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「そう……、気付いてるかなお弟子くん? 合わせるよ。2対1でもソレなら――」「はい……、前に進むしかないんだ。だって無防備だし……はぁ……はぁ……、弱そうだから、一太刀でも入れば……!」

 相手は鎧なし、少しでもいけるはずだ。その言葉にうなずいた少年、私は精霊法を以て風と成し、思いっきりぶつけてやるさ、お弟子くんにね。

 汁ごと飛ばしぶっ飛んできた物体にさすがに飛びのくミミック、そこに弟子の一撃!

 さすがの威力だ、相性も良いハズで、一気に爪を3本へし折るものね。だが返しのもう一方の爪に大きくのけ反った。尻もちお弟子。


「あぁ……そうだよ、コッチもいるんだから――」

 その間になんとか私は羅列ロウソクで加速、唾液を跳ね除け走る。だがそこに重力反転、ふわっと吹き飛ばされるが、むしろそこに風の然だね。

 後ろに噴射でなんとか戻ろうとする、一撃!

 相手はそれを猿のように飛んで逃げるが、だが弟子くんが必死に掴みかかる。放さない。

「ふぅ……、ふぅ……、そう、お弟子くん分かってたね。ならばコレはどうだ――」

 大地よ万障せよ――。

 呪文のあいだも掴むお弟子くんは粘る、だがもう歯ぎしりで中空で咀嚼されかけ投げられて、天井に激突させられた。

 われ手繰るは万においての地の底。見るは叶わず、きくも違わず、その優しき手を辿るは地獄。全てが不可視で音も無し――。

 そのまま粘液に墜落してしまう弟子くん、ミミックはもう気づかれてると分かると見せつける様に歯ぎしり咀嚼して斬りかかり。


「これはそう……、でも自分が落とされるとは思うまい――」

 その用意していた、かなりの魔法を解き放つ師匠。地面を伝って襲っていく、透明な力の波動がその白い存在を狙う。予想外。

 なんでも噛めるだろうが流石に重力は消せないから、力の本流に発狂しながらも撃ち落とされるミミック猿。ただその時、ビーム砲が私を――。

「うらぁあああ! いっけぇ、ビリ剣!」

 そこに割って入る一撃。あの弟子くんのビリ剣だ、ビームを割いて重力を払いのける力。その乱反射するのが白い人間を貫いて――!

「あがぁ……!? ぁぁ……、あぁぁぁ――――」

「はぁ……はぁ……、やった……、やったよ弟子くん! そうだよ、その剣は無効化してるの、ナイスかな」


 驚いて白の人体が右往左往する。

 そこへ師匠が走り込んで一撃を、ガントレットのストライク・キャノンで最後――。

 すると、おめでとうとばかりに、あっけらかんと、その貴重な貴重な臓器だけを残して消え散るミミック。正に宝物の本分、そうと成り果ててしまったニンゲン。

 血と肉を飛び散らせなかった分だけ良心的かもと、もう臭いのは十分間に合っているから。

 そのお弟子くんの手のひらに刻まれた呪いも消えた。少しの歯と、こびりついた肉という宝物を拾ってやって。


「ふぅ……、ふぅ……、ふぅ……、だけどもここは、とんでもないな――」



「ラシュラト様……っ、界匿なる伽藍かいとくなるがらんのラシュラト様ぁ! はぁ……はぁ……ラシュラ」「なんだ五月蠅い――」

 突然に、首を持っていた、分からないが扉も道もスキップして部下を握るは「あぁぁ……、いえいえぇえ!? だが何せご報告をっ……ご報告っ、この近くに魔王の聖痕が現れたそうです、ラシュラトさまぁ!」

「ほぅ――」

 その地を守る者。それが珍しく目を剥いた。いつも尊大なる存在であろうともその言葉には居ても立っても居られない。首なぞ放り投げる、立ち上がった。

「大いなる磔の怨望おおいなるはりつけのおんぼう、来たか――」


「はい、はぁ……はぁ……、うぅぅ――。今すぐに取り返しに行きますか。この世界の事を知るチャンスと思われますです、しかも我らが最も近きとのこと……っ。今なら必ずや導と化すでしょう――!」

