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汗臭くても恋は出来ます。  作者: オオクマ ケン
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 友代は剣道の練習が終わると、防具を外し、道着は着たまま剣道場の端に、由花利と体育座りして、さっきのことを由花利に話した。

言葉足らずだったか、ちゃんと話せたかは分からなかったが、不器用な口調で説明はした。

「由花利、私、告白されちゃった」

由花利はうなづく。

「有栖川先輩でしょ?」

「うん」

「それで?」

「私、OKしちゃった」

「そうなんだ。付き合うのね?」

「うん。付き合ってみる」

由花利は心配を隠せなかった。だって友代は友達だから……。

「でも、どうしてあの先輩と付き合うことにしたの?」

「それは……。その」

ん?

由花利は不思議そうに友代を見る。

「だ、だから。あの人、何だか突然私のことを好きだとか言い出したのよ」

「それで?」

「だから、好きだなんてそんな……。私なんかが」

「何を言っているの!あんたは可愛いよ」

「な、何を言ってるの。私のどこが?こんなにも奇声を上げて竹刀でバシバシ相手を叩いて、こんなに汗臭いっていうのに」

由花利は笑って言った。

「まぁ、私ら女子剣道部は、この伝統的な臭さと共に歩んでいかなければならない宿命なんだよ」

「そうだけど、でもこんなに臭かったら先輩、私の事嫌いにならないかな?」

由花利は苦笑した。

「心配ないよ。でも慣れるまで時間かかるかもね」

「でも私、剣道は辞めたくない。そんなこと考えてない。今まで通り私は、剣道の頂点を目指す」

「そして恋も頑張るんだね?」

「二兎を追う!」

「あんたなら二兎とも得られると思うよ」

「うん」

「それにしても、どうしてあんな冴えない先輩と付き合うことになっちゃったんだっけね」

友代は口元をムッとさせた。

機嫌を損ねたらしい?

「私、変かな?」

「う~ん。あんたの趣味?」

「しゅ、趣味っていうか」

「何?」

友代の目が泳ぐ。

「私はその、告白とかされたことないし、私ってそんなに告白されるような女なのかな?」

「自分に自信が無いのね?」

由花利は友代を頬をつついた。

「やめてよ」

「有栖川先輩ってスポーツ刈りのさらに短い髪型だよね」

「だから?」

「あの髪、触りたいと思わない?」

「ちょっと何それ?」

「あはははは。ちょっと憧れ」

「何言ってんの?」

友代はたじろぐ。

「まぁまぁ、そろそろ着替えよっか?もうみんな帰っちゃったよ」

「うん」


 

 女子更衣室。

剣道の防具などが散乱していた。

剣道着を脱ぎ、制服を身に着け始める友代と由花利。

「それで」

友代が言い出す。

「付き合うって具体的にはどうするの?」

「は?」

由花利は驚く。

「あんた、何を言ってるの?」

「べ、別に私、付き合った事ないから」

「私もないよ。でも、付き合うって言ったら……」

「ん?」

「だから、付き合うってのは一緒に登校したり、一緒に帰ったり」

「えっ?」

「それに一緒に図書室で勉強したり、休みの日には一緒にデートして遊んだり、とか」

言ってて恥ずかしくなる由花利。

あ~あ。何でこんな子が……。疲れる。

「そういうのが付き合うっていうんじゃない?」

「そ、そう。でも一緒に帰るのはナシ。私、臭いもん」

「臭いって、さっき言ってた剣道の臭い?」

「うん」

「別に気にし過ぎじゃない?」

「いいえ。女子なのよ私は」

「でも知ってる、あんた?」

由花利は急に真面目な顔になった。

シリアスか?

「もしあんたのことが好きなら、その臭さも一緒に愛するもんじゃない?」

「臭さとか……。それに愛するなんて、そんな」

「だってそこまでこだわるなんて可笑しいよ。まるでお父さんの加齢臭扱いみたいじゃない?」

「だって、それも臭いでしょ?」

「それとこれとは違うんじゃない?」

「そ、そうかな?」

「うん。気にしない方がいいよ」

「そ、そうしてみる」

「うん、そうしなよ」

「ありがと」

二人は着替え終わった後、防具と竹刀を袋に入れるとそれと鞄を持って、更衣室を出た。


 

 その後、家に帰った友代は、制服のまま夕食を終えると、持ち帰った竹刀を出すと、庭に出て素振りを始めた。

「いち、に、さん、し」

素振りを五千回終えると、友代は汗だくで息を切らしていた。

「さぁ、お風呂に入ろう」

友代は竹刀を直すと、家に入り、脱衣所に行って服を脱いだ。

ポカポカとしたお風呂は温かかった。

すぐには体が温まらなかったが、気持ちは良かった。

一日の疲れや汗が取れる。この状態だったら先輩の前にも顔を出せるかな。

その時、自分が裸の状態だったことを思い出す。

ボッと顔が赤くなる。

「ああ、私ったら何を考えて……」

恥ずかしくなる友代。そしてそのままブクブクと、湯船の中に沈んでいった。

 

私の中で何かが変わる。私の中で何かが染まる。

私はこんなにエッチな女だっただろうか?

変な事考えるな!変な事考えるな!

考えるな!


考えるな!

考えちゃダメェっ!

バカバカバカバカ

私のバカ!




 お風呂から上がると、パジャマ姿の友代は、玄関の外にいる飼い犬の綱吉の所に行った。可愛い犬だ。子犬の頃から可愛がっている。実は友代は猫派なのだが、飼っているのは犬だった。両親の意向だから仕方がない。

「綱吉、私、彼氏が出来ちゃった。どう思う?」

ワンッ!と返事をする綱吉。

「有栖川犬雄っていう先輩なの。ちょっと頼りなくて……」

そう言うと、一週間前に先輩がカツアゲに遭っていたのを思い出した。

「違う。全然頼りにならないの。それに情けない。多分」

友代はしゃがむと、綱吉の顔を両手で覆った。

「でもね、私のことを好きだって言ってくれたの。これってどうなのかなぁ?」

綱吉は顔を振ると、友代の両手を振り払った。

「名前も面白いよね。犬雄だって。あはははは」

苦笑する友代。

「付き合ってみてもいいよね?私なんかで良かったら……」

友代は、ハアッとため息をつく。

「男の人って私、分からないの。それにいろいろ不安。でも、誰だって最初はそうだよね?私だけじゃないよね。多分、先輩だって」

友代は立ち上がり、綱吉にバイバイすると、家の中に入った。



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