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うぅぅ。
「うぅぅ……、師匠。師匠……っ、大丈夫でしょうか――」
霞む世界。次に見えたのは、岩だらけの場所で。
恐らくは地下だろうな……、最初に入った洞窟とよく似ているから。なんとか起き上がる、頭を振ったから。
「そう……、大丈夫だよ。お弟子くんもだね……、はぁ……はぁ……、じゃあ、行きましょう」
すぐに立ち上がる。上で今も戦いが続いている気配がするのだ、なんとか戻らねばならない。とにもかくにもモンスターのサーチだ、すると後ろに気配が――。
「師匠。お疲れ様です」もう良いですよ。
そう言うと、ぽすんと、岩の椅子に座る。その気配に眉根を上げる私。
「ごめんなさい。実は僕はウソをついてました」
振り返ったそこに見えるのは弟子。なんの変哲もない少年、ただただ誠実に「僕と一緒に生きていける人はいないんです、その耐性を持つことができない、だって……魔王なんだから」
そうだよ……、だからこそ驚いたんだよ。この愚かな人類殲滅の器に向き合える可能性がある、そんな人間がいるだなんて。
すごいです、合格ですよ。
師匠に微笑むその言葉に、眉根を上げて。
「僕はね、周りに歪みを与えてしまうんです、人間さえも狂暴にしてしまう。ごめんなさい……、僕はね、他人を壊すんだ」
あのモンスターたちの全ての異変は僕だった。
一言で言うと、歩く原発だ。
愛せるか。
愛せるだろうか―――。
でもアナタだけは……――。
「そしてあの日に現れたのは、僕だったんだなぁって……。全てを飲み込んだ。あの人も殺した、母様も殺したのも、そして兄さまは。 あぁ――兄さまは、あれ? あぁ~………」うん、もう分からないな~。僕がなんなのか、誰なのかもね。
それから変わってしまったと……。そう信じたいんだ。子供らしく足を振り。
「そう、つまり……、私にどうして欲しいのか、君は」
決まっているらしい、その微笑み。私はそれを絶対に拒否する予定だが。その目に嫌悪を……、それでも微笑み続けうなずくのは。
「師匠、それでね。紹介しますよ、多分気が変わるんだ。だってそっちがね……? その子がもう一人の後継者なんだ。魔王の種――」
即座に振り替える、そこに佇んでいた魔物に騒然。
すぐに剣を抜いた、確かにおかしな気配で、そいつはだが、上にいた魔王とは全然プレッシャーが違うのだ。異様だ、異様で……そうして弟子が魔王だと信じてしまうその――。
「ダメですよ師匠、諦めて欲しいから。アナタでは敵わないんだ、奴も僕もそれは魔王の影武者―――。種なんですよ」
二人の影が伸びる。これも人間型だが、しかしすでに体が黒く変質していたのだ。フードの少年は既に黒に沈んだ顔面。
時折、魔王を名乗る何かが現れるのは知っていたけれども、ただ何故か誰も本物とは言わないらしいと。あどけないともソレは誠実だとも。
その少年も弟子くんとよく似た気配で。
何故か相手の能力が見えるよ、真っ白なスキルと、大した事のない波形。ただ歪みがやはり1点だけあるのだ、でも弟子くんよりは鮮明であり『刻発』と書かれているように見えて……。
「キミがルール違反者かぁ……。全くぅ~。ねぇ、見ているね? そういうのは駄目なんだぞー――」「そう……、そうなの。 でも悪いけれど、私は知らない……。それは君がナゼ魔王なのかも、それで幸せか不幸かも分からないよ、それでもね――」
君は魔王だろう。
絶対に倒さねばならないから、ここで勝てるかどうかで決まるから……。
その構える剣に、彼は礼儀を交えて会釈した。そのしゅ「ぐ……ふっ――!?」
すさまじい攻撃にぶっ飛ばされる、見えなかった――。
あの波形にそこまでの力があるだなんて、いや……そうか、弟子くんもそうなんだ。魔王。
「うぅぅ、だが……それでも……っ」地面をけずる、剣で止まった。睨みすえる、精霊律を唱えるしかないが、おっそい。魔法はなんとなく危ない気がした、だからなんとか周り込んで時間を――。
「効くよ、お姉さん……。私に魔法を使って良いんだ」「ヤメて欲しいな……、ゼッタイ駄目だよそれは」
「ふん、あのねぇ、他人の領域に来てまで何をさぁ――」
悠長にそう言いながら私を捕捉し、既に上、カカト「僕たちは正直だからね? ルールは魔王をも飲み込むよ、さもなければ示しがつかない、勇者とは違って――」
ネ。
ドスゥゥゥ「がはぁ――、あぁぁ!?」
ぶっとばされる、すさまじい威力で岩が砕かれ。転がって、そして……。「綺麗だねぇ……。さすがはもう一人の私が選んだ女だ――」
上から見て来る、必死に飛びのくが。
これほどの恐怖を得るとは、こんな子供、子供だから。だが逃げてもその見えない風刃で斬られて服が剥かれ。
そうしてもうどうにでもなれと、即唱。炎の一撃を撃つが全く動かないから。どうやらこの精霊律なるのはやはり効かないらしい。
「師匠、諦めて欲しいです……」「そう……、はぁ……はぁ……、では、これではどうだ――ッッ」
レアスキル、知らないだろう力を。
実は一応、少しだけ魔法詠唱を早まらせる方法があるんだ、魔力フレーズを下にばら撒くよ、回収すれば代わりになると。魔王の影の素早さに翻弄されつつも、焦りが見えた、それは何せ最大破壊の一撃で。
直撃は期待するべきではないだろうが、それでも十分に――。
だって更なるレアスキルを、振り子。これは伝っただけでも相手にダメージを与えれるんだぞ。だから。
「そう……、人法・スキルの混合、さすがにこれなら逃げれるでしょう」「コイツかなりだな――」
逃げ回る私を捕まえられない。なんとか少し、後少しだ。コッチを掴もうとしたけど……、悪いね、あまり知らないだろうこの相手の力学を応用する技は。
投げられ舌打ち。だがさすがは魔王か、振り子というスキルの広がりに気づいたハズ。それでももう遅い……! 師匠の全力は―――ァ。
「はぁ……はぁ……食らいなさい、壊応――」だが後ろからワキを決められて「それは駄目です、ヤメて下さい師匠……っ! 貴女が受け入れれば良いんです、苗床として与えられれば幸せになる――」
その最大火力を撃つ師匠の体を止め、そして転がす弟子は。
「ぐぅ、うぅぅ――弟子くん。君はそこまでして私を」
こっちはもうレアスキルで足が震えて来ている、それでもヨロヨロと立ち上がるが。弟子は師匠に立ちはだかって「だから諦めて下さい、僕たち魔王を受け入れて――」
「はぁ……はぁ……、そんな訳に……、行くか、どいて」「あぁ~……お姉さん? ねぇもしかして知ってるぅ? じゃあ教育しなきゃだ、えぇ~……でも」
外典の女かぁ……。
ぱぁん! 弟子を抜いて平手が撃たれた。そのままフードの少年は更に一撃、白目を剥く。そうしてそのカラダが晒された、揺れる2つの肉が。
必死にカラダを隠すが、少年2人が見ている。頭を持たれ……。
「分かりましたか……、これが差なんです」