 息を切らし見上げたら、期待と強欲に満ちたその目。すくむ。その地は恐らく伸ばされてしまうだろう、延々と。無限に。部下に示された方向の様子を伺ったならば、翼を生やす。笑い――。

「いや、良い――」

 ふと何故か、あの強大なる支配者はヤル気を失くすのだ。「で、ですが……っ? あの、歪みの中には我らすらも救い上げ、殲滅する力の元がありますぞ。あれは生まれたてだ……、未だ何も知らぬゆえに我らでも」


「構わんのだ、もう、既に遅かった――」

 忌々しそうにその、楕円になった赤の目で光を見やる「ちぃぃ……、先を越されたか、あの玉座の力に現れるとは。だが。まさかルールを――」

 ラシュラトは唇を噛みしめる。



「ふぅ……、ふぅ……、なんとか、勝てましたね」

「そう、君……なに? この傷はどうしたの、なんで言わなかったかな……っ!?」

「えっ? あぁ……、えと。大して痛くなくて、いや……」えぇ。

 少し集中し過ぎかな。そんな事を言って笑うお弟子くんに頭を振る私。錬金薬を塗っておく、臭い臭いと騒ぐ少年に、しっかりと塗りつけてやるから。

 二人して逃げるように急いで帰還だ。この憂鬱なる魔王の根城、閉塞感と恐怖の……。

「やぁやぁ、こんにちわー。この前はどうも~」「あぁそう……、アナタは確か……――」

 眉根を上げて警戒する師匠と弟子。あれはアサシンの男、確か名前は……。


「僕はねぇラドライナー・ケンドリクソン。お見知りおきを、お美しいお嬢さん!」「そう……、うん、まぁそうなの――」

 自己紹介を横目だけで流す。その男を避けようとする、だが彼はしつこく追って来ていて。妙に触ろうとするし、あどけない笑顔ですり寄って……。

「そう……、でもアナタはね? 私の弟子をこけにするから――。今も見えてる、そういう妨害は論外だとね」

「あぁ……、でもそう、これはたまたま、それは純粋な君への愛なんだ」「ふん―――」

 ほくそ笑む姿にあっけにとられる。何せその精神年齢を知らないのだろうな、その弟子くんをわざと足をかけて邪魔をしたのも見えてるし、言わないで流すと思ったら大間違いだと。


 残念ながらコッチはチート持ち。


 その男は顔を武器にするのだろうか、しかしまぁ……まぁまぁだろう、首を振る。

 すると突然マジックとばかりに、何も無い所から花を取り出して見せて。


「いやぁ~~、でもでも、すごかったですねぇ、師匠ちゃ~ん。ただそれだけだったんよぉ、俺はねぇ。その剣に見惚れた……。それで師匠ちゃんのお名前は?」

 確かに身なりは良いけれど、妙な気配の男に恐れしかない。でも師匠はあっさりと答えたんだ、名前くらいはと言う。

「ははぁ、やっぱり可愛い名前じゃないかぁ~。いやぁ実は僕もねぇ、色々と剣やらが好きでねぇ……。それで、あなたの剣が気になっていたんだよね。でもまさかやはりだ、かなりの錬金かなって……」

「そう、なの……? それは奇遇。アナタ錬金もするのかな、へぇ~……」「マジで!? その口ぶり、まさか自分で鋳ったのォ? 第2煉形成れんけいせいまで行った――!?」


 だが確かに、錬金には詳しいらしい。都市での価格、高名な錬金工房との知り合いに留まらず、時流や実験結果を知っているんだ。情報網がいまだ未発達な世界、最新の話を聞くチャンスで。何度か名前を呼ぶヤツにうなずく師匠が。


「うぅぅ……でも、師匠。アイツは駄目です、アサシンなんでしょう……っ。何を目的に近づいてきているか分からないんですっ!」

「そう……、そうだね? そう言うのは駄目だから、お弟子くん。彼は確かに怪しいと思うけど……、うん」

 そのいつも通り余裕の、そして妙に自信がある表情は。

 僕はあまりアイツとは接せないのに……、その言葉に唇を噛む。それにほくそ笑むその男――。

「ラドライナー」



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