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「あぁあのです……、でもだけど、絶対僕を置いてかないで下さい師匠。僕とずっとずっと一緒に、最後までは――」「そう……、見捨てたりはしないから、もちろんだから弟子くん? 君を最後まで見てる――」

 だが少年にはあの恐怖が拭えない。この美しい人も――。


「では各員、ギルド員はとりあえずダンジョン探索をして見せろ。周りは我々が固めているので各自でキッチリと働け――」

「な……っなんだよぉ、お前らは抜きかよ」「オィ周りの散歩だとぉ……っ? 散々偉ぶりやがって、この騎士の癖にようっ……」

「馬鹿を言うな――ッ!? ここに今も近隣の魔物たちが集まってきているというのに、魔王のだぞ、魔王が――」

 まぁ眉唾。正直未だ斥候すら派遣していないというのだから、「では今から部隊を編成する。番号順で入ってけ――」


 限られた敷地だろうダンジョンで一気に大勢が探すのには限界があって。ぞろぞろ400の前衛がいてもままならないだろうしね。

 だから交代で入るらしい、1、2、3班。それが100人ずつ位。

 既にステータスというか、能力を開示できる術者が回っていて。大体こういうのは大都市にしかいないが受付としては最高クラスの――。


「あぁ……、はい。分かりました。でもお若いのにスゴイですね~貴方は」「ふふ、どうも。そう……、それでなんだけども? 私とこの子は一緒でお願い、弟子と師匠だから」

 その言葉にうなずく。でもそんな能力なければ良かったのにね……、そう言うと苦笑い。誰もが足がすくみ一列目からは逃げようとする。それでも無駄で。

 引いたのは1巡目、そのまま入って行くの。世界で唯一の人間を殺す為だけに作られた凶器の根城。2人の存在が、その師匠と弟子が入って……。


「はぁ……はぁ……、弟子くん、守るからね」「師匠、師匠だけは僕が絶対に守ります――」

 そのまま小さな坂をくだって真下の洞窟に入れば、静かだと。

 上を通らない唯一の道は地下道と言われ、でも確かに頭が禿げ上がりそうだね。

 ただそこはなんとなく普通のダンジョンの雰囲気もあって、その静かなる空洞にも息を飲む。普通の白と黒が混じり灰色と成す場所、軍団が歩いて行く。


「ほ、本当の迷宮を前にすればこんなもんよ……、俺らの力なんてちっぽけなもんさ」はぁ……はぁ……。

 汗を流す。まだ普通だ。少し明るくすら感じる程、まぁ……、上が崩落したら全員が肉ミンチだけれども。ふと、それで扉が見えてくる。

「恐らくここから先が本番だろな、気をつけろよ、お前たち」「でも立派な門構えだよなぁ、本当に意味が分からないよ……」

 貴族の邸宅のような青銅の扉。ライオンのような取っ手までついてて準備万端。向こう側も見えているのだ、ただの岩場しか見えないのに。

 そのまま扉を抜けて行くと、見事なまでの城の内部があったから……。


 踊り場が見えてる、もしかしたら誰かが迎えて、そこで会釈して万雷の拍手を要求しそうなこの……。

「なんだここ、まじでヴァンパイアでも住んでんのかよ」「あぁ……、なんか貴族って感じすんなぁ。俺らは夢でも見させられてんのか」

 中はいたって普通の洋館、そう、気持ちの悪い洋館。

 赤いじゅうたんを汚い傭兵共が蹂躙して、ぞろぞろと。しっかりと布の匂いに古びた妙な絵画を、あと仕上げの良い木の装飾。


「2手に別れよう、半分ずつだ」

 分かれ道、そう言うと適当に歩き出す冒険者たち。すると、あざ笑うような声が……誰かがつぶやいた。「リグデール……」


 ――。

 ―――――――。


「あ? だ、誰だよ、俺の名前を呼んだのは」

 サーチ役が首を振る、だが名前が木霊し続ける。100人もの中で誰も言っていない様子。

 だがすさまじく嫌な予感がするんだ。

 リクデール、リクデール……リグデーール――。

