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「うぅ――、クソ、どうなってんだ。はぁ……はぁ……、あの奴隷のアイツはぁぁ――」「そう……、おはようルチャード? でも終わりだから、あなたの負けだわ」

へ、あぁ――「ま、まだだ……、へへ、何言ってんだよ、まだ首があるだろう、エぇっ……!? 俺は死んでねえよっ、死んでねぇ!真剣でやるって言ったろうが」ふぅ……ふゥ……フゥ……ッ。


 剣を拾う、明らかにやる気だが、弟子たちが前を塞いで「そう、アナタはね……、弟子として不適合なのよ、能力よりも人格としてだから……」

「おっ……俺は負けてねぇよ、何も負けてねぇ!この貴族が負けるかよ……。相手は動物だぞ、あの奴隷だぞっ、平民もだ!? それに力がありゃ良いんだ、才能があるのはどう見ても俺だろうが――ッ」

「そうなのかしら……?」「アァぁ――!?どんな目ぇしてんだよっ、どうあがいても下っ端じゃねえかよ!? なぁ……っオマエは頭が良いんだろ。奴隷なんて最大の汚点になるんだ、良いのか……っこんな奇跡中の奇跡の一発に、その人生台無しにすんのかっ!?」


「違うわ……。違う」「違わねえよぉ! 奴に負けてる所はねぇ、俺は全てを上回ってるよォオ!?」

「そう……、でも私は勇者が欲しいのよルチャード、やっぱり貴族とは違うかしら。アナタの夢より大きかったからよ、勇者よ、奇跡。だって……私は夢見がちなのって」


――。

――――――――。


「ふぅ……ふぅ……、フゥ――!? ちぃぃ……、絶対、後悔させてやるからな。お前が泣いて靴を舐めるまで嬲る……、お前みたいな一般風情をこの俺がっ……この貴族がせっかくメトってやるって言ったんだぞっ、それを――」

 それをぉオ……っ。

 描く、破門、ルチャード・カルマス3世。「テメェは泣いて俺の側室になるんだぞ、その前にボッコボコにしてやる。負けて土下座して泣いて喚いて、オマエは孕まして欲しいって泣いてっ、それで俺に泣いて詫びんだよぉおおオオ!?」

 うん、そう。むしろそれを望んでいるのだから、ドンとこい。

「そう……、楽しみにしてるから、ルチャード。あなたに残されたのは私に勝つ事だけ。それ以外はない、私が欲しいならソレしかないのよ――」

 剣を舞わせる、剣の乙女が。白金の髪をまとわせて気高く「アナタにとっての道が私ならそれは本望。どこまでも目標であるのが私なのよ、師匠だわ、本物の師匠なのよね――」


 その、誰より美しい麗人が剣を抱いて笑う。光る姿に幾人かの弟子が頭をかいた。

 そして最強の弟子であった彼を破門に伏し、そうして少年に向き直るの。かなり疲弊しているが、それでも待っている。その一瞬の為だけに。


「そう……、ねぇ? 本当にアナタは、勇者になってくれるのかしら……?」

「はい」

「辛く厳しいよ……。私は甘やかさないし、限界が来たならばそこで終わりだから――」

「分かってます……。アナタは必ず僕が、はぁ……はぁ……、それは、この世界を守った騎士として師匠になってもらう。僕は勇者だ、勇者になれるんだ……っ!」

 何よ……、レベル2つも上がっちゃって。こんなに小さいのに。

 ひざまずく彼に、能力を行使しようとする。だがこの時ばかりはいつも緊張するから、手順は3つ。


「我は萌ゆる穂先……、刻命に抱くは魂の叫び。大地よ聞け――星よ聞け――。即ちこれは魂のせいやく、我らが目覚めしは楼閣の外典だと」

 まずは剣先で少年を縦に切断するよう這わす、撃ち抜く。両者とも血をかすかに滴らせた。

 そしてまずはレベルが落ちるのだ、能力も落ちていく。何度も経験したので分かっているのにこの少し気持ち悪過ぎる感覚である。

 筋肉が委縮し包む理力までもが減退するから。カラダが一気に老けたような、陽光で1週間焼かれて命が抜けるような……自分から色々抜けて揮発していく位の。


 止まらない。


 弱者に落とされたと理解して今まで得られていたスキルが弱体化し。

「ならば名を刻め……しんを刻め……。そは来たりて破きし、そして破かれし神明の外なり。内なり、今はどこか。それは破壊なりか死なりか、そうしてあの裏切りなりか……」

 さぁ……見ている。それでもオマエを見ているぞ―――。


 そうして次に、真なる名が飛び込んでくる。ただその時……。


「はぁ……はぁ……、この契約において……、この……、、アッ……あぁ、なにコレ、なにが――」

 はぁ……はぁ……ハァ……―――――――?

 彼の妙なスキルは見えもしないのに、そのまっさらだったハズの場所から何か来るの。湧いて来る、私を掴んだ。それは何かを言いたそうにしているのだ。

 初めてだった、このXスキルが疼くのは、そしてアテられたスキルが何かを伝えて来るのは。

「師匠――。アナタは師匠だ」

 まだ小さい鼓動。

 だが怯える、動けない。恐怖を感じてしまった。

 無数の白い手が。たった一つの能力で怖気づいてしまうのは初めてで。レアスキルは幾つか見てきたが、そんなんじゃない。ケタ外れの何かを感じる。


「世界に2つとない……、固有スキルでしょうね。はぁ……はぁ……、そう……しかも、時間の無限なる連鎖にも顔を出さない、たった一つだかの」

 それでも意を決して引き継ごうとした時、揺らぎは――。

 うぐ――ウゥ。私を呼んでいる……。なにコレ、何が……はぁ……はぁ……!?

 アァ――――燃えたぎるような――。

 それが正に運命であり、そして鎖になるとは思っていなかった。

 チート能力を蝕む程のクサリ、本当の意味での禁止事項。世界を変える力を――。

 強すぎて立ち眩み。たった一人の能力とは思えない力強さ、そしてオーラのような精霊達のたゆたい。その先に見えたのは――光。


「ドラゴン」

 ドラゴンだ。

 そのものが見えた、気高きドラゴン。未だ完成を望めない、闇夜を拒みし2つの月、その赤き月を睨み続ける白き龍。美しく望まれし革命者。

 うなずく。その未知のスキル。まだ彼は理解してないかもしれないが。

 受け継いだ。

 そして倒れ伏す――。


 それは、その少年は義務を果たし切った顔。だがこの意味を理解するのはまだ先。


 出発にはまだ日数があり準備が整っていないので2人の相性を確かめたいと。そう言って連れ出すから。

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