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「そう……、全くね……? 何をしてるのかな、このお弟子くんは」

 誰もが目を剥いた、そこにいたのは一人の少女。たった一人で既に対岸を片付け始めており――。


「あ、あの……師匠、おはようございます。まさか僕の事を優先してくれて……、あんなに錬金にこだわってたのに師匠は……!」

「そう……、おはよう弟子くん。でもそれはまさかだよ――」

 そう、本当にまさかだった。眠るより大事になるだなんて思わなかったの、その女性精霊法師を見やって、「まぁね、ただただ痛かっただけかしら、それだけなの」

 その言葉に平謝りだ、彼女に激烈な傷をつけてしまっていた、この美しい白の少女に。

 今も剣の一閃がほふって唸る、そうしてそのまま1人で対岸は受けるというのだ。師匠。

 止めるオッサンを弟子が静止し、その目の前で強烈な精霊法が穿って走り抜け。


「そう……、じゃあ行こうかな? お弟子くんは本気で、だってもう、破門条件はもう始まってるんだから――」

「あぁァ、つぇえええ………――」

 あまりにもな師匠の強さに舌を巻く。さっさと終わらせたい師匠の動きはもう達人だ、隠しもしないよ「六学・感情、竜舌照ドラゴンズ・チャント。消えろ――」

 覚えさせる気のないスキル技をてんこ盛りで使った。感情系統は範囲が申し分ないので使いやすい、あのルチャードよりも高威力の光で一掃、ブチかまして叩きつけ――。


「うひぃいい!? 冗談だろ、あんなになれんのかよ、すげぇ――」

「そう……お弟子くん、私ね、眠いんだよ……。その剣で、きみソッチふぇ……」ふぁあ……。「はい師匠――!」

 刺さった剣を躊躇なく取る、走って行くスピードが速い、その見られてる視線、何を言わんとしているかを感じて行動して「そう……、そうなの。君にはまだ早いんだよお弟子くん。感情とはコントロール、使いやすく見えてもむしろ君には実力がないから――」

 その言葉通りに、師匠の真似をする気配がない、何日か見て来ただけの動きを繰り返す弟子。それでも何かが違う、全てが違う。


「でぇええ やぁあああ!」

 何も気にせず彼は目の前だけを処理する、時折しっかり師匠の動きだけを追っていて。絶対的な存在感、彼女のせいで死ねばソレは必然だという覚悟。

 2マンセル。


「全員で行きましょう! もう温存は必要ない、あのデカブツだけを全方位だ、一気に削り取る――」

 そのまま剣を持って……「ふぅ……、ふぅ……、あぁたった1人に……、いや、2人に助けられたかぁ――」

 青ざめたオッサンがその綺麗になったフロアを眺める。なんとかあとの5人を救助し終えて安堵の息を吐くオッサン連中、岩スケルトンは袋叩きで倒しておいた。


「あ……、ごめーーん。そう、それで実はねぇ、お弟子くん……? お金がいつの間にか闇に飲まれてて……、そうあれはきっと多分盗賊さんだろうなって、だから今日は……」うん……ぅぅぅ――フフフ。

「あぁ……はい、師匠、またバカ高い本を買ったんですね。っていうかアノ巫女様のお金全部使ったんですか――」

「そう……、そうなんだぁ? 君は謙虚なのねぇ……うんうん」

 まだ何も良いなんて言ってないけど、とりあえず抱きしめられたそのオッパイだけで力が抜けてしまう。

 良い匂い、羨望の眼差し。


「そう……、じゃあ行こうかな? お弟子くん」「はい、帰りましょう師匠!」「いや……? そうだよ、奥に行こうとね……。じゃあこのままあの最奥まで行こうかしら」

 剣を翻し白の少女が。驚く弟子だが、素直に従う姿。渡されたリュックを担いで歩き出す。オッサン達はドン引き。

 そう……、この洞窟ではね、君はもう少し進むべきだったんだ、お仕事お仕事――。

 そのまま実際に洞窟を踏破させてくの。汗みどろの弟子に全く手を出さないその美少女師匠は。

 だって大した相手ではなかったもの、ちょうど良い錬金素材が入ってかなり良いと。尽きてたし。

 じゃあその私が作った前の剣をもらい、弟子くんへ返してあげて。


「あのでも、この剣を……、剣です。師匠がしつらえ直してくれてたんですね。僕のビリ剣が少しだけ強くなってましたっ……」

「そう……、まぁそうなの。だってここの特性聞く限りだけれども、その弟子くんのビリ剣、かなり微妙だから。なので急いで新調させといた――」

 私が覗き込むその美しい剣。確かに何層もの力が奔流を生むが、「でもまぁねぇ……、ふふ。さすがは神聖なるかな、三千世界の仕手サマかって……、うん? この子あんまり倒す事考えてないね」


 ココはどうやら属性持ちがよくいるらしい。これは結構珍しいのだけれど、さすがは錬金工房が目をつけたというべき事案で。そこらの鉱石でも精霊律の僅かな力が得られる、おそらくモンスターもそれを食べて強くなってるから。

 だから循環している洞窟だと巫女の剣は通りにくいの。全属性耐性なんだよ、特効じゃあないんだよなぁ~~?


