表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生霊  作者: なかむらこむぎ
11/12

11

重い体と心でなんとか一週間を乗りきった休みの日、私は部屋にこもっていました。

気持ちの良い天気で、本来ならどこかに出掛けていたでしょう。

しかしもうそんな気力がわきません。


ベッドに寝転がってウトウトしていると、ふと、臭気が鼻につきました。

酸っぱいような独特な臭いには、覚えがあります。

(まさか!?)

飛び起きると、B男の顔がすぐ近くにありました。

ベッドの真横に立って、私を見下ろしていたのです。

「ひっ」

完全に不意をつかれた私は、小さく悲鳴をあげました。

すると、B男がにたりと笑いました。

自分の優位を確信してこちらをなぶるような、嫌な笑いです。


(こいつ…)


すぅ、と頭から血の気が引くのが分かりました。

そんな感覚は初めてでした。

「いい加減にしろ!」

私は近くにあった本をつかみ、B男の顔面めがけて投げつけました。

力一杯投げた本は、ドン、と鈍い音をたてて、壁にぶつかりました。

「毎日毎日しつこいのよ! アンタなんか好きになるわけないじゃい!」

今度は頭に血がのぼり、今まで溜め込んできた怒りがあふれて止まらなくなりました。

これがキレるという感覚かと頭の片隅で冷静に考えながら、私は激情のままにB男を罵りました。


『文句があるなら面と向かってはっきり言え』

『影で嫌がらせしてくるところが陰険で気持ち悪い』

『臭い、メタボ、性格悪い、仕事できない、お前のどこに惚れる要素があるんだ』

『歯磨きくらいしろ、ガムで誤魔化そうとするな、余計に臭い』

『仕事のミスを他人のせいにするな、それがお前の実力だ』


もっと酷いことを色々言ったような気がします。

B男は無表情になり、どこを見ているのか分からない空っぽの目をしてボーッと立っていました。

それを見ると余計に腹が立って、私はますますヒートアップしました。


「ちょっと! 何を騒いでるの?」


私の声を聞き付けて心配したのか、母がドア越しに声をかけてきました。

私がそれに気をとられたわずかの隙に、B男は消え失せました。

(逃げたか)

まだまだ言いたいことがありましたが、しかたありません。


息を吐いて気を落ち着けた私は、母に大丈夫だと伝えるために立ち上がりました。

振り返ると、しばらく片付けていなかった部屋は随分散らかっていました。

(掃除しよう)

私は休みをフルに使って、部屋を隅から隅まで掃除しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