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切子細工
透明の玻璃の切子細工、ゆらゆら揺れる水がある。
六角の細工は雪の結晶のよう。
溶けて流るる。
切子細工の瑠璃の色はそんな鳥を思わせて。
おかしいの。
鳥は空を飛ぶ。
水に舞うのは魚。
ひらりひらひら。
閉じ込められた魂の行き先はない。
光は射しているのに触れられず、風は玻璃に遮断される。
赤い魚は熱に発光しているのだろうか。
光に触れられないから自ら光っているのだろうか。
貪欲で小さな熱。
命の塊。
どこからか花の匂いがする。
近くに庭園などあっただろうか。
こんなところまで香るなんて欲張りな花。
欲張りな。
本当に、欲張りなのは私。
眠りの中、貴方に再び逢えないかと願っている。
泡が旅立つ。
上へ、上へ。