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弟子がその胸を触る、そしてもう一人を押しのけて服をかぶせた「では、倒しましょう、師匠」
笑顔だ。イヤな予感に駆られる。彼は剣を握り、もう一人の魔王へと向き直るもの。まぁ、そうなんだろうという目、そのもう一人の影は。パンチを撃ってくるが、その剣でなんとか弾き、だが何度も何度も……。
「それで……、僕の目的もね、実は大した物ではなかったんですよ……はぁ……はぁ……、最後のお金を使って、誰か強い方に身を寄せようとしただけで」
一人になった、そこから歩いた。ひたすら歩き続けた。
戦いを求めて、自分が死せる墓場を求めて。でも殺さないんだ、誰もその兆候を見つけられない、見つけれたなら魔王などいない。
そうして死ぬ事を認めないのだ、この力は。
ただただ悪意だけが降って積もって歪み、狂わせ壊し。だがしかしだ、その日はまさかの――。
「そう……、まさかだったんだ、本当にあの日の言葉が――――――」
滲むその姿、光と共にある少女の肖像。
そうしてもうこの遊びは終わりなんだよ、だってその最上位悪魔との戦いが始まるからね。
真の一部を開放する、強烈な力で相手は先制攻撃してくる。駄目だ、剣では追いつかないな、全くその剣に臆する気配がないよ。
だから殴り返すんだ、そして返されて一撃!
どんなになっても1つの願望だけは捨てなかった。
「ふぅ……、ふぅ……、禁を破ってる。頭がおかしくなる……。僕は負けるでしょう、恐らくはね。でも安心してください、かならずアナタだけは残すから――」
でもね、最後だけは頼みましたよ。
お願いしますから。
「ただでも……、アナタと一緒にいて唯一の誤算は、生きたくなったこと。でもそれも解決しました」
おぃ……ヤメロ――。ヤメなさい、弟子くん―――。
「是非、アナタの語る、夢のようで、それでいて誰も知らないだろう物語の一つに、僕を付け加えて下さい。それだけで良い」
師匠、お達者で――。
その最後の顔は安らかで、そして、戦いに出る最後の力を宿していた。
伝説の剣を握る。それはまだ村なんていう、そんな伝説。13歳の人間が手にできた精一杯、最後の3週間の思い出。
「いつか僕と同じ匂いがした子を探して下さい師匠、そうすればいずれはあの魔王に繋がるんだ――」
形が変わるんだよ。だってこのスキルを継いだならね、彼女ならば認識できるはずで。この禍々しい力の小さな小さな目覚めを。
駄目……ダメだよ、走る違和感、ゾクゾクするような歪みの本質が解放されてゆく。あのXレベルが上がったのも、もしかしたら――。
「そう……、魔法が、体内で走る。ヤメて……お願いヤメ――。はぁ……はぁ……!?純粋なる歪みを、うぅぅ、あれは本当に、あの子は魔王のォ――」
その登場し始めた化け物に戦慄。咆哮が鳴りやまない、山が……動く、力が登っていく。弟子に羽が生えた、模様がうずまく、チャックが走るようにその白いヤイバが体のあちこちから生えて走り回り、そうして花開いて鱗となった、糸を引いて頑強なる鎧となす。
あまりに凄まじい気配に自分の足が震え。
「僕の領域で勝手に……、ふふ。ルール違反だぞ貴様、ウォオオオオオオ!」
迎え撃つは、影、広がるはライオンのごとし気迫、四つん這いの咆哮。
影が戦い、引き裂き、そしてフードの少年をも噛んだから。弾ける体が……、血が飛び膨らむナマの肉体。
そのまま目いっぱいカラダが膨れて弾けて、溢れ出すと、それは犯すように穢すように、穴という穴から入って行った。その白と赤の人間まだらが深き影に染みつく。
そのまま大いなる化け物はコブシたる前足を――。
「ぐぃいいいあぁああああああああああ」「ヴぉおオオオオオオ!」
「そう、あんなに……――。どんな純度の物よりも強いいびつ、アレが……、あの子達が生きる歪み――」
