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「うぅ……、うぅぅ――」目覚めた時、目の前にはメイドがいた。ずっと呼びかけられていたから。痛むカラダ、でも一緒だったのは嬉しくて。

「私は……幸せであります、これからは1人で……。はぁ……はぁ……、だけど死ねて……。こんな中途半端で死んでも、それでもまだ良かったと……」

 薄目を開ける事しかできない。だがそう言うと、優しく僕の顔をなぞったのが分かる。声が妙にアツいんだ、目を開かなければならないと思った、必死に、早く。そうして落ちて来るのを払って。

 光が入れば目の前には大量の人の、そのナレノハテがいた。足がすくんだんだ、何かがうごめいている。だが庇うように――。


「坊ちゃんとは違い、アナタは……、アナタはここから早くお逃げになって……。そして生きて下さいよ……はぁ……はぁ……生きて……、苦しんでよ、苦しんで――。 役目なんてもう良いわヨ、さぁ生きて……行きなさいよ、アハ……あははハ――。この家の者は呪われるのよ、追いかけられ続けるゥ――。そうよッ、未来へは届かない……っ、永劫の地獄に追われて、追われて追われてッ」

 終われナサイ。

 追われなさいよぉおおおオオオオオオ!? アァアアアア――――――。


「あぁ……剣、見えない、君はこんなに――」剣を振り、おかしくなり始めるメイドに恐怖する。だが彼女の言葉が本当ならば死ねたのだろうか、良かった……。ただただそれだけは、良かったと。

 突き刺さった剣、透明、すぐ隣に、「うっ……、うわぁぁぁぁぁぁぁああ!?」


 逃げるしかない、絶望の肉片を。見た事ない階段を、見た事ない人間、見た事ない花、見た事ない屋敷の中、そうして誰も聞いた事のないその赤ん坊の声の中を。

「なんだ……、この世界、なんだ――」でもその時は気づかなかったから。良かった、足音。たった一つの足音が辿って来ていると、幼いその足取りがモチモチとしたその――。

 でも転んだ……イタイ、痛いよ。僕は立たせようと「あぁ……、何故……、アナタなの? どうしてあなただけが―――」「その声は母さま……、母さ――」


 そのノタウツ奇形に足がすくむ。

 あれほど幸せだった世界は一瞬で、その瞬間に終わっていて。そう認識させられたんだ、彼女は父様になっていた、2つで1つだ。でももう家族ではないんだよね。


「さぁ……じゃあ、戻りなさい、私のナカへと。認められない……育ててあげたじゃない、やはりアナタだったのねぇ……」

 いやむしろあの女が――ァ。

 這い寄って来る、もう駄目だ。一つのヒダは2つに増えた、飲み込む2つのヒダは600に増えた。増えるたびに声は大きくなってその臭いで吐きそうになり。城は小さくて大きくて、暗い墓場のように沈んで、殺戮と快楽の器のような物になってしまって。

 無言で逃げる、どうやってかは分からないが。父さまが永遠に食われる声を聞きながら。

 でもここでもし唯一助けがあるならば、そうだ、あの先。

 禁じられていた外だからきっときっと――。


「助け……、助けて……。誰か、誰か人は、まともな人は―――ッ」

 なんとなくだけどその扉を奇形たちは避けている気がしたし。やっぱりそうだ、この家は外は駄目なんだ。だから走る……実際気をつけなければいけないのはたった一匹だけなんだよ。

 そうして開け放てば、凄まじい量の魔物が這い出したのを覚えている。


「ねぇ、待って……、待ってよ。父さま、母さまぁああああ!?」

 ゾクゾクするほどのノタウチ、それが町にも出てしまって……押されて圧され。食われたよ、かじられた。内臓をえぐり出された。叫ぶさま。だっていっぱい出て行こうとするから。

 たくさんの城下の者達が叫び、誰も彼もが殺されていく。ダメだろう、もう駄目だ。ヒドイ事を僕は……、僕のせいで―――――。

 だがしかし。それを見た時になんだろう「ふふふ――。君を連れ出したい世界はこんなんだったんだ、良かった……。大した事ないね」


 必死にトビラにへばりつく。そこしかもうないから、腕に噛みつかれた。ダメだろうな。剥がれていって……。

 あぁぁ――――――――――――――――!?

 待ってぇぇえええええ。


「だけど気付いたら………、なくなっていたんだ、何も――」

 そう何もね―――。

 自分には詳しい記憶がなく、そしてはた目にも一人、洞窟を押していたようにしか見えなかったらしい。

 ポツンと……ただのほこらになっていた。あの風景はどこかに行ったように……。

 残ったのは半壊状態の高い高い城壁の跡、2重になっていた固い防護壁を見やる。

 僕は……、何をした。その家族の歪みごと消したのか、全てを。それは光を持って、そのまま吹っ飛ばしたように見えたらしいし、その光は誰の。

 1人残されて。誰も彼もがでも全ての魔物を消して見せたこの僕の力に驚いていたから。そして囲まれた群衆の中、まだ僕は僕を見てたんだよね――。


「ねぇ、まだ力が……、良いのかい――」

 喧騒を掴んで、波長を絞りあげて平坦にする。その光る彼は、私は、僕がほくそ笑むんだよ、その地獄で笑ったのだ。優しく、白い透き通った感覚で。明らかに強いし明らかに綺麗だ、美しい。

 何かをもらった気がするが……どうやったのかは分からないが抜けていた。


「僕は……――」その日からおかしくなった。

 はぁ……はぁ……、僕はまさか、狙われているのか。なんでだ、この力はあの人の――。

 近づいてくるのは全部全部マズイ、どんどん殺す、殺してるんだ、ことごとくが殺しあう。自分を拾ってくれた老なる優しい彼らも誰かに殺された。見えてるよ……見させられている。ボロボロで転がり、炎の前。


 そうしてそのまま一人で旅に出る。正確には奴隷として売られたり、物乞いになったり。一人で籠ったり。だがしかしどこまでも追ってくる影、どこまでも生かしてくる力は。

 ある日は夜に、ある日は昼にまで。名前を替えても無駄で、どこまでもどこまでもどこまでも、それでも迫ってきている。

 だがそれでも良いのだ。

 あの日あの時、今は進みたいという、ただ一つの願いが。


「師匠、僕はアナタを引き出したい――」

 それだけだから。完成するまでは待って欲しい、だから、なぁ今は黙っていろ――。金色の僕よ。

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