ恥ずかしがってる。
おそらく今までのイメージとはかけ離れ過ぎていたため、勇ましい感じの雰囲気と可愛らしい格好にギャップが出たため、さらに好感度がアップしてしまったのだ。
「でも、君の今日の格好、すっごく可愛いよ!」
「は、恥ずかしいです」
「いいんだよ。さぁ、行こうか」
「はい」
俺たちは電車で街に出た。
さて、俺たちはカップルに見えるだろうか?いや、男女で歩いているんだ。気分はもうデート。いや、実際デートなのだ。
俺は友代に聞いた。
「今日、いい天気だね」
「先輩、天気の話なんて全然面白くないですよ」
うっ、キツいツッコミ……。
宇宙一面白くない話題だったか。
「じゃあ、今日ひょっとして部活あったんじゃ……」
「ありましたけど、休みました」
「あ、そうなの?」
「だから今、先輩とこうして出掛けているんじゃないですか。バカなんですか?」
うっ、ひどい。
「ご、ごめん」
「いえ」
「きょ、今日は俺、服をバッチリ決めてきたんだ。どうかな?」
俺は服をアピールした。
「先輩も気合い入り過ぎですよ。全然似合ってないです」
ひ、ひどい!
「す、すみません。私ったら自分を棚に上げて……」
「いいってことよ。俺も無理してた。悪い」
「いいんですよ。先輩は先輩らしくしてていいんです。だって、そのままの先輩を私は好きになったんですから」
俺はそれを聞いてテンションが上がった。
俺を好きぃ~!
いやいやいや、そんな嬉しい事いってくれるなよぉ~。
俺も君が好きさ。最高にね!
大好きだよ!
俺は告白した時のことを思い出してしまった。
最高にハッピーだぜ!
今にも踊り出したい気分を俺は強靭な精神力で抑えた。
俺ってカッコいい!
さてと、俺は彼女をまず映画に連れて行った。
映画館はとある商業施設の中にあった。スクリーンは全部で七つ。でも上映中の映画は十二あった。
どれを観ようかなぁ。
あ、これは自分が観たい映画じゃなくて、カップルで観る映画をチョイスするべきなのだろう。
じゃあ、どれにするか。
「映画、何か観たいのある?」
「先輩が映画に連れてきたんじゃないですか。だったら先輩が選んでくださいよ」
「う~ん、そうだね」
ここでマニアックなのを選ぶと外す。というかマニアックな趣味がバレる。それは避けたい。
じゃあ、ここは。デートっぽくラブロマンス映画だ。
そして俺たちは映画館のスクリーンに入った。
その映画は予想と違った。
エロいエロいエロい!
ヤバいくらいエロかった。
今日の反省。
ラブロマンスだからってフランス映画を選んじゃいけない。
映画が進むにつれて、
さらにエロいエロいエロい!
気まずい。すごく気まずかった。
二時間後、映画館から出た俺たち。
友代からひと言こう言われた。
「先輩のエッチ」
うわあああああああああ!
俺ってやつは~!
もう死にたい死にたい死にたい。
金輪際フランス映画はデートに選ばないぞ。というか、絶対にこれからは映画の内容を全部調べてから観に行く。俺一人でも気まずいのに、女の子を連れてこの映画は無いだろう。
そりゃあ、エッチと言われてもしょうがない。
俺ってやつはホントに……。
彼女にまで気を使われて。
ホントにホントに……。
「な、何か食べようか?」
「マックでいいです」
「え?」
「どうせ先輩のことだから、初デートに高い店とかに連れて行くように張り切ってるんでしょうけど、そんなの私、気ィ使っちゃいますからマックで十分です」
「ああ、そうだね。ってか何で高い店って思ったの?」
「分かりますよ、今日の先輩の気合いの入れようを見てれば」
「ああ、そうか」
「もうっ、バカ!」
食事を済ませると、俺たちは間が持たず、すぐに帰ってしまった。
ああ、俺ってやつは、情けない……。
今日のデートは完全に失敗だった。
帰り道に突然、西川音子に会ってしまった。
「うわっ、お前。何だよっ!」
「うふふふ。先輩!」
「何を嬉しそうに来てんだよ!」
「あ、お二人でデートでした?邪魔しちゃってすいません」
また嵐の予感……。