魔の法とは歪みだと、そう言った。でも歪みとは何か対象があって初めてだから。
でもだけどその禁忌の部分たるは純粋なる歪みであり、凝縮した何か、言葉では言い表せない虚空。これは使ってはならない物で本当の意味で奇形を催す――。
「今、時空自体が歪んだの――。そう……一体どれ程の力を持って、本気の本気で彼らはこんなのを内側に――」
異形 対 異形。
その小さいと認識できるようになってしまった剣で、その勇者の証で殴るお弟子くん。殴りあう、だが早々にその剣を放り投げた。
「やはり、効かないよね。悔しいナァぁあ!」
その激烈なパンチを尻尾で弾く、揺れる。魔王竜vs魔王獣、衝撃だけで落盤しそうなその。突進して吠える白のドラゴン、それを軽快なフットワークで滅多打ちにする影のケモノ。だが確かにもう一匹の魔王の影武者は強いらしいと。
「そうか……、そういう事だったんだ」勇者になる。その強い瞳は裏を返せば、絶対に自分は勇者になれないと知っているからこそ出せる光で。
なぜ気づかなかったの……。
いつかでも、勇者になれる人がいたならば、それを自分の一部を残せたならば、それは。
「最後の一撃を頼みます……、師匠! 正気を保ってる内にね……っ、僕がまだ、魔王の影でいられるウチに――」
その間に、アナタの中に勇者を生み出すんだぞ――。
ウォオオオオオオ!
殴り倒す力、だが物理ではないのだ、もう既に訳が分からなくなっている。すごい力だ、こんなスキルを持っていて……。ドンドン更新していく、留まる事を知らない歪み、力。こんなの……これは、魔王とは万能じゃないのかと、こんなのに勝てるのだろうか。攻撃力+100がいま、精霊咀嚼というスキルに変わったから――。
「そう……、殲滅の力。唯一、人類を滅ぼして良い者・魔王――」
突然その名前を、その奇妙なアザナを思い出して。そうなの……、彼らは唯一無二のアルマゲドン。絶対的な人類殲滅の器、その影武者。だからこそ死には敏感だった、だからこそ彼の光は絶大で――。
「師匠、でもあの学園は気をつけて、アナタにはまだ――」ブン殴られる。するとますますドラゴン化していく彼が、その化け物を切り裂いた。恐ろしいまでの力……。
力が、こんなに――。
こんな痛みを感じているのだろうか、あの子は。でも膨張するのを止められない、痛い、痛い……、アァこんなの人間を捨ててしまうだろう。
皮を切り裂いて、自分まで引き裂いてしまうと――。
「頑張って下さい師匠ォオ……っ。はぁ……はぁ……アナタは必ずこの闇を暴いて……っ、アナタだけが頼りなんです」うぁあああ!
そう言われても、動けない程で。自分の殻を突き破る苦しみに嗚咽する、解き放たれていく真の力は。そのスキルが私の中で目を見開き、「あ~、あぁぁ~……、お前のほうは外典の者にまで委ねたんだ……、愚かだなぁ~。でも誰も僕らは見つけ出せないよ、お前の思うほど甘くないんだよね」
余裕とは言わないが、それでもその魔王獣は笑ってるの、「そして何より不良品だね、王ではない、お前では勝てない――」
光が走った。殴り合う化け物達。だが獣の一撃だけは貫通するのだ、派手にウロコが飛び散って、痛い、イタイぃ……「お前では私のような王には勝てないのだ、むしろ何故勝てると思ったぁあ!?」
「ぐふっ。いや、だって……、師匠直伝の、諦めない力さ。はぁ……、はぁ……、良かった……、やっぱり師匠は希望だよ、希望なんだよ――」
その瞳からは闘志が溢れる、相手の一閃を受け止め、綺麗に返すから。染みつくまで毎晩戦ったその格闘性、確かに戦闘経験では確実に上だ、上だから。
「ヒヒヒ、そうかぁ……、頑張ったんだねぇ。でもだよ――」ケモノがその格闘力すらも超えていく、スキルで無効化し、白き竜を逆さにした。訳が分からないが墜落、墜落キャンセルも不能。そうして尻尾で一撃をえぐり――!