 響くだけ、そう言ったままで動かない空気。ポエムを読むかのごとく名前を呼んでいくの、ただただそれだけだが……。

 突然悲鳴が聞こえる。緊張が走る!「ぎゃぁぎゃぁ言うなっ……、ただのキングスパイダーだろうが、驚かすなっ!」「いや……。いや、だってよぉ!?」

 その嫌な言葉の羅列に、誰かの恐怖に、そうして誰かの怒りにツバを吐いた。


 気にするなと50人、探し回る、とりあえずマッピングするのが絶対。

 確かよぉ、でもよぉ……これって地形が変わる奴とかあんだろう。意味ねえじゃねえかよ……。あぁ、それに今回は何がいるんだろうな……。この歪みには大体ボスがいるんだろコレぇ――。

 その特別な個体がこのダンジョンに根を張っていて、この歪みを作り上げているらしい。

 それを倒さねばならないという、聞き耳を立てながらあっちこっち触り調べてくの。


「師匠……、この視脳の学なんですけど、効くんでしょうか。僕には何か無駄な感じが――」

「そう……、むしろかな? 頼れるのは自然法と人法なの、感じなさい……お弟子くん。他の所より通りやすくなるから」

 私は初めての時のように指を重ね、再度お弟子の感覚を開かせてあげて、「むしろ人法は的確に効いているかしら……、特にこの師匠のはね」

 ふわりとした幼い髪を撫でて。しっかりと集中できれば非常に優秀だ、この2つは歪みを貫通できるの。文献を見ている限りは間違いないだろう。霊長律と精霊律、これが歪んだルールの中で人間を守る最後の砦となって。


「じゃあ、答えはどうだろうね……」私にはクリアに聞こえている。扉を開ける、耳を更に澄ます。

 そこはかなりの大きさで各々の班で入って行く部屋、でもだけども隣はもう――。

「こっちは終わったぜ。あっさり終点だったわ」「それが違うなら罰だな……。おぃ、今すぐクリアリングして来い」

 うん、3体だよね。つぶやく。そのまま別部隊が入って行く、するとほどなく叫び声が聞こえる、ぶん殴られ、連行された。こちらは師匠と弟子、それとあと3人が。部屋の中は地中だという事を除けばいたって普通、貴族の食卓といった場所。

 幾つもの窓からは埋まった地層が見えているから、臭いも土っぽいのは。


「そう……、そしてやはり敵なの。気をつけて。私も最初から戦うからお弟子くんは身を守るべきだよ、絶対――」

 その5体の敵にうなずいた。正解だったね。

 正直あまり強そうにないけれど、周りの戦力を知るにはちょうど良いか。見やるに1人はレベルがかなり良い、もう2人は外れで。軍隊ほども洗練されてないから全員が前衛、まぁ……フレンドリーファイアされないだけマシかもって。


「あぁ、よっしよっし……、大丈夫だぜぇ、強さは変わんねえな。片付けれたわ、ふぅ……ふぅ……」「じゃあとりあえず奥の方も見ておこうか、あの扉だ……、入れんだろう?」

 うなずき入って行く。とりあえず弟子くんを守る位置だけは絶対に保つから、だがまた食堂かと――「今度は~……、何もいねぇなぁ、なぁ……反応あるかい?」「そう……私にはないかな? だけどここはもっと先を見ないとだ、細長いから先は……」

 すると、誤算だった。影だ。


 そこには化け物が隠れていたのだ、しかも20体も――。影とは影だよ、湧きだす歪み。滅多無いと聞くけど滅多と無いダンジョンではあるらしいと。


「あぁぁ、ウソだろうぉお!? ちょっ、ちょっと待てよ、ちょっとっ……」「お弟子くんっ……とりあえず前の部屋へ、この広さだと囲まれるの――」

 かなり数が多い、走る、ひとまずは

 ガタン――!「ちぃい!? アイツなんで扉を閉めたよ、なんでだァ!?」

 さすがはギルドだ、民度にしてやられる。かなり強いが臆病だ、性格も悪い。まぁあり得る。


 後ろからぞろぞろ走って来る敵、なんとか必死に横に逃げて、そして一撃が突き刺さって――。


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