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Super Man  作者: 純金
3/6

▽『力』の使い道

まず自分にこういう力が備わったという現実を受け入れ、

最初に考えたのは、この力を役立てる方法。

しかし、部活に入ってるわけでもないし、

体育の授業もサボりまくりだし、役立てる機会などはないだろう。


改めて考えてみると、寂しい人生だ。

今更後悔しても仕方ないけれど。



「おやおや。真倉君じゃないか」

高校へと向かう道で、急にイヤホンを外されて、

俺は顔を横に向ける。

「おはよう。いい朝だね」


壮島 美香(そうじま みか)――俺の一年上の先輩だ。

長い茶髪を後ろでまとめているのが特徴的。

我が安代(あしろ)高校で五本の指には入るであろう美人だ。


「あ、おはようございます」

俺はウォークマンをしまいながら会釈する。


何故俺がそんな美人と知り合うことが出来たかというと、

春の部活動体験で、軽音部に仮入部した時、

俺のベースの腕を褒めてもらったことがきっかけで、

知り合いになったのだ。


俺のような人間でも、こんな美人な先輩がいるのだから、不思議な世界だ。

子供の頃に親父のベースをいじっていてよかったと、

これほどまでに思ったことはない。

何回か怒られたが...。


「しかし、君が我が軽音部に入ってくれなかったのはちょっと残念だったな」

歩きながら、壮島先輩はそんな事を言う。

いや、俺は軽音部に入部しても良かったのだが、

もともと部活に入る気はなかったし、

面倒だからそれは辞退した。


「君が入れば、もっと人気が出たと思うのだけれど...女子人気要因で」

「な、何言ってるんですか...」

俺はそう言われるほどの男ではない事は確かだ。


...しかし、今はどうだろう。

この力を使って、学校の人気者になれるのではないか。

一瞬そんな考えが頭をよぎったが、すぐに消す。

目立つのは嫌いじゃないが、そこまで好きでもない。


「それに、軽音部は今でも十分人気でしょう」

「どうかな。部員は減ったし、楽器初心者もいるし、ね」

すると壮島先輩は急に俺の目の前に立ちはだかり、

両手を胸の前で合わせた。

「お願い!どうか、今からでも入って!軽音部!」


突然真面目にお願いされ、俺はたじろぐ。

そんな態度で言われたら、断る訳には...。

だが、俺はそんなに...。

「えっと...」


俺が何かを言おうとした瞬間、

壮島先輩はぷいっと逆方向を向き、

再び歩き出した。

「ま、考えて頂戴な。いいお返事を期待してるよ」

暫く黙っていたから、俺が悩んでいると思ったのだろう。


なんとかこの場は乗り切れたようで、

俺はふぅ、と息をつく。

カバンを握り直し、俺も歩き出そうとした時、

俺の目にあるものが留まった。


「あっ...」

俺は即座に走りだし、壮島先輩を抱きかかえた。

「きゃっ!?」

そしてその場を離れるように跳び、

3mほど離れた場所に着地した。


ガシャン!という大きな金属音が響き、

見ると、壮島先輩のもといた場所に、

大量の鉄骨が転がっていた。


「大丈夫かい!」

道沿いの工事現場から、中年の男が出てきた。

どうやら、作業員のようだ。

「...はい。なんとか」

俺は答える。


俺の目に留まったのは、工事現場のクレーンにつられた鉄骨が、

それをすり抜け、地上に落ちようとしている様子だった。


そして、その下に壮島先輩がいたので、

俺は駆け出し、壮島先輩を抱えて跳んだのだった。


「いやぁ、すまない。怪我はないかい?」

「えぇ、まぁ」

俺は頷いて、壮島先輩の方を見る。

どうやら放心状態の様で、視線は落ちた鉄骨の方に向いている。


しかし、力のおかげで壮島先輩は助かった。

万事オッケーだ。


俺はこの日、力の使い道を一つ発見したのだった。

『一、人の命のために使う』

これをモットーにしていこうと、俺は決めたのだ。

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