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野原
野原に遊ぶ。
無邪気に生きることのできる、ほんの束の間。
幸せな時。
舞う蝶々。
小鳥が鳴き魚が泳ぎお日様が顔を出す。
そよ吹く風の他、何が要るだろう。
幸せな時をそうと知らず享受する。
そして成長し、やがて思い知るのだ。
棘が刺さった痛みに。
擦り減って摩耗する心に。
真夜中の涙に。
あの野原は楽園だったのだと。
そしてもう帰ることはできないのだと。
ふと思う。
帰ることができないのなら、新しく野原を作れば良い。
一滴の清水のように心に沁みた想い。
新しく作れば良い。
失った幼さの代わりに、大きなてのひらがある。
包み込むことも構築することも自由だ。
全て自由。
さあ、貴方だけの新しい憩いの野原を。