星こぼれの剣:攻撃力+25 防御力+10 総合戦闘力+50 『火・水・土・風・ ・耐性』『星の引力』

ちなみに私の師匠剣で攻撃力23くらいかなと……?


 でもいつの間に? 全然ボク気づかなかったんです。あぁそう……、君がひっしり抱いてるのを抜いてみせるくらい簡単――。


「あ? でもですけど、最大の不思議なんです、そう言えばなんで突然に師匠、宿の料金の話をするんですか?」「そう、いや……、そういうのは良いじゃない――」ふふっ……、ふふふ。

 汗汗と。


 追い出されかけたので起きただとか、そんな事はないよ。

 うわっっ……きっったね――、とか言われてブチ切れたのでイキり立った訳でもない。

 むしゃくしゃなんてシテないよ、シテない、そう……、そういう訳じゃないんだ、お弟子くぅん。


「そう、では弟子がお世話になりました。それでそう君達も頑張って欲しいの……?」

「あぁ……ありがとうございました! あの、お師匠さん、アンタすごすぎるよっ……、あのもし良ければ俺達のパーティーにもっとずっといませんかってっ……!」「そ、そうですよ。アナタならこの鉱山の最深部踏破まで行けますっ、絶対絶対スゴイ鉱石が見つかるんだもの――!」

 ねぇ?

 その言葉に首を振る。まぁ……錬金は確かに魅力的だけれども。ただ、その少年を撫でる。

 笑いながらその傷だらけのオッサン達を助けるフンドシおっさんを見てて。

 そうして今から学生になるんだと言うと驚かれた。


 確実に自分達より年上だと思ってたろう顔、苦虫を嚙み潰した様。師匠。ネーミングが悪いのかしら……って、もうずっと言ってるんだよね。

 でも結構やっぱり師匠は師匠、指摘してたし、やっぱり僕と同じところだったし。

 そのまま2人で帰っていくよ。まだ錬金工房の後片付けと、そしてあのくっさい部屋をどう回避するか思案だ、思案。

 師匠はきちんとご飯をこぼさず食べただろうか。


 あぁ水は………、どうしたろう―――。


「あぁ……、師匠さんかぁ~。あの人すごかったな~。威圧感があるっていうかよぉ、それでもその割に優しいって言うか――」

「うんうんウンっ、でもあの弟子くん、ホントに嬉しそうだったねぇ~。でもあのね……言わなきゃだ、シグナ、ごめん、もう少し見なきゃだね。そうだよねぇ~、私」

 どうしよっかなぁ~って。

 3人一緒にその道を帰る。そのまま陣形を見直すと、ただ問題は。


 あぁ、あの揺らいだ敗北感だけは、どうにも拭えんだろうな――。


 その剣士を見やる。

「じゃあじゃあ、行きますよ、師匠~~」「あぁ……そう。でももう少しだけね、遊びたかったのだけれども」

 まぁでもきっとまた……。

 弟子が必死に師匠を振り返らせないようにし、2人して行く、その道を「そう……、でも手間取ったろうなって、そう思ってたの……。あんまりきちんとパーティーの事は分からないだろうから。あと特に、女の子がいるしな……って?」


「そ、そうですね、あの……、良く分からなかったです。僕は男の人になじられるのは良くあったんだけど、力学っていうか……、そういうの全く無いっていうか」

 えぇ。

 全然違う感触がしたから。あんなにヤル気ないを前面に押し出す、そして戦いの最中に利益のない行動を繰り返すニンゲンは初めてだった。一緒に戦うとなると更に問題が出易くて――。


「僕の知ってるのは、なんていうか師匠って感じで、もっと地味で、それで事務的なんですよね」「まぁそう……、そうだね。あまり私は女の子っぽくないの、コッチの方が教えやすいからね」

 あぁいや……、そうじゃなくてです……。僕はそんな師匠が……。

 だから思いを込めた。その握っていた宝石を渡す。

「あぁ……そう、くれるの? ありがとう……、お弟子くん。なかなかだよ、お礼としても良い宝石」「はい師匠、可愛いですよ――」

 そのネックレスを首にかけてあげる。風がたなびいた。


 でも今度はもっと良い、勇者の王冠を。あの時かけてあげれなかった言葉を――。


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