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汗臭くても恋は出来ます。  作者: オオクマ ケン
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    3



 俺の名は有栖川犬雄。ってもう自己紹介は終わってたな。

恋に生きる図書委員の合気道二段だ。

俺は登校早々、困っている。なぜなら俺の隣には今、彼女ではない女が一緒に歩いているからだ。その女の名は姉川由紀枝。ロングの黒髪ストレートが似合うお嬢様って感じだが、見た目に反して行動は違う。積極的な女である。

俺の幼馴染だ。そして同じクラスの学級委員長でもある。

しかし、こいつの意味の分からない積極性には参る。何せすぐに俺の腕に自分の腕を回してくるのだ。その豊満な胸が当たって、胸の感触が俺の脳を刺激する。

いや、それは別にどうでもいい。本当にどうでもいい。

いやいやいやいや、ホントだよ?

しかし、いつもいつもこんなに近くては、誤解されかねない。

付き合ってるの?と言われたこともあるが別にそんなんじゃない。ホラ、こいつも否定してるじゃないか。だからホラ、そういう事だよ。

うん、そういう事だ。

それに俺は昨日、坂口友代という眼鏡の似合う勇ましい後輩女子に告白してOKをもらったじゃないか。

だから俺はそうなんだ。そういう事なんだよ、畜生!

何だよ、みんな誤解しやがって。

「由紀枝!」

「な~に、犬雄?」

「そんなにベタベタすんじゃねーよ。いつもいつも!」

「だって、あんたこうでもしないと彼女いないんだから寂しいでしょ?」

「いや、俺は昨日、男を見せたんだ。出来たんだよ彼女が!」

「えっ、マジ?」

「ああ。マジだ!」

由紀枝はやっと腕を離してくれた。胸の感触が終わる。ああ、もったいなかったかな?

いやいやいやいや、俺はそんな男じゃねーよ。

これからは惚れた女一筋さ。

「由紀枝。これからは誤解されるようなことするなよ?」

「えっ、えっ、誰よ?その相手って」

「聞いてくんなよ」

「教えなさいよ」

ブーという顔をしてくる由紀枝。

こいつに教えて何の得がある?

「しかたねーな」

俺は自信満々に答える。

「お前も知ってるだろー?剣道部で有名な、あの坂口友代だ」

由紀枝は驚く。

「えっ、あの新人エースって噂のあの子?一コ下じゃない。そんなに可愛かったっけ?」

無礼な!

「ったりめーだよ。彼女は普段は無表情だが可愛いんだ」

「あ、そうか。眼鏡を外すと実は美少女とか」

「違うぜ。彼女はな、大和撫子っていうか、日本的美人っていうか、本当に清楚で純粋でしとやかなんだ。お前とは大違いだよ」

「失礼ね!私はそうなりたくてもならないんだもん」

「だから、お前はそういう女なんだよ」

「バッ。あんた女に夢見過ぎ!女の子だってエッチな事考えるんだから。その坂口友代もそうよ。大和撫子なんて日本人の考えた嘘。武士道と同じよ」

「何を言うのか、この女は。彼女がそんなにエッチなわけないだろうが。このビッチが」

「ビッチでけっこう。あんた女の世界をまるで知らないのね。女はひょっとすると男よりエッチなのよ」

「嘘言うんじゃねー」

「ホントだってば!女子はドロドロとしてるんだよ。それが現実。現実を見なさい!」

まったく最近の女は節操ねーな。マジでこいつもビッチ様だよ。

「分かった分かった。俺は彼女が出来た。もう寂しくもなんともないぜ、由紀枝」

「きーっ!あんた本当に告白してOKもらったの?あんたのあんたによるあんたのための妄想じゃなくて?」

本当にこいつは失礼な奴だ。

「誰が妄想か!本当だって言ってるだろ?」

「信用できない。じゃあ、本人に確かめてもいい?」

「なっ、何を言ってるんだ?」

「ホーラ、怪しい」

この女はどこまで信用しないんだか。

嘘じゃねーってんの!

「分かったよ。じゃあ、休み時間に聞きに行こうぜ。ホントだったらアイスな」

「いーわよ!勝負といこうじゃない」

何を勝負するんだこのアマ!

