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「では、お世話になったアナタにはぁ~、村の秘宝をお渡ししましょうねぇ。メインは伝説の剣で~~す」「あぁぁしまったぁぁ……」

 そうだ、忘れていたね?

 自分のアイデンティティの一画が見事に崩れることになる事。確かにこういうのはお約束だけれども……、空気読んで欲しいの。伝説の何がしかを手に入れると、いつだって……。


「さぁさぁコレを。これはこの巫女様がたんせい込め、毎日毎日神聖をつぎ足しつぎ足しして作ってきた、心にじゅわっと広がるありがた~い剣でございます」

 あぁ……そういうのって結構汚いんだよね……。絶対コレあれだろう、宴会で頭の上に乗っけてたろう。回したね?

 キラキラお目目のお弟子くんはもう見えてないが。

 色々触られているのだろうか、ビリケン様みたいに柄の一部が削れてるし。いっそビリ剣と呼んでやろうか。まぁ外国由来の? とってつけたように生まれた神様だしね、この異世界にちょうど良いはずなの。


「ビリ剣、ですか? 良いと思います師匠、やっぱり格好良い……。この僕の剣はビリ剣だ!」

 ふふふ、可愛いもんだねぇお弟子くんは。撫でてやるの。

「でもこれ、スゴイですよねぇ!」

「ひぃいいい!?」

 すぱぅ! 凄まじい切れ味に青筋立てるよね。

 まずくないかな……? まずいよね。これじゃ折角の8レベルが霞と消えそうな気配が――。


「僕……、僕もっと頑張りますね、師匠! 師匠の理想の弟子になりますんでっ……!」

「ぐっ……。そ、そうだね、そう……。弟子の命には代えられない、そうだよ――」

「あぁーー……良いなぁ……。そう……、やっぱり伝説の剣は」

 キラッキラのお目々で振り回すその威力に、非常に羨ましい思いがつのる。カノジョの一番の問題点が突き刺さっていた。


「僕が守り通したい、守ってあげたい!」「あぁ――マウント取りたいの……、どうにか取りたいだけ……」

 攻撃力がすこぶる上がった、マウントが下がった。そのまま2人で旅を続ける。その白亜の塔を後にして。




「あぁあの……、巫女様っ……。 巫女さま大変ですよっ、大変なのです巫女さまぁア――」

「あぁ~~、なんでしょうかぁ。少しわたくしも休養が欲しいと……。うぅぅ――」


 力がなんだか上手く行かないらしい。何せ囚われていた時に、すごく暇つぶしするべく気まぐれな小鳥と会話しようとしてワキをワキワキ楽し気に呼んで。そうしていつの間にか恐ろしい事に小島になってて、昼夜とかそんなの関係ねぇようになってたらしい。


 でもどうしても語り掛けたいの。


 正にオはようから、おパすピまでヨシオ。世界へと語り掛ける霊長法、集中力のヨシオ。


 聞こえるか、聞こえているな……。

 たんたんたんたん そんなのかんけぇ……。森の一画でイノシシやリスや狼までが踊っていくすごみ。

 広がる輪。通りすがった蛇もが囚われた……耳がないとかそんなの関係ねぇつってんだろうがと――。

 増える……。増える……。

 関係ねぇ……、関係ねぇんだよ、分かれ――地球。


 だが巫女もその民の言葉に起きざるを得ず、仕方なく聖堂の裏手へと。誰も近づかない闇へと歩いていく。

「あれは……、なんでしょうか」「分かりません。ただただ何故でしょうか、かの者が異形に成り果てていて――」

 ふぅ……ふぅ……!?


 その……そっと置かれ、やつれ果てた姿に、巫女が眉根を上げる。死んではいないが地獄を見たという顔。そしてそこには力が……「魔の瘴気がかかっていますね――」

 恐らくは人と獣の境に落とされたのだろう。ただなんとなくだが、残されていたのは裏切り者だと分かる。

 もうここまで来れているとは。弾く程の力。


「罪人。取り逃しはないんだ。あの少年の。やはりもう一人は――」




 そうして二人は綺麗とは言えない、鬱蒼とした森の中。血を拭いて座っている少年は疲れ、もうそろそろ日が暮れてしまうだろうかと心配で空を……。


「あぁ……、はぁ……はぁ……、そういえば師匠、その学校は期限は大丈夫なんでしょうか? 確かもう旅の日程がずれてるって……」

「そう……、一応はね? 大丈夫だよお弟子くん。確かにギリギリだけれども、そもそも間に合わなくてもあんまり怒られないもの……」

 この世界で時間厳守だなんてほぼないよ。10日くらいなら馬車が動かなかったで全然ありうるし作物の手入れとかでもダイジョブだ。


「だからそんなに呑気に素材掘りしてるんですぅ……? 師匠ってかなり丁寧に素材掘りしますよねぇ」

 超が2個ほどつく美少女が、その手を血にまみれさせ獣を解体する姿、それは結構インパクトある姿だった。実際はでも血の臭いをさせる近くで夜営は取れないし、だからすぐ離れるべきなのだが。もう素材重視で夜を歩くの確定かもと。


 でも薄っすら微笑む、内臓を見るその笑顔が可愛いんだ。


 かなり大人びていて綺麗な少女が風の中、オオカミの死体を漁っている。しっかりと肉をそいで川で洗い内臓を微笑んで……。

「ふんふん、ふ~ん♪ そう……、素材は大事。だから置いて行ってくれても全然良いの……。私は見てるよ、キミの事はいつでもずっと見てるから……」

「あぁ……、いや、それは嬉しいんです、が、いや……っなんかちょっと怖いですけど。ただでも僕は師匠と旅がしたいから、少しでも横にいたいんだ……」


「ふ~ん♪ そう……、そっか~。う~~ん。お子さまだねぇ……」

 ふふんふ~ん♪ ナデナデと。あぁ、ちなみに師匠、それなんの歌ですか? えぇ? ただのふんふんだよ? ただのふんふん……?

 あのね、世の中ね、ふんふんふ~んなんて言わないのよ。キミじゃあ残酷な天使のテーゼをふんふんで歌ってみなさいよと。

 これはただの遊びだよ――!


 そんなニュアンスを伝えると弟子があまりにもな顔をした。

 その可愛さに笑う、それで隣に座るその少年の髪をとかした少女。うんまぁ血がついてるけど……。隠す師匠だよ? 可愛くてクリクリの目で、しかも素直で育ちが良い弟子。

 でもしかしだ、その割にガチ目のチュウを要求されるんだけどね、この子に毎晩毎晩。血を塗っといてやろうね……うん。


 そうして話をしながら二人の夜が明ければ。


「あぁぁ……そう……。それで弟子くんはまた、夜中に追加で練習をしてたね?」

「いやぁ……――、でもなんで分かるんですか」「うん、全く……、寝るときは寝るべき、しっかりと休息をとる。良いかなお弟子くんっ?」

「でも、師匠も昨日どこか行ってましたよねぇ。またあんまり寝てませんねぇ」「そ、そうだが私は師匠だもの超人なの――!」

 その言葉にうなずく。確かにココまで出鱈目で、そして無茶苦茶なスキル持ちは知らない。スキル総数40を超えているというのだから驚く。


「小ぶりなのが多いけど、ガッチガチなんだな――」

 見えないモノもあるけれど、それでもその数なら例えもしレベル差が無くても全く届かないだろうと。だからこそありがたい。歩き出す2人。


 このまま彼女を育てさせて貰えればきっと……――。剣を握る。そしてそのスキルを撫でた。


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