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「ふぅ……ふぅ……、怖いよ……、怖い」

 狭い中でその痛む体を抱く僕は、だけども血が見えたんだ、それは……その人は「負けられない。僕はこいつら程度には、まだ……」

 ボクの前では苦しみながらも、そのネバる前衛の力を糧に圧していくニンゲン陣営。置いて行かれる訳にもいかないんだ……、でもその推進力は僕には高過ぎて。

 小さい少女が斬りかかられる、でもどうやら近接もするらしい。血の力でさっと逃げて一撃、師匠も舌を巻くから、そして必死の追撃を。

 しかしその小さな虫たちが姿を形成しつつあるんだ、嫌な予感。全員の血を吸っている、そこで師匠がスキルを使い懐へ――。


「あぁ……そう、それでも押し切れないの。あと一歩か――」

 もう一撃の被弾は覚悟しなくてはならない、それでも無理か。だがその時出て来たのは弟子くんだ。その一撃には誰もが驚いた「あぁ…そう……、でもそういう最後だけ頂くのはよろしくないの。それは師匠の仕事だもの」「あぁぁああア、消えろーーーーー!」

 光。激烈な一撃は鎧を砕いて貫通、壁すらも白化した。えぐれた部分は白ばんでその小さな虫を全て破壊して。上がる汗、湯気となって。

 鍵の音がする。


「なんとか……勝てた、勝てたぞ。扉が開いた、出よう!」

 両方の扉が開かれるから。さすがにここでお開きになる、「はぁ……はぁ……大丈夫かな、お弟子くん」「はいっ……、はい!」

 かなりの傷、錬金素体で回復してやるが、それでも彼は笑顔だった。ただその笑顔も――。

「どうよ~~、助かったでしょう? 俺にも是非優しくしてほしいねぇ、だってもし君だけなら死んでたろうにぃ?」まーその端数のは、最後だけラッキーだったけども――。


「そう……、そうかな……? 君はどちらかというと、後方支援を邪魔してくれてたと思うけれどもね……? あの小さな子が焦れてしまい血応なんていうね……そんな珍しい応を使ったのもその為だった」

「あぁ~~……、いやぁ?  でも実力は証明したでしょ~。そこの最後まで動かない弟くんよりマシじゃな~い?」「まぁ、そう……。そんなに私の弟子くんに文句があるのなら、師匠である私が引き受けるけれどもね」

 その剣が首元へと狙う事に驚き、でもおどける仕草だ。アイツか。

 半笑いで出て行くそのイケ好かない男。ただ見てしまったのだ、部屋を出る時。


「あぎぎ……。あがぁあ……死なせてくれ……死なせ、死なせてくれぇぇ――」

 そのカマキリのような何かが空中へと召される姿を。掴まれている。永劫か。

 鋼すらも無残にへしゃげ落ちて、その緑の残り香が崩れていって――。

 溢れる血の臭い。人の血だった、分かる。そうして陣へと退いて第2隊が入って行く前。大汗をかいて師匠と弟子が逃げていく。


 だーかーらぁーーっ、俺らの仕事よりもテメェらの問題だっつってんだろぉ!?


 朝になる、この頃は叫ぶのを聞く事が多くなった。とりあえず割り当てられている食事をとるが、味気ない味気ない。

 そのまま名前を呼ばれ。血の匂い。

 そろそろか。そろそろダンジョンとの行き来が難しくなるよ、深い深いダンジョン。


「もう二人っきりになっちゃいましたね……、師匠」

 その言葉にうなずく。あとの者が配属されてこない、だがそこそこ回復し始めている気がしたお弟子くんには。それには安心感があるから。

 そのまま侵入を続けるの。彼の剣は依然と同様に敵を切り裂いたし、その巫女の剣はもっと磨きたいと思う。二人、影が2つもあるというのをなんとか抜けれて。傷を治しあい。

 そうしてその日はある部屋に入った。


「ふぅ……、そう? 私達にも回って来たんだね」「あぁじゃあ、僕が開けますね師匠。この宝箱」

 まぁ普通に開けれる、その宝箱を開け放つ。だがそれは最悪の選択であって突然の、「えっ!? うわぁああああア!?」

 異変を感じた。出て来たのは白い白い肉。

 実際は全くの石灰に見えてたが、そうだ耳や鼻が覗く、これはニンゲンだ、人間に違いないのだろう。体は恐らく白塗りにされていて犬神家で見るような奇妙なほどに真っ白に塗りたくられた体。

 それは宝箱にミニマムな三角座りさせられて押し込められ、ギュウギュウに詰め込まれて。それで死体だった。その気持ち悪い処理に異様さを感じるから。


「な、ななな、なんで……っ、どうして人間なんかっ……」

 魔物の仕業だろうか、もしくは仲間の間で何かあったか、いや……「そう、安心して良い……、ここからは確かに死体も出るんだから、お弟子くん?」

「死体が……、出る……? いや、まさか、宝箱システムからですか。でもなんで宝箱に死体なんて」「そうだよね……? 簡単だよ、価値があるから」

 文献ではほとんどなかったのに、この世界はあっさりと出現させるんだよね……?

 それで例えば魔眼ならば、その眼を移植するだとか、もしくは溶液で溶かして魔力に変えるんだと聞いたの。ただ……。


 これが歪みの城か。


 汗が滴る、その白の地獄を素早く見回した。ここからだ、ここから「それでねお弟子くん、来るぞ――」

 その入っていた死体が自然に動きだしたから。のっそりと腕を広げ、宝箱の隅っこを持って首をもたげて、重そうに首の居座れる場所を探すように、立とうとする。

 ゴリゴリと骨の音。血走った揺れる目には、心はない。口は開きっぱなしだ、重いんだろうな。


「そう……、これがミミックだよ。この世界のミミックとはこういう物をさすんだから」「じょ、冗談ですよね、冗談――」

「いいえ……? そう、むしろ君の呪いが解けるまでは追ってくるんだから、この宝箱のアクムは。悪魔じゃない、本物の悪夢なんだよ――」

 逃げられないのだ。コイツは開けたら最後、どうやってでも開けた人間を食い殺す。その者をつけまわす、2足でうろついて来る。

 見れば確かにお弟子くんのその開けた手のひらには魔の痕跡が。彼は脂汗を滲ませて刻まれてしまった物を見やる。それで精神的に参って自殺したのもいるらしいと、ただその死体には外傷も無く、どうやってか脳だけがなかったらしいが。


 そうして生まれ出る敵性人間体。「ぁぁ……ぁぁぁ―――」これは宝箱型のモンスターじゃない、宝箱に入ったただの悪夢だ。


「そうだね……、あれが生前はどうで、どのようだったか知らないけれども、全てがおぞましいよね……。彼のその内がもう魔で満たされているんだと、そう願うばかりかな」

 ヨダレを垂らし、ただただ衝動に突き動かされて彷徨うミミック・ゾンビ。宝物が襲ってくる、そのままの意味だ、その白の塊が襲ってきて――。

「うっ……うわぁあ!?」

 その瞬間、ビームが引き裂いた――!「うぃいいい!? うそですよね、ゾンビがこんな強さになるなんて――」


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