そうこうしてるうちに学校へと着いた。


 

 休み時間。

えっと、友代のクラスは由花利と同じだったな。

一年A組か。

俺は由紀枝を連れて一年の教室に向かう。

懐かしいな。俺も一年前はこの辺のクラスだったもんだ。

一年経つといろいろ変わるらしい。

A組の教室の前に来ると、後輩男子に声をかけた。

「坂口友代いる?」

「え、はい先輩」

そう言うと、その後輩君は大声で友代を呼ぶ。

「坂口さん、先輩が来てるよ!」

由花利と話していた友代は、その声を聞いて、硬直する。

俺は手を上げて友代を呼んだ。

友代の様子がおかしい。恥ずかしがっているのか、スッとこっちには来てくれなかった。俺が女子と一緒にいるのが珍しいのか?

友代はツタツタと遅いテンポでこちらに来てくれた。

「何ですか先輩?」

「友代、この女、俺の幼馴染なんだけど、友代が彼女になってくれたことを信用しないんだよ」

その途端、ざわついていた教室内の全員が静かになった。

みんなこっちを見ている。

え、彼女?

付き合ってるの?

そしてさらにざわつき始めた。

「あ、あの」

友代はモジモジする。

「べ、別に付き合ってません!」

そう大声で言うと、友代はすぐに教室の奥に逃げ込んだ。

「な……」

俺は驚愕した。

付き合ってないだと?

お、俺は一体どうすれば?

「なーんだ。やっぱり違うじゃない」

由紀枝はプププと笑うと口元に手を当てた。

笑いやがって!

でもこんなの違うだろ?俺は昨日、告白してOKもらったんじゃないのか。

「由紀枝、違うんだ。彼女は……」

「はい、弁明してもおっそーい。あんたの負け。アイスよろしくね」

そう言うと、由紀枝は先に教室を後にした。

そんな馬鹿な……。

俺は深く傷付いた。


 

 考えても考えても分からない。なぜ、友代は交際を否定したのか。

あとで聞く勇気もなかった。

俺ってやつは。

俺のバカバカバカバカ!

俺はこれじゃただの笑いものだ。どうしてこんな……。

まぁ、これでよかったのかもな。俺はフラれ男だ。

彼女なんて冗談だったんだ。

うん。俺らしい。

あはははは……。

笑うしかなかった。

 教説に戻ると俺は机に伏せった。

「まぁ、元気出しなよ。あんたには私がいるじゃん」

と、幼馴染の由紀枝が元気付ける。

優しさが痛い……。

「あんたがモテるとか夢だったんだよ。さ、現実に戻りなさい。あんたの世話は私が焼いてあげる」

由紀枝。お前ってやつはどこまで残酷なんだ。

「畜生!からかわれた。あの子に!」

「ホントに告白したの?」

「ああ。そうだよ」

「やだ、泣くことないじゃん!」

え?俺は泣いていたのか?

目をこすると、ちょっぴり涙がこぼれていた。

俺ってやつは何て女々しい……。

「由紀枝……。俺」

「はいはい。泣かない泣かない」

そっと由紀枝は自分のピンクのハンカチをおれに差し出した。

「これでその涙を拭きなよ」

こいつ優しい。優しいよ。

ま、幼馴染の仲だもんな。昔からおれの世話ばかり焼いてきたんだもんな。

でも、こいつほど残酷な優しさを見せる女はいないと俺は思う。

でも、今日だけはあやかろう。

「サンキュな」

俺は差し出されたハンカチを受け取り、目に当てる。

「あ、ちゃんと洗濯して返してね」

ちゃっかりしている。

「ああ。分かったよ」

「やだ。やけに素直ね」

「悪いか?」

「あんたみたいなのが彼氏なんて私だったら嫌だな~」

ほっとけ!

俺はハンカチを畳むとポケットに入れた。

由紀枝は俺の頭をナデナデする。

「よしよし」

「何だよ?」

「可哀そうな犬雄によしよししてあげてんの。あ~あ。悪い女に騙されちゃったねー」

本当に俺は騙されたのか?

やはりきちんと確認した方がいいのじゃないだろうか?

彼女は悪い女ではない。

やはり何か事情があったんじゃないだろうか?

こんな考えは諦めが悪いと思われるだろうが、こんな俺にもプライドがある。

やはり何かおかしい。

あの時の友代とは違った。

確かめるべきだ。それがネバーギブアップってやつだろう?

俺はそう心に決めた。



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