前へ目次 次へ 5/11 影法師 黒い影法師。 踏みながら歩く。じわじわと後ろからの圧を感じて。 すぐ隣に日向はある。 けれど影法師を踏まなくてはならない。 これはそういう遊戯だから。 遣る瀬無さに落ちる涙の一滴。 滲んで消える紙の上。 どうしてと呻いても続く日常。 心の鈍麻も恐ろしく。 圧が急に消えた時、光の世界に行けると思った。 日向に憩うことができるのだと。 けれどやっぱり影法師はついてくる。 そこに射す光もある。 生きるということなのだと言い聞かせて、歩いていく。 泡沫に浮きつ沈みつしながら。