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Super Man  作者: 純金
5/6

▽雨のち、雨

午後には、雨が降り始めた。

それも急に。


俺はその時、屋上にいたので、

雨が降り始めた時は、本当に焦ったものだ。


俺は仕方がないので屋上入口付近の階段に座って、

音楽を聴いていた。

相変わらず、同じ曲しか聞いていない。


しかし、失敗したと思ったのは、

理科の教師、黒田(くろだ)に見つかってしまった時だった。


「あらぁ。なにやってんの真倉」

この黒田は、俺のクラスの理科担当ではないが、

入学当時初めに会った教師がコイツなので、

憶えていて、黒田の方も俺を憶えていた。


「...ども、黒田センセ」

「なんで階段なんかに座り込んでんだ?今、授業中だよな」

青色の上着をまくって、時計を確認する黒田。

もう言い訳できないだろう。


「んだ、サボりか?そんなんじゃダメだぞー」

実に教師らしいことを言ったかと思えば、

黒田はその後「んじゃ」と言って去ってしまった。

「なんだったんだ...」

全くもって、謎な人だ...。



雨は放課後になってもやまず、

帰り道は悲惨なものだった。

傘を持っていないものだから、ありがちなことに、

学生鞄で頭を隠し、家へと走った。


人に見られてない所で時々加速したりもしたので、

思ったよりは早くついて、そこまで濡れずに済んだ。

そういえば、相合傘なんかしてるカップルを多く見かけたが、

あの学校は、そんなにカップルが多いのだろうか。

不純異性交遊だと思うので、どうにかしてくれないだろうか...。

決して個人的な恨みなどではない。



シャワーを浴びて体を拭くと、

すごくスッキリした。

窓の外を見ると、雨はあがっており、

雲はなくなっていた。

俺の好きな青空ではないが、しかし、

雨上がりの空は気持ちがいい。


固定電話に留守電が入っていたので確認してみると、

母親からで、

『仕事で遅れるので、今日遅くなっちゃうかも!

でも大丈夫だよん!ご飯ちゃんと作ってあるからー。ねっ!』

との事だった。


今年で確か47歳になる母親だが、

妙にテンションが高い事に定評がある。

あまりこういう事は言いたくないが、

友達の来てる前で歌い始めるのはやめてほしい。

マジで。



母親からの留守電を聞いたところで、

俺は二階に上がり、自室へ向かう。


ドアを開け、愛しの自室に入ると、

何故か窓が開いていた。

おかしい。出るときにちゃんと閉めたのに。


まさか泥棒が入って来たのではないかと思ったが、

しかし、窓が壊れてると言う事はなかった。

「...どういうことだ?」

俺は窓に近づいて、その隅から隅を確認してみる。


いきなり、バタン、と俺の部屋の扉が閉まる音がした。

何か気配を感じ、俺は恐る恐る振り返った。


ドアのすぐそばの壁に寄りかかる男。

黒いマントと、口以外を覆った覆面を付けており、

素顔を隠していた。


「お前が――『真倉 清』か?」

男は俺を指さす。

俺は恐怖のあまり言葉に詰まっていた。


「まぁ、聞くまでもない。何の断りもなく、この部屋に入ったのだから、

それはお前が『真倉 清』本人という認識で間違いないだろう。

高校生くらいの男子の部屋に無断で入るのは、母親くらいだしな」


その通りだ。俺の母は何も言わず俺の部屋に入ってくることがある。

この間は、ベッドの下にしまっていた俺の同人誌(おたから)が...。

あ、いや、そんな事を考えてる場合じゃない!


「誰だ...。お前一体誰なんだよ!」

やっと声を振り絞って、男を怒鳴りつける。


「俺か?俺は〝行き止まり(デッド・エンド)〟だ。

ただ、そう呼ばれているというだけで、本名じゃあない」


窓の外には、再び暗雲が立ち込めていた。

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