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生霊  作者: なかむらこむぎ
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2/12

2

入社してからしばらく経つと、A子さんの様子がおかしくなりました。

その理由が分かったのは、会社が閑散期に入った頃でした。


週末、当番で遅くなった私は、皆が帰ったあとに更衣室に入りました。

すると、誰もいない更衣室に、着替えを終えたA子さんがぽつんと立っていました。


私は不思議に思いながら「お疲れ様です」と挨拶して着替え始めました。

しかしA子さんは動こうとしません。

どうしたのか聞いてみると、A子さんは少し躊躇ったあと、声を潜めて、B男さんに待ち伏せされていて動けないと打ち明けてきました。


A子さんによると、閑散期に入って正社員も定時で帰れるようになってから、B男さんはA子さんが更衣室から出てくるのを待ちぶせして、後ろについてくるようになったというのです。

A子さんは帰りが一人にならないように気を付けていたようですが、今日は運悪く帰る方向が同じ人がいませんでした。

更衣室にしばらく留まっていればB男さんも諦めるだろうと思ったのですが、B男さんはいつまでも待ち続けていて、出るに出られなくなったというのです。


私は半信半疑でしたが、A子さんが嘘をついているようにも見えず、着替えがすむまで待ってもらって、一緒に更衣室を出ました。

すると、待ってましたと言わんばかりにB男さんが男子更衣室から出てきました。

その嬉しそうな顔といったら。

あまりにも露骨で、私は驚くより何より先に戸惑ってしまいました。


でもA子さんはきっと怖かったのでしょう。

彼女は私と違う鉄道を使っていましたが、乗り換えをすれば帰れないことはないので一緒に帰らせて欲しいと、私にお願いしてきました。


別れ道になり私たちが一緒に角を曲がると、後ろを歩いていたB男さんが、ちらっとこちらを見るのが見えました。

でも方向転換して私たちを追いかけてくることはありませんでした。



